パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

<情報・BTS問題①>日本軍占領下のアジアの人々には「原爆こそ神の救いだ」という原爆観が定着している

2018年11月16日 | 平和憲法
 ◆ 韓国・防弾少年団BTSの「原爆Tシャツ」はアジア共通の原爆観の表明です
   皆さま     高嶋伸欣です


シンガポールの1970年代の小学校6年生用歴史教科書(中国語版)・下巻の表紙コピー

 韓国の人気音楽グループBTSの「原爆Tシャツ」に対する日本国内の反発は、エスカレートの一途です。
 ネット上の無責任な「被爆者絶対視」発言はともかくとして、マスコミも不勉強そのままに、日本の植民地支配や日本軍の占領で地獄の日々を送らされたアジアの人々は、日本が原爆投下で降伏に追い込まれたとの共通認識があって、「原爆こそ地獄から救ってくれた”神の救い”だ」という原爆観が定着している事実について、この間全く言及していないのは、極めて無責任ではないかと、感じています。
 とりあえず、そうした「原爆は神の救い」というアジア共通の原爆観についての情報と、そうした情報に1980年代末に初めて接した被爆者や知識人がどう反応したかについて、順次<GTS問題①~>として、情報をなるべく添付資料などを用いて、お届けいたします。
 [添付資料1]はシンガポール(以下SING)の1970年代の小学校6年生用歴史教科書(中国語版)・下巻の表紙コピーです。
 絵柄で分かるように、原爆雲の下で勝利・解放を喜ぶ兵士・住民の姿がえがかれています。現物は原爆雲が黄色、背景の空が鮮やかな青色で極めてコントラストが鮮やかな配色です。
 本文ではもちろん「原爆で日本は降伏し、SINGの人々は解放された」旨の説明になっています。
 [添付資料2](略)は2000年以後のSINGの小学校歴史教科書の表紙です。
 SINGでは、日本企業の進出によって工業化が順調に進み、良好な外交関係になっていたことなどから、[添付資料1]以後に英語のみに一本化した教科書では、日本占領時代については、中学の歴史教科書で初めて学ぶようにカリキュラムが変更されていました。
 ところが、1990年代末に日本の学習指導要領が改変され、東郷平八郎が一斉に歴史教科書に登場させられるなど、逆戻りの気配が濃くなったのを受けて、再び小学校で日本支配の時代について、半年分の授業で学ぶこととされます。
 青色の表紙の<4B>は小学校4年生用で、タイトルは「The Dare Years」です。この一冊76ページ分で、日本軍占領下の地獄の状況について学ぶわけです。
 もう一つの表紙の<5A>は、内容が4年生には難しく、学ぶ量も多すぎるとして、同じ内容を五年生に移した時の教科書の表紙です。
 [添付資料 3](略)は、上記<4B>の本文「The End of the War」の部分です。日本の降伏の決め手は原爆投下だったという説明になっています。
 [添付資料 4](略)は、同様に上記<5A>の本文で、やはり原爆投下を肯定的に位置付けています。ただ、右下に原爆追悼碑の写真を載せ、被爆者のことにも触れています
 ちなみにSINGでは近年、教科書が国定制から検定制に順次切り替えられていますが、現在のところ歴史教科書は国定版で、この1種類だけです。
 こうした「原爆投下は神の救い」という原爆観がSINGや韓国だけでないことを紹介しているのが、単行本『亜細亜からアジア 共生への道』(中国新聞社、1993年)です。
 広島の第5師団が東南アジア戦線で住民虐殺を実施したことを証明する同部隊の公式記録『陣中日誌』が発見されたことなどを契機に、『中国新聞』の記者が各国に取材に入り、現地の人々の生の声を聴いて新聞に長期連載したのを単行本にまとめたものです。
 同書の冒頭ではSINGの「原爆投下は神の救い」という原爆観が紹介されています。この部分が新聞に掲載されると、賛否両論が同紙に寄せられます。
 それら賛否の意見を『中国新聞』は特集にして紙面で紹介しました。同書にはその特集も収録されています。
 同書は何度か増刷されましたが、現在は絶版です。私の知る限りでは同書以後にこれ以上の内容の取材が集中的にされた例はないように思われます。新聞連載の記事ですから、読みやすい本です。
  以上 ご参考までに      拡散・転送は自由です


コメント    この記事についてブログを書く
« 2018年東京・教育の自由... | トップ | <情報・BTS問題②>韓国・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

平和憲法」カテゴリの最新記事