《『労働情報』たたかいの現場から》
◆ 「回答が独禁法に抵触」!?
港湾で48時間の抗議スト
産別最低賃金の回答が独占禁止法に抵触する恐れがあるため最低賃金の回答は行えない。こんな理不尽極まりない主張が、現在、港湾における集団交渉の場においてまかり通されようとしている。
港湾運送や関連職種の労働者で組織する全国港湾労働組合連合会(中央執行委員長・糸谷欽一郎、組合員1万6千名)及び全日本港湾運輸労働組合同盟(会長・新屋義信、組合員1200名)は、1972年以来、毎年合同で港湾の業界団体である日本港運協会と団体交渉をおこない、労働協約において産別最低賃金等を定め15年まで改定を続けてきた。
ところが、16年以降、業界団体の対応が徐々に変化し、産別最低賃金の回答は独占禁止法に抵触の恐れがあるため回答できないというようになった。業界団体が回答はできないとの立場に固執したため、組合側より中央労働委員会にあっせん申請し判断を仰いだ。
あっせんの結果は、「独占禁止法上の問題とはならないと解されるため、労使双方は、産業別最低賃金について、真摯に協議を行い、その解決に努めること」というものだった。
それでも業界側は産別最低賃金の回答はできないとしたため、やむなく4月14~15日に組合で組織する全港において48時間のストライキを決行するに至った。
全国港湾の糸谷委員長は4月16日に記者会見をおこない「約30年続けてきた産別最賃の回答がなぜできないのか全く理解できない。現場の労働者は、夏は50度以上の環境で働いている。安心して働ける職場にしていく必要がある。このまま交渉が進まなければゴールデンウィーク中にもストを構えざるを得ない」と窮状を訴え理解を求めた。
また、業界団体は、雇用と就労に影響を及ぼす事項についてあらかじめ協議するとした事前協議制度や労災企業補償の問題等についても回答の前進を見せていない。
関係者のみなさんには大変なご心配をおかけしてしまっているが、万一最低賃金の回答拒否が既成事実化されれば、問題は日本各地の労働組合に広く影響しかねないものとしてある。
労組法にもとづく労使交渉のあり方、労働協約のあり方が根底から問われている。
(全国港湾労働組合連合教宣部 片柳悦正)
『労働情報』(2019年5月)
《『週刊金曜日』金曜アンテナ》
◆ 港湾労働者が全国一斉48時間ストライキ決行
貿易立国支える労働者を守れ
港湾事業団体が最低賃金に関する協定を拒否したとして、港湾労働者が、組合のあるなしにかかわらず全国の港で4月14・15日に48時間ストライキを決行した。
団体交渉はゴールデンウイーク前にも予定され、1万6000人を組織する全国港湾労働組合連合会(全国港湾)は、ストを視野に入れて臨む。
全国の事業者団体でつくる日本港運協会(日港協)は、賃金関連の協定を2016年から拒否してきた。
今春闘では、産業別統一要件としての最低賃金協定が独占禁止法に抵触すると主張。労組が中央労働委員会にあっせんを申し入れていた。
中労委は今年2月、使用者の行為は独禁法に抵触しないと判断し、労組は4月9日にあっせん案を受け入れた。
全国港湾は1972年から産業別労使交渉を継続してきたが、2013年頃から業界側が個別交渉を要求しはじめた。
独禁法を引き合いに出したのは、日港協側が業界の結束を固める一方で、労働者を企業ごとに分断するためだと、全国港湾の松本耕三委員長代行はみる。
個別企業単位での団交に切り替えた場合、労働側が賃上げを勝ち取れたとしても、市場競争の激化に耐えられない中小企業は労働条件の切り下げを余儀なくされる。
日港協加盟の約2000社のうち、中小企業が9割を占める。
労働者にとって労働条件を維持するには、産業横断で結束して闘う必要があると松本さんは言う。
「最低賃金を含む労働協約は、港湾労働者の待遇改善の基礎になるもの。さらに、集団交渉は憲法28条で保障された労働者の団結権だ。
港湾や運輸は、貿易立国の日本にとって動脈である。産別交渉で労働条件を引き上げて労働者を集め、労働力不足を解消することは、労働側だけでなく、事業者にとっても要であるはずだ」
(松元千枝・ジャーナリスト)
『週刊金曜日 1230号』(2019年4月26日)
◆ 「回答が独禁法に抵触」!?
港湾で48時間の抗議スト
産別最低賃金の回答が独占禁止法に抵触する恐れがあるため最低賃金の回答は行えない。こんな理不尽極まりない主張が、現在、港湾における集団交渉の場においてまかり通されようとしている。
港湾運送や関連職種の労働者で組織する全国港湾労働組合連合会(中央執行委員長・糸谷欽一郎、組合員1万6千名)及び全日本港湾運輸労働組合同盟(会長・新屋義信、組合員1200名)は、1972年以来、毎年合同で港湾の業界団体である日本港運協会と団体交渉をおこない、労働協約において産別最低賃金等を定め15年まで改定を続けてきた。
ところが、16年以降、業界団体の対応が徐々に変化し、産別最低賃金の回答は独占禁止法に抵触の恐れがあるため回答できないというようになった。業界団体が回答はできないとの立場に固執したため、組合側より中央労働委員会にあっせん申請し判断を仰いだ。
あっせんの結果は、「独占禁止法上の問題とはならないと解されるため、労使双方は、産業別最低賃金について、真摯に協議を行い、その解決に努めること」というものだった。
それでも業界側は産別最低賃金の回答はできないとしたため、やむなく4月14~15日に組合で組織する全港において48時間のストライキを決行するに至った。
全国港湾の糸谷委員長は4月16日に記者会見をおこない「約30年続けてきた産別最賃の回答がなぜできないのか全く理解できない。現場の労働者は、夏は50度以上の環境で働いている。安心して働ける職場にしていく必要がある。このまま交渉が進まなければゴールデンウィーク中にもストを構えざるを得ない」と窮状を訴え理解を求めた。
また、業界団体は、雇用と就労に影響を及ぼす事項についてあらかじめ協議するとした事前協議制度や労災企業補償の問題等についても回答の前進を見せていない。
関係者のみなさんには大変なご心配をおかけしてしまっているが、万一最低賃金の回答拒否が既成事実化されれば、問題は日本各地の労働組合に広く影響しかねないものとしてある。
労組法にもとづく労使交渉のあり方、労働協約のあり方が根底から問われている。
(全国港湾労働組合連合教宣部 片柳悦正)
『労働情報』(2019年5月)
《『週刊金曜日』金曜アンテナ》
◆ 港湾労働者が全国一斉48時間ストライキ決行
貿易立国支える労働者を守れ
港湾事業団体が最低賃金に関する協定を拒否したとして、港湾労働者が、組合のあるなしにかかわらず全国の港で4月14・15日に48時間ストライキを決行した。
団体交渉はゴールデンウイーク前にも予定され、1万6000人を組織する全国港湾労働組合連合会(全国港湾)は、ストを視野に入れて臨む。
全国の事業者団体でつくる日本港運協会(日港協)は、賃金関連の協定を2016年から拒否してきた。
今春闘では、産業別統一要件としての最低賃金協定が独占禁止法に抵触すると主張。労組が中央労働委員会にあっせんを申し入れていた。
中労委は今年2月、使用者の行為は独禁法に抵触しないと判断し、労組は4月9日にあっせん案を受け入れた。
全国港湾は1972年から産業別労使交渉を継続してきたが、2013年頃から業界側が個別交渉を要求しはじめた。
独禁法を引き合いに出したのは、日港協側が業界の結束を固める一方で、労働者を企業ごとに分断するためだと、全国港湾の松本耕三委員長代行はみる。
個別企業単位での団交に切り替えた場合、労働側が賃上げを勝ち取れたとしても、市場競争の激化に耐えられない中小企業は労働条件の切り下げを余儀なくされる。
日港協加盟の約2000社のうち、中小企業が9割を占める。
労働者にとって労働条件を維持するには、産業横断で結束して闘う必要があると松本さんは言う。
「最低賃金を含む労働協約は、港湾労働者の待遇改善の基礎になるもの。さらに、集団交渉は憲法28条で保障された労働者の団結権だ。
港湾や運輸は、貿易立国の日本にとって動脈である。産別交渉で労働条件を引き上げて労働者を集め、労働力不足を解消することは、労働側だけでなく、事業者にとっても要であるはずだ」
(松元千枝・ジャーナリスト)
『週刊金曜日 1230号』(2019年4月26日)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます