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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

東京都の初任者研修の実態

2012年05月01日 | 暴走する都教委
   権力に従順で画一的な考えの教員をつくる
 ◆ 東京都の驚くべき初任者研修の実態


 ◆ 増える自死・精神疾患
 現在、東京都公立学校の青年教員を取り巻く環境は、多くの課題・困難を抱えている。毎年のように起こってしまう自死、鬱などの精神疾患の増加、1年目での退職(毎年100名前後)、平均で12.2時間という勤務時間(2011東京教組青年部アンケートより)。
 しかし、このような状況にあるにも関わらず青年層への官制研修(必修)は厳しさを増し、大きな負担となっている。また、その内容も実践的なものばかりではなく、疑問を感じさせるような研修も多く設定されている
 そこでここでは、東京都公立学校の初任者研修・過年次研修の実態を青年部アンケートや生の声とともに紹介し、問題を提起していきたい。
 ◆ 初任者研修とは
 東京都教育委員会によると、初任者研修は、「東京都教員人材育成基本方針」に示された4つの力である「学習指導力」「生活指導力・進路指導力」「外部との連携・折衝力」「学校運営力・組織貢献力」における「基礎的・基本的な資質・能力の育成を図るため」に行わなければならないと定義されている。
 ◆ 画一的な研修内容
 大きく分けて校内研修と校外研修の2つに分類されており、それぞれの具体的内容は各地区教委に委ねられているが、どこも同じような研修内容となっている。
 (1)校外における研修を、年間16日以上実施する。ただし、長期休業中に集中して実施することもできる。
  ①教育センタ等における研修は、年間10日程度実施する。
  ②課題を選択して行う課題別研修は、年間3日程度(半日を1単位とし、計6単位)実施する。
  ③宿泊研修は、2泊3日程度実施する。
 (2)校内において、指導教員を中心とした指導・助言による研修を、週6時間以上(年間180日以上)実施する。
 ◆ 初任者の悲鳴
 上述した研修の具体的内容であるが、現場の生の声とともに紹介していきたい。

 (1)校外における研修
 これは実践的な内容(教科指導)よりも、組織の一員としての心構えや教師としての自覚、保護者対応等の内容が中心となっている。
 【例】
 ●接遇マナー研修
 多くの地域で行われている研修であり、民間の接客担当等を講師に迎え、「お辞儀の角度」「電話応対のマナー」等についての指導が行われている。
 ○子どもたちを他の先生に任せてまで受けるべき研修とは思えない
 ○教育はサービス業なんだと実感した。
 ○「いらっしゃいませ」と言わせる意図がわからない。
 ●求められる教師像についての研修
 これは把握している限りすべての地域で行われている研修である。特に「組織の一員」「教育公務員」としての自覚や心構えを問う内容となっている。
 ○教育活動のすべてを管理職に報告することに違和感を感じた
 ○先生がこんなに厳しく管理されなければいけないことに驚いた。
 ○教育公務員として子どもたちに尽くしていきたいと強く感じた。
 ○子どもたち、国民のために、そして日本のために頑張らねばと自覚できたよい研修だった。
 ●宿泊研修
 長期休業中(主に夏休み)に地域外の宿泊施設等を利用し行う研修である。ここも教職員を管理・統制するような内容の研修が中心であり、多くの問題点が挙げられる。以下に実際に声のあがった実態を紹介したい。
 ①就寝時の点呼
 某区宿泊研修では、9時消灯と3日間の禁酒が義務付けられており、9時になると指導主事が各部屋を巡回し、暗闇の中一人ずつ点呼する。飲酒が発覚(9時以降)した教員は廊下に正座させ反省を促す。
 ②スーツ着用の強要
 某区は、山荘での宿泊研修であったが、山の中であってもスーツ・ネクタイの着用を強制されていた。スーツを忘れた教員は指導主事のスーツを着用させられていた。
 ③パワーハラスメント
 某区宿泊研修では、最終日前夜に全員参加の打ち上げが行われたが、集合時刻に遅れた教員を厳しく叱責。また、終了時刻を遅らせようと壁掛け時計をいじった教員に対し恫喝。後日所属校管理職に報告があり、反省文を書かされる。
 ●課題別研修
 民間企業への就労体験やボランティア活動への参加等、いくつかのメニューの中から本人が選択し、受講する。
 ○夏休みといっても宿泊研修や課題別研修などで3日しか休暇をとることができず、全くリフレッシュすることができなかった
 ○企業に行っても足手まといにしかならず、3日間お茶くみしかできなかった。等

 (2)校内における研修
 授業に関する研修を年間120時間、授業以外の研修を年間60時間行わなければならない。
 ●授業に関する研修
 主に自分の授業を指導教官に見てもらぃ指導を受ける研修である。基本的な流れは都教委から示されており、次の通り。
 ①学習指導略案を作成し、指導教員と協議
 ②実際に授業を行い指導教員等の授業観察
 ③授業実施後、指導教員等からの指導・助言
 基本的にはこのサイクルで年間120時間の校内研修が行われる。
 ○毎日のように指導案を書くことがほんとうに辛かった。
 ○指導教官以外の先生は指導教官に遠慮して何も声をかけてくれない
 ○まだ1年目なのに指導案がうまく書けないことを指導教官や管理職に叱責されるので辛い。
 ●授業以外の研修
 主に3つの力「生活指導力・進路指導力」「外部との連携・折衝力」「学校運営力・組織貢献力」について、管理職をはじめ主任・主幹教諭から年間60時間の指導を受ける。
 ◆ モノ言わぬ、考えぬ教員の育成
 以上のように、東京都の行っている様々な研修は、希望にあふれる教員を黙らせ、「教師とはこうであらねばばらない」という画一的な思考を生み出す原動力となっている
 また、初任者同士で授業を参観し、批判し合う中で、同期は仲間でなくライバルへと変容してしまった(実際に授業協議会前に指導主事ら「ほめるな。批判的な意見のみ述べよ」と言われた例もあった)。
 これらから、横のつながりは弱まり、常に管理されるという意識が当たり前のものとなり、権力に対して従順な、まさに戦時中へと逆戻りするような教育現場へと突き進んでしまっていると言えるのではないだろうか。
(匿名希望 東京都公立小学校教員)

 「子どもと教科書全国ネット21ニュース」83号(2012.4)

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