◎ E.解決のための提言
以上述べてきたことにより、規約委員会は、国内のすべての人が一日も早く国際レベルの人権を享受できるよう、これまで以上に厳しく明確に、以下のような「質問」と「勧告」を行うよう求めるものである。
E-1,List of Issues に盛り込むべき質問案
(1)「公共の福祉」は、規約19条3項に列挙されている、人権制限が許される正当な目的のいずれに該当するか、示されたい。
(2)CCPR/C/JPN/CO/5 par.10で勧告を受けている、公共の福祉概念の明確な「定義」が示されていない。回答として「定義」を示すべきである。出来ないとしたらその理由を示されたい。
(3)同じ箇所で勧告を受けている「立法措置」に向けてどのような準備がなされているか、また未だなされていないとしたらその理由を示されたい。
(4)自由権規約には自動執行力があることについて(*9)、日本政府はこれまで明示的或いは黙示的に認めたことがあるか、また今後認める予定があるか。
(5)人権委員会が受けた情報によれば、第6回日本政府報告パラ4で引用された2011.07.07最高裁判決の事例に関して、最高裁は被告側の自由権規約第19条違反の主張に対して対応せず何の言及もなかったとのことである。規約違反が裁判所に申立てられたにもかかわらず何ら法的な検討がなされなかった事例について、2008年の第5回政府報告への総括所見以来の総数について報告されたい。
(6)司法試験の科目から、2011年以降「国際人権法」が除外されたのはなぜか。またそれは、裁判官・検察官及び弁護士が自由権規約を裁判規範として活用することにどのような影響を及ぼすと考えられるか。
E-2,私たちの提言
(1)日本政府は、報告書において「公共の福祉」概念の使用した裁判例として、板橋高校卒業式事件を引用したことが不適切であったことを認め、自由権規約第19条が保障する表現の自由の権利保護のために必要なあらゆる措置を早急にとるべきである。
(2)日本政府は、表現の自由に対する安易な刑事罰が民主主義社会を危うくする事態が繰り返されないよう、国内の何人にも確実に国際水準の人権保障が受けられるように、その第一歩として締約国の最低の義務として『自由権規約第1選択議定書』を一日も早く批准するべきである。
(3)人権委員会は、締約国が自由権規約第18条および一般的意見34のパラ38を尊重し、地方自治体を含む国全体において、「国旗」や「国歌」が公立学校における卒業式や入学式などの学校行事において何人にも強制されないよう、十全な措置をとることを要請する。
(注)
*1 規約第40条(b)に基づく第5回報告に関する自由権規約委員会の最終見解(2008年10月30日)
*2 フォルホーフ第1意見書(通称) 日本の弁護団の求めに応じて、2010年5月日本の最高裁宛に、原判決を検討した意見として提出された
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20100420voorhoof.fujita.legalopinion.pdf
*3 フォルホーフ第2意見書(通称)。NGO板橋高校卒業式事件を通して表現の自由をめざす会の要請に応えて、2013年3月に第6回日本政府報告書に対する意見書として書かれた。全文を本レポートに添付。
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20130328voorhoof.japan.fujita.pdf
*4 『入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について』、略して「10・23通達」と称する。都教委は2013年10月23日に、国旗(日の丸)に正対して起立し国歌(君が代)を斉唱することを、東京都の全公立校の教職員に強いた通達を発出した。この通達により、この年以降卒・入学式のたびに教職員が処分され続け、その数は累積450人に達し、毎年増え続けている。
*5 一般的意見34 CCPR/C/GC/34
*6 「東京・教育の自由裁判をすすめる会」のカウンターレポート参照(国際人権活動日本委員会から提出)
*7 日弁連会長声明(卒業式の国歌斉唱時における着席を呼びかけた行為を、威力業務妨害として有罪とした最高裁判決に対する会長声明)。本レポートに添付。English (informal translation)
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20110806nichibenrenseimei.doc
*8 UN Human Rights Committee: Coleman v. Australia, Nr. 1157/2003。(『一般的意見34』のパラ31の脚注68,パラ34の脚注72でも引用。)
*9 Yuji Iwasawa, International Law, Human Rights and Japanese Law, Oxford: Clarendon Press, 1998
【添付資料】 1,フォルホーフ第2意見書(公の関心事に関する意見表明とビラ配付による威力業務妨害罪の有罪確定に言及した第6回政府報告に対する意見)
2,日弁連会長声明(卒業式の国歌斉唱時における着席を呼びかけた行為を、威力業務妨害として有罪とした最高裁判決に対する会長声明)
(完)
※カウンターレポート全文のPDFファイル
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20130722itabashicounterreport.pdf
以上述べてきたことにより、規約委員会は、国内のすべての人が一日も早く国際レベルの人権を享受できるよう、これまで以上に厳しく明確に、以下のような「質問」と「勧告」を行うよう求めるものである。
E-1,List of Issues に盛り込むべき質問案
(1)「公共の福祉」は、規約19条3項に列挙されている、人権制限が許される正当な目的のいずれに該当するか、示されたい。
(2)CCPR/C/JPN/CO/5 par.10で勧告を受けている、公共の福祉概念の明確な「定義」が示されていない。回答として「定義」を示すべきである。出来ないとしたらその理由を示されたい。
(3)同じ箇所で勧告を受けている「立法措置」に向けてどのような準備がなされているか、また未だなされていないとしたらその理由を示されたい。
(4)自由権規約には自動執行力があることについて(*9)、日本政府はこれまで明示的或いは黙示的に認めたことがあるか、また今後認める予定があるか。
(5)人権委員会が受けた情報によれば、第6回日本政府報告パラ4で引用された2011.07.07最高裁判決の事例に関して、最高裁は被告側の自由権規約第19条違反の主張に対して対応せず何の言及もなかったとのことである。規約違反が裁判所に申立てられたにもかかわらず何ら法的な検討がなされなかった事例について、2008年の第5回政府報告への総括所見以来の総数について報告されたい。
(6)司法試験の科目から、2011年以降「国際人権法」が除外されたのはなぜか。またそれは、裁判官・検察官及び弁護士が自由権規約を裁判規範として活用することにどのような影響を及ぼすと考えられるか。
E-2,私たちの提言
(1)日本政府は、報告書において「公共の福祉」概念の使用した裁判例として、板橋高校卒業式事件を引用したことが不適切であったことを認め、自由権規約第19条が保障する表現の自由の権利保護のために必要なあらゆる措置を早急にとるべきである。
(2)日本政府は、表現の自由に対する安易な刑事罰が民主主義社会を危うくする事態が繰り返されないよう、国内の何人にも確実に国際水準の人権保障が受けられるように、その第一歩として締約国の最低の義務として『自由権規約第1選択議定書』を一日も早く批准するべきである。
(3)人権委員会は、締約国が自由権規約第18条および一般的意見34のパラ38を尊重し、地方自治体を含む国全体において、「国旗」や「国歌」が公立学校における卒業式や入学式などの学校行事において何人にも強制されないよう、十全な措置をとることを要請する。
(注)
*1 規約第40条(b)に基づく第5回報告に関する自由権規約委員会の最終見解(2008年10月30日)
*2 フォルホーフ第1意見書(通称) 日本の弁護団の求めに応じて、2010年5月日本の最高裁宛に、原判決を検討した意見として提出された
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20100420voorhoof.fujita.legalopinion.pdf
*3 フォルホーフ第2意見書(通称)。NGO板橋高校卒業式事件を通して表現の自由をめざす会の要請に応えて、2013年3月に第6回日本政府報告書に対する意見書として書かれた。全文を本レポートに添付。
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20130328voorhoof.japan.fujita.pdf
*4 『入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について』、略して「10・23通達」と称する。都教委は2013年10月23日に、国旗(日の丸)に正対して起立し国歌(君が代)を斉唱することを、東京都の全公立校の教職員に強いた通達を発出した。この通達により、この年以降卒・入学式のたびに教職員が処分され続け、その数は累積450人に達し、毎年増え続けている。
*5 一般的意見34 CCPR/C/GC/34
*6 「東京・教育の自由裁判をすすめる会」のカウンターレポート参照(国際人権活動日本委員会から提出)
*7 日弁連会長声明(卒業式の国歌斉唱時における着席を呼びかけた行為を、威力業務妨害として有罪とした最高裁判決に対する会長声明)。本レポートに添付。English (informal translation)
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20110806nichibenrenseimei.doc
*8 UN Human Rights Committee: Coleman v. Australia, Nr. 1157/2003。(『一般的意見34』のパラ31の脚注68,パラ34の脚注72でも引用。)
*9 Yuji Iwasawa, International Law, Human Rights and Japanese Law, Oxford: Clarendon Press, 1998
【添付資料】 1,フォルホーフ第2意見書(公の関心事に関する意見表明とビラ配付による威力業務妨害罪の有罪確定に言及した第6回政府報告に対する意見)
2,日弁連会長声明(卒業式の国歌斉唱時における着席を呼びかけた行為を、威力業務妨害として有罪とした最高裁判決に対する会長声明)
(完)
※カウンターレポート全文のPDFファイル
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20130722itabashicounterreport.pdf
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます