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沖縄タイムス社説:強制は現場を暗くする

2011年06月05日 | 日の丸・君が代関連ニュース
   ≪沖縄タイムス社説(2011年6月1日)≫
 ◎ [君が代起立命令]強制は現場を暗くする


 愛国心って何だろう。
 2006年に改正された教育基本法は、教育の目標の一つとして「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」ことをうたっている。新学習指導要領にも国旗国歌条項が盛り込まれた。
 国を愛する心とはどういう心のことをいうのだろうか。日の丸の前で起立し君が代を斉唱する行為は、ある人にとっては当然の厳粛な行為だが、ある人にとっては激しい内面の苦痛を伴う行為である。
 元都立高校教諭の申谷(さるや)雄二さん(64)は、卒業式の国歌斉唱時に起立しなかったため戒告処分を受けた。不起立を理由に退職後の再雇用を都教育委員会から拒否された
 日の丸へ向かって起立し君が代を斉唱するよう教職員に指示した校長の職務命令をめぐる訴訟で、最高裁は申谷さんの主張を退け、*職務命令を合憲とする初めての判断を示した。
 判決後の記者会見で申谷さんは言っている。
 「少なくとも私は石原(慎太郎)知事よりも国を愛していると自負している」
 これを負け惜しみだと受け取ってはならない。国を愛する心とはどういうものか、その性格を言い当てた発言、だと言うべきだろう。
 最高裁の合憲判決がでたことで、職務命令による一律統制が教育現場に広がるおそれがあるが、そのような風潮が広がれば、教育現場から異見を尊重する「寛容の精神」や「自由闊達(かったつ)の気風」が失われ、ぎすぎすした空気を生み出しかねない。
 憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される」と宣言し、第19条では「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定めている。基本的人権についての最も重要な条文の一つだ。
 判決の中で注目すべきなのは、職務命令が思想・良心の自由を「間接的に制約する面がある」と認めている点だ。音楽教諭に対する君が代ピアノ伴奏の職務命令を合憲とした07年の最高裁判決は、そこまでは踏み込んでいない。
 判決では4人の裁判官のうち3人が補足意見をつけた。現場での対応を考える上で参考になるのは、この補足意見である。
 須藤正彦裁判長は「命令に踏み切る前に、寛容の精神の下に可能な限り…」と指摘し、千葉勝美裁判官は「自発的な敬愛の対象となるような環境を…」と述べている。職務命令万能主義に陥るのを戒めたものだ。
 大阪府の橋下徹知事が率いる「大阪維新の会」は、教職員に君が代の起立斉唱を義務付ける条例案を府議会に提出した。
 国旗国歌法が成立した時の政府の言い分は「強制はしない」ということだった。なし崩しの強制が心配だ。
 日の丸・君が代問題は、その人の歴史観、国家観と密接にかかわる。このテーマになると、途端に声のオクターブが高くなり、議論が感情的になるケースが多い。静かな環境の下での、冷静な議論が求められる。
『沖縄タイムス』(2011年6月1日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-06-01_18600/

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