パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

懲役8月求刑のおかしさ

2010年04月05日 | 板橋高校卒業式
  板橋高校卒業式「君が代」刑事弾圧事件 最高裁に口頭審理を要請中
  ★ 立川、葛飾に続く「言論表現の自由」圧殺を許すな! ★
  最高裁は「表現そのものを処罰すること」の憲法適合性を判断せよ!

  ■□■ 3月25日第5回最高裁要請を行いました。 ■□■
  《第5回最高裁要請文補足》
 ◎ 懲役8月求刑のおかしさ
 ~「日の丸・君が代」は、神聖にして侵す可からず?



「ヒヨドリ」 《撮影:佐久間市太郎(北海道白糠定、札幌南定、数学科教員)》

1,異例な量刑

 藤田さんは、教育活動中の出来事で生徒や保護者の生命や安全に直接関わることでもないのに、「懲役8月」を求刑されました。
 3月29日、東京高裁で「堀越裁判」が逆転無罪判決が出ました。この事件と同じく「表現の自由」をめぐる裁判でしたが、検察の求刑は「罰金10万円」でした。同じく「葛飾政党ビラ入れ事件事件」の求刑も「罰金10万円」でした。
 それなのに藤田さんの卒業式の事件だけなぜ求刑「懲役8月」なのでしょうか?
 違いは「日の丸・君が代」です。他の「不起立・不伴奏裁判」も含めて、行政も裁判所も、今やまるで「日の丸・君が代は神聖にして侵す可からず」状態になっているかのようです。
 そもそも「懲役8ヶ月」とはどんな事例か、最近のニュースを調べてみました。色々見つかりましたが、いずれも人体に危害を加えたり、生命や安全を脅かすものばかりです。
a,2010/02/27 自殺ほう助未遂:19歳少女に懲役8月~1年求刑(地裁初公判)
 インターネットなどで知り合った男女3人で自殺しようと、福岡県内の駐車場に止めた車内で練炭をたき、一酸化炭素を充満させて自殺をほう助。 (命)
b,2010/01/13 パラリンピック代表、わいせつ行為で懲役8月
 判決によると、被告は昨年10月18日、18歳未満と知りながら、県内の高校1年の女子生徒(当時15歳)を小松市内のホテルに誘い、酒を飲ませ胸などを触った。 (体)
c,2009/01/08 インターネットの掲示板に無差別殺人予告の男に懲役2年求刑威力業務妨害罪
 別の男性が勤務先に置き忘れた携帯電話からインターネットの掲示板にナガシマスパーランド(三重県桑名市)などでの無差別殺人予告3件を書き込み、業務を妨害するなどしたとされている。 (命)
d,2008/11/07 高校野球に乱入し試合12分間中断させた元暴力団幹部の被告に懲役8月の実刑【岡山】
 第90回全国高校野球選手権岡山大会の試合中、男4人がグラウンドに乱入し、建造物侵入と威力業務妨害罪に問われた。 (暴力)
e,2008/06/27 懲役8月だ!新幹線車内で喫煙注意され、車掌に暴行した男(47)に実刑判決…仙台地裁
 全面禁煙の東北新幹線車内でたばこを吸っているのを注意されたことに腹を立て、東北新幹線東京発八戸・秋田行きの「はやて・こまち17号」の車内で、車掌の腕を足で蹴る暴行を加えた。 (暴力)

 この中で、藤田さんと同じ「威力業務妨害罪」で「懲役8ヶ月」の事例d,は、高校野球の岡山県予選で元暴力団幹部がグランドに乱入し審判に暴行を働き、試合を12分間中断させています。
 これに対して、藤田さんは、誰にも危害を与えることもなく、一切の有形力も行使せず、卒業式が始まる前に呼びかけを行い、始まる前には退場していました。
 地裁判決では「2分間の遅れ」と言いますが、卒業式は近年にない感動的なものでしたし、終了は例年より早く終わっているくらいです。開始時間の遅れには、この年だけTBS取材クルーが入ったことも影響しています。
 これがどうして「懲役8ヶ月」求刑になるのでしょうか。「威力業務妨害罪」としても、普通に考えて「量刑不当」ではないでしょうか。
2,日の丸・君が代は神聖にして侵す可からず!?
 もしもこの卒業式が、「10・23通達」後の最初の卒業式で、しかも卒業生の9割が着席してしまい、かつ日の君推進者の土屋敬之都議が生徒たちに向かって怒号を上げる騒ぎになっていなかったら、「刑事罰」に問われるようなことではなかったはずです。
 「日の丸・君が代」を強制する卒業式だったからこそ、厳罰に処さなければならなかったのです。
 教頭は、藤田さんが「制止を振り切ってコピーを配布し、呼びかけを行った」と偽証しました。開式前の平穏な出来事を、さも混乱があったかのように仕立て上げなければ「威力業務妨害罪」が成立しないと考えたのでしょう。誰が教頭に偽証させたのでしょうか。
 しかし、この偽証は、皮肉なことに「高裁判決文」で逆に不存在が証明されました。
 教頭が制止行為をするためには、藤田さんのコピー配布中に会場に到着していなければなりません。それを立証するために、須田裁判長はICレコーダの記録を使ったり、あれこれ計算をして見せたのですが、結果として教頭が9:40に校長室を出て、そのマイナス18秒前に体育館に到着していたというとんでもない自己矛盾に陥ってしまいました。
 弁護側証人の全て、検察側証人も偽証者以外は、誰一人「制止行為」を目撃していません。藤田さんは「威力」にも、「妨害」にも当たることも何一つやっていません。
 威力業務妨害罪は、「故意性」がないと成立しないそうですが、藤田さんが、卒業生を祝福したくて来賓として出席し、卒業生たちからも歓迎されたことも間違いのない事実です。
 こんな杜撰な事実認定で、刑事裁判で実刑判決を課されるのは異常です。

 それ以外にも、高裁判決文では、校長が作成した『実施要綱』や、校長が卒業式を執り行う職務などを、まるで「不可侵」のように扱っています。
 さらに、校長の職務すなわち「公権力の行使」を、「公共の福祉」に読み替えて、不可侵であるかのように装ってすらいます。
 今日、現憲法下で「不可侵」なものとは、「公権力の行使」や「日の丸・君が代」なのでしょうか。
 戦前の憲法では、第3条に「天皇は神聖にして侵す可からず」とありました。しかし戦後の憲法では、国民が主権者となり「神聖」なものはなくなりました。
 現憲法で「侵す可からざる永久の権利」の文言がある条文は2つだけです。11条と97条、即ち国民の「基本的人権」をうたった条文です。
 今日「不可侵」なものは、「日の丸・君が代」でも「校長の職務権限」でもなく、国民の「基本的人権」であって、中でも民主主義社会における優越的権利は「言論・表現の自由」とされています。
 教員を退職した一市民のささやかな公権力を批判する「言論・表現の自由」を、「日の丸・君が代、神聖不可侵」の幻影や呪縛で弾圧しようとしているのが、この事件です。
 私たちは、憲法の素人ですが、憲法をこよなく愛するものです。現憲法は、社会の広範な人々から支持されています。その憲法が、もっと社会の中にしっかり定着していくように、最高裁が正しい憲法解釈を示されることを切に願います。

コメント    この記事についてブログを書く
« 元都立高教職員らの意見広告... | トップ | 堀越事件、検察の上告断念を... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

板橋高校卒業式」カテゴリの最新記事