◆ 高校で観点別評価を義務化
~文科省方針、働き方改革に逆行 (金曜アンテナ)
中教審WGの市川伸一主査ら、撮影:岡本清弘氏
高校の各教科の成績評価で、5段階評定をなくす保証なきまま、3段階の観点別評価を義務化。「スクラップなきビルド」になり、教員の多忙化を加速しかねない通知を、文部科学省は2018年度内に発出する方針だ。
学習指導要領改訂(小中は17年3月、高校は今年3月)を受け、児童・生徒の学習評価のあり方を検討している中央教育審議会・ワーキンググループの9月20日の会合(以下、WG)と、10月1日の中教審・教育課程部会で、文科省がたたき台として示した。
学校教育法施行規則第24条第1項は、各校に指導要録(指導に関する記録等)の作成を義務付け、文科省の出す参考様式に観点別評価の記載欄がある小中学校は、記述式の道徳などを除く各教科で、観点別評価(小学校3年以上A~C3段階)と、これらを総括的に捉える評定(小3以上3段階、中学5段階の数値)を記載している。
通知表は小学校では観点別評価だけの学校と、評定も記述する学校に分かれるが、中学校は通知表も高校入試で使う調査書も、観点別評価と評定の両方を載せる。
一方、高校は指導要録の参考様式に観点別評価の記載欄がないので、文科省は冒頭の通知にその記載欄を設けようとしているのだ。
だがその観点は、学習指導要領下、各教科「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」の四つもある(改訂では三つ)。
現在、多くの公立全日制高校の1学級定員は40人だ。5学級以上教える教員も多く、専門教科とはいえ、200人超の生徒を4観点に分節し3段階評価し、その結果を5段階評定にまとめる作業は、「教師にとって負担である」と、前記たたき台すら明記している。
WGでは「推薦入試増の大学では『評定平均3・5以上』等の代替は想定しがたい」との発言も。
評定の存続が不明では、生徒は進路で判断する目安がなく混乱する。観点別評価を義務化するなら最低限、評定廃止に踏み切るべきだ。
『週刊金曜日 1205号』(2018.10.19)
※筆者・永野厚男さんによる補足
観点別評価は(少なくとも)高校の"公共"や政治経済、小中の社会等は、政治に対する考え方や"愛国心"を評価することになりかねないので、実施するべきではない。
文科省が「一人一人をきめ細かく評価できるメリットがある」と称している観点別評価は、小学校算数・中学数学等では意義があるかもしれません。
しかし、高校の改訂学習指導要領の新科目"公共"は、「自国を愛」するよう強制したり、「我が国の安全保障と防衛」と称し、自衛隊や日米安保条約(日米軍事同盟)を一層、増強・強化する安倍政権の憲法違反の施策(集団的自衛権行使等の政府見解)を"是"だと生徒に教え込む意図が透けて見えます。
よって、"公共"や政治経済では、観点別評価の実施は生徒の内心を"評価"するデメリットが多く、強く反対します。
歴史総合等での天皇制に関わる内容についても、同様です。
また小学校社会科の観点別評価は、以下の人権侵害と言うべき大問題・大弊害が現実に起こっています。
⇒02年度、福岡市立小の校長会主導で半数近い63校が、指導要領に倣い"国を愛する心情"を通知表の6年社会科の観点別評価に入れて、B評価を付けられた在日外国人児童の保護者が人権救済を申し立て、福岡県弁護士会が03年2月、「思想・良心の自由を定めた憲法第19条違反の恐れがある」として、市教委に削除指導を求める勧告書を出した。
~文科省方針、働き方改革に逆行 (金曜アンテナ)
永野厚男(教育ジャーナリスト)
中教審WGの市川伸一主査ら、撮影:岡本清弘氏
高校の各教科の成績評価で、5段階評定をなくす保証なきまま、3段階の観点別評価を義務化。「スクラップなきビルド」になり、教員の多忙化を加速しかねない通知を、文部科学省は2018年度内に発出する方針だ。
学習指導要領改訂(小中は17年3月、高校は今年3月)を受け、児童・生徒の学習評価のあり方を検討している中央教育審議会・ワーキンググループの9月20日の会合(以下、WG)と、10月1日の中教審・教育課程部会で、文科省がたたき台として示した。
学校教育法施行規則第24条第1項は、各校に指導要録(指導に関する記録等)の作成を義務付け、文科省の出す参考様式に観点別評価の記載欄がある小中学校は、記述式の道徳などを除く各教科で、観点別評価(小学校3年以上A~C3段階)と、これらを総括的に捉える評定(小3以上3段階、中学5段階の数値)を記載している。
通知表は小学校では観点別評価だけの学校と、評定も記述する学校に分かれるが、中学校は通知表も高校入試で使う調査書も、観点別評価と評定の両方を載せる。
一方、高校は指導要録の参考様式に観点別評価の記載欄がないので、文科省は冒頭の通知にその記載欄を設けようとしているのだ。
だがその観点は、学習指導要領下、各教科「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」の四つもある(改訂では三つ)。
現在、多くの公立全日制高校の1学級定員は40人だ。5学級以上教える教員も多く、専門教科とはいえ、200人超の生徒を4観点に分節し3段階評価し、その結果を5段階評定にまとめる作業は、「教師にとって負担である」と、前記たたき台すら明記している。
WGでは「推薦入試増の大学では『評定平均3・5以上』等の代替は想定しがたい」との発言も。
評定の存続が不明では、生徒は進路で判断する目安がなく混乱する。観点別評価を義務化するなら最低限、評定廃止に踏み切るべきだ。
『週刊金曜日 1205号』(2018.10.19)
※筆者・永野厚男さんによる補足
観点別評価は(少なくとも)高校の"公共"や政治経済、小中の社会等は、政治に対する考え方や"愛国心"を評価することになりかねないので、実施するべきではない。
文科省が「一人一人をきめ細かく評価できるメリットがある」と称している観点別評価は、小学校算数・中学数学等では意義があるかもしれません。
しかし、高校の改訂学習指導要領の新科目"公共"は、「自国を愛」するよう強制したり、「我が国の安全保障と防衛」と称し、自衛隊や日米安保条約(日米軍事同盟)を一層、増強・強化する安倍政権の憲法違反の施策(集団的自衛権行使等の政府見解)を"是"だと生徒に教え込む意図が透けて見えます。
よって、"公共"や政治経済では、観点別評価の実施は生徒の内心を"評価"するデメリットが多く、強く反対します。
歴史総合等での天皇制に関わる内容についても、同様です。
また小学校社会科の観点別評価は、以下の人権侵害と言うべき大問題・大弊害が現実に起こっています。
⇒02年度、福岡市立小の校長会主導で半数近い63校が、指導要領に倣い"国を愛する心情"を通知表の6年社会科の観点別評価に入れて、B評価を付けられた在日外国人児童の保護者が人権救済を申し立て、福岡県弁護士会が03年2月、「思想・良心の自由を定めた憲法第19条違反の恐れがある」として、市教委に削除指導を求める勧告書を出した。
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