第2 本件処分の違法性
1 教育基本法第10条1項、学校教育法第28、51条違反
(1)本件処分は、申立人の行った「紙上討論授業」に対して、「学習指導の改善」を目的としていることは、上記の経緯から明白である。
しかしながら、申立人の「紙上討論授業」は、前述のとおり、高い教育的効果を上げているのであり、何ら学習指導改善の要はないことは明らかである。また、申立人の「紙上討論授業」は、日本国憲法の基本精神に則った形で、平和主義・基本的人権を尊重し、かつ民主主義国家における主権者としての自覚を高めるものであって、何ら学習指導要領等に反するものでもない。
かかる申立人の「紙上討論授業」に対して、「改善指導」を強制することは、教育基本法第1O条1項が禁止する「不当な支配」に該当することは明白であり、これを受けて教師の教育に関する自立性を認めた学校教育法28、51条に違反することは明白である。
2 憲法第19条違反
また、本件処分は、申立人の教育的立場(日本国憲法を遵守し、生徒達に民主主義、平和主義を実感をもって理解してもらう)という内心の自由に踏み込み、「学習指導の改善」と称して、上述した申立入の教育的立場、信条に反して、これを否定させようとするものであることは明白である。
最近頻発している公立学校における卒業式入学式等における君が代斉唱の際に不起立であった教職員に対し、申立外都教委が行った所謂「再発防止研修」処分執行停止命令申立事件において、御庁は、その決定において、「研修の意義目的内容等を理解しつつ、自己の思想、信条に反すると表明する者に対するなど、公務員個人の内心の自由に踏み込み、著しい精神的苦痛を与える程度に至るものであれば、そのような研修や研修命令は合理的に許容されている範囲を超えるものとして違憲違法の問題を生じる可能性があると言わなければならない」(2004年7月21日決定)とされ、同旨の決定も数多くなされている。
本件処分は、上記再発防止研修とは異なり、約半年間にも及ぶ長期のものであり、自己の内心(教育的立場)に踏み込まむる危験性は格段に強いことは明白であって、申立人の精神的苦痛も著しいものがあることもまた、明らかである。
そうであれば、本件処分は、明らかに憲法第19条が絶対的に保障する内心の自由を侵害するものとして、違憲違法である。
3 処分権の逸脱濫用
上記のように、いったん第1次件処分を下し、研修を終了しているにかかわらず、さらに、来年3月31日まで本件処分を下すことは、それまで申立人が担当していた九段中学校の3年生の社会科の授業に極めて大きな支障が生じることは明らかである。
かかる形でなされた本件処分は、明らかに、申立人に紙上討論授業を行わせないようにするためだけになされたものであることは火を見るより明らかであり.それ以外に何ら必要性のない本件処分を強制することは、当然、処分権の逸脱濫用にあたり、無効であることは明らかであるから、本件処分の取消は免れない。
第3 本件処分の執行を停止すべき必要性及び緊急性
1 行政事件訴訟法第25条2項は、「・・処分の執行又は手続の続行により生じる重大な損害を避けるために緊急の必要があるときは、・・・」と規定し、さらに同条3項において、「裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の困難の回復の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。」と規定されている。
2 これを本件について見るならば、本件処分の執行が継続されるならば、学校現場において、高校受験を控えた3年生の社会科の授業において大きな支障が生じることを始めとして、申立人が担当していた各種校務(テスト監督、連合陸上大会の準備、整備委員会の指導等)全てが停滞することは、すでに提出している証拠からも明らかである上(甲16、17、19等)、本件処分が来年3月31日まで、という長期のものであることからすれば、その損害は回復しがたい程度の重大なものになることは誰の目にも明らかである。
そして、何よりも、本件処分が継続されることで、申立人と生徒との信頼関係が破壊されるおそれが強いことが最も懸念される。周知のとおり、教育活動は、教師と生徒との信頼関係に基づく全人格的な触れあいを通して為されるところ、処分によって現場から外されたことが生徒達に知れ渡るならば(産経新聞等ですでに報道されている)、申立人は教師として回復しがたい損害を被ることは明らかである。
以上から.その損害の重大性は明白である。
3 さらに、上記の損害の性質は、生徒の学習権という憲法上の権利の侵害であり、その程度も、申立人の担当が受験を控えた3年生ということを考えれば、重大である。
また、本件処分の内容及び性質についても、本件の経過、生徒達の紙上討論授業による成長の度合いからすれば、申立人に研修が必要であるとは到底考えられないことは明白であること、本件処分自体が申立人の教育内容そのものに関わるものであって、教育基本法10条1項が禁止する「不当支配」にあたるのみならず申立人の内心の自由に踏み込むものであること、研修内容自体、ほとんど意味のあるものとは言えず、申立人を教育現場から外すことのみを目的としているものであることが明らかであること等の事情を勘案すれば、速やかに執行停止の決定をすることの緊急性必要性はきわめて高い。
4 なお、付言するならは、申立人の紙上討論授業は、憲法9条に定める平和主義に立脚する平和教育そのものであり、小泉現首相自身が認めている太平洋戦争の侵略性を直視し、日本国憲法の平和主義の重要性を理解させることや民主主義の基本である真実を知る権利の重要性、真実に基づいた議論の重要性を涵養するものであって、何ら学習指導要領や学校教育法、教育基本法の理念に反するものでないことは明らかである。
第4 まとめ
以上から本件申立に及んだ次第であるので、速やかに決定を下されることを心から望むものである。
以上
和久田修代理人
民事19部中西茂裁判長は、3週間の間を置いて昨日「却下」の決定を下した。
第一回目は、9/6(火)に申し立てて、9/9(金)に却下された。「仮処分」だから、これくらい反応が早くて当然だろう。ところが今回は、9/22(木)に申し立てて、10/14(金)に却下された。この間3週間、この沈黙は何を意味するのだろうか。「決定文」の現物を見なければ確たることは言えないが、「再発防止専門研修」の仮処分申請に対して「(研修が)内心の自由に踏み込めば、権利を不当に侵害したと判断される余地がある」と書いた裁判長にして即断できなかったと言うことは、「余地がない」意見書が都教委から出るまで繰り返し提出を命じてやっと満足がいくものが得られたということではなかったのだろうか。もう都教委の論理破綻は首の皮一枚だ。10月20日(木)10:00~地裁710号法廷の「本訴」が注目される。
1 教育基本法第10条1項、学校教育法第28、51条違反
(1)本件処分は、申立人の行った「紙上討論授業」に対して、「学習指導の改善」を目的としていることは、上記の経緯から明白である。
しかしながら、申立人の「紙上討論授業」は、前述のとおり、高い教育的効果を上げているのであり、何ら学習指導改善の要はないことは明らかである。また、申立人の「紙上討論授業」は、日本国憲法の基本精神に則った形で、平和主義・基本的人権を尊重し、かつ民主主義国家における主権者としての自覚を高めるものであって、何ら学習指導要領等に反するものでもない。
かかる申立人の「紙上討論授業」に対して、「改善指導」を強制することは、教育基本法第1O条1項が禁止する「不当な支配」に該当することは明白であり、これを受けて教師の教育に関する自立性を認めた学校教育法28、51条に違反することは明白である。
2 憲法第19条違反
また、本件処分は、申立人の教育的立場(日本国憲法を遵守し、生徒達に民主主義、平和主義を実感をもって理解してもらう)という内心の自由に踏み込み、「学習指導の改善」と称して、上述した申立入の教育的立場、信条に反して、これを否定させようとするものであることは明白である。
最近頻発している公立学校における卒業式入学式等における君が代斉唱の際に不起立であった教職員に対し、申立外都教委が行った所謂「再発防止研修」処分執行停止命令申立事件において、御庁は、その決定において、「研修の意義目的内容等を理解しつつ、自己の思想、信条に反すると表明する者に対するなど、公務員個人の内心の自由に踏み込み、著しい精神的苦痛を与える程度に至るものであれば、そのような研修や研修命令は合理的に許容されている範囲を超えるものとして違憲違法の問題を生じる可能性があると言わなければならない」(2004年7月21日決定)とされ、同旨の決定も数多くなされている。
本件処分は、上記再発防止研修とは異なり、約半年間にも及ぶ長期のものであり、自己の内心(教育的立場)に踏み込まむる危験性は格段に強いことは明白であって、申立人の精神的苦痛も著しいものがあることもまた、明らかである。
そうであれば、本件処分は、明らかに憲法第19条が絶対的に保障する内心の自由を侵害するものとして、違憲違法である。
3 処分権の逸脱濫用
上記のように、いったん第1次件処分を下し、研修を終了しているにかかわらず、さらに、来年3月31日まで本件処分を下すことは、それまで申立人が担当していた九段中学校の3年生の社会科の授業に極めて大きな支障が生じることは明らかである。
かかる形でなされた本件処分は、明らかに、申立人に紙上討論授業を行わせないようにするためだけになされたものであることは火を見るより明らかであり.それ以外に何ら必要性のない本件処分を強制することは、当然、処分権の逸脱濫用にあたり、無効であることは明らかであるから、本件処分の取消は免れない。
第3 本件処分の執行を停止すべき必要性及び緊急性
1 行政事件訴訟法第25条2項は、「・・処分の執行又は手続の続行により生じる重大な損害を避けるために緊急の必要があるときは、・・・」と規定し、さらに同条3項において、「裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の困難の回復の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。」と規定されている。
2 これを本件について見るならば、本件処分の執行が継続されるならば、学校現場において、高校受験を控えた3年生の社会科の授業において大きな支障が生じることを始めとして、申立人が担当していた各種校務(テスト監督、連合陸上大会の準備、整備委員会の指導等)全てが停滞することは、すでに提出している証拠からも明らかである上(甲16、17、19等)、本件処分が来年3月31日まで、という長期のものであることからすれば、その損害は回復しがたい程度の重大なものになることは誰の目にも明らかである。
そして、何よりも、本件処分が継続されることで、申立人と生徒との信頼関係が破壊されるおそれが強いことが最も懸念される。周知のとおり、教育活動は、教師と生徒との信頼関係に基づく全人格的な触れあいを通して為されるところ、処分によって現場から外されたことが生徒達に知れ渡るならば(産経新聞等ですでに報道されている)、申立人は教師として回復しがたい損害を被ることは明らかである。
以上から.その損害の重大性は明白である。
3 さらに、上記の損害の性質は、生徒の学習権という憲法上の権利の侵害であり、その程度も、申立人の担当が受験を控えた3年生ということを考えれば、重大である。
また、本件処分の内容及び性質についても、本件の経過、生徒達の紙上討論授業による成長の度合いからすれば、申立人に研修が必要であるとは到底考えられないことは明白であること、本件処分自体が申立人の教育内容そのものに関わるものであって、教育基本法10条1項が禁止する「不当支配」にあたるのみならず申立人の内心の自由に踏み込むものであること、研修内容自体、ほとんど意味のあるものとは言えず、申立人を教育現場から外すことのみを目的としているものであることが明らかであること等の事情を勘案すれば、速やかに執行停止の決定をすることの緊急性必要性はきわめて高い。
4 なお、付言するならは、申立人の紙上討論授業は、憲法9条に定める平和主義に立脚する平和教育そのものであり、小泉現首相自身が認めている太平洋戦争の侵略性を直視し、日本国憲法の平和主義の重要性を理解させることや民主主義の基本である真実を知る権利の重要性、真実に基づいた議論の重要性を涵養するものであって、何ら学習指導要領や学校教育法、教育基本法の理念に反するものでないことは明らかである。
第4 まとめ
以上から本件申立に及んだ次第であるので、速やかに決定を下されることを心から望むものである。
以上
和久田修代理人
民事19部中西茂裁判長は、3週間の間を置いて昨日「却下」の決定を下した。
第一回目は、9/6(火)に申し立てて、9/9(金)に却下された。「仮処分」だから、これくらい反応が早くて当然だろう。ところが今回は、9/22(木)に申し立てて、10/14(金)に却下された。この間3週間、この沈黙は何を意味するのだろうか。「決定文」の現物を見なければ確たることは言えないが、「再発防止専門研修」の仮処分申請に対して「(研修が)内心の自由に踏み込めば、権利を不当に侵害したと判断される余地がある」と書いた裁判長にして即断できなかったと言うことは、「余地がない」意見書が都教委から出るまで繰り返し提出を命じてやっと満足がいくものが得られたということではなかったのだろうか。もう都教委の論理破綻は首の皮一枚だ。10月20日(木)10:00~地裁710号法廷の「本訴」が注目される。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます