◆ ひろしま平和ノート改変問題、姉妹「公園」協定問題、
~教育勅語問題をつなぐものは?
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま岸直人
1 ひろしま平和ノート改変問題とは
(1)反戦反核を訴える教材の削除
・『はだしのゲン』(小3)・「第五福竜丸」(中3)
・中沢啓治さんの被爆体験記事(高1)
(2)日米のパートナーシップを進める教材の採用
・「美甘章子さんの言葉と活動の紹介」(中3)
・『8時15分~ヒロシマで生きぬいて許す心』(高1)
・広島市作成「美甘章子さんインタビュー映像」(高1)
(3)米国とヒロシマの和解とパートナーシップを強調する写真の多用
・オバマ大統領の平和公園での演説(中2)2枚
・オバマ大統領と森さんの抱擁場面(中2)
・オバマ大統領と坪井さん握手場面(中2)
(4)核廃絶から核軍縮へ後退した学習のねらい
・「核兵器廃絶に向けた…」から新版「核軍縮への世界の動き…」へ(中3)
・外務省HPで日本政府の「核禁条約に参加しない」考えを理解させる(中2指導資料)
(5)米国政府の核開発の記事がなくなった
・水爆実験の放射能被害を受けた第五福竜丸事件が削除(中3)
・アメリカに続く核開発競争への問いかけ「どこの国が何のために実験を行ったのだろう」削除(中3)
・原爆開発の「マンハッタン計画」(高1)
・「GHQのプレスコード」の記述(中2)
ひろしま平和ノートからアメリカの原水爆に関係する記述を削除し、原爆を投下したアメリカについて考えさせず、美甘章子さんの教材を使って被爆者がアメリカを「許す」ことでヒロシマはアメリカと「和解」し平和を築いていく、そういう「平和教育」が作られていく。
戦争の原因である国家の責任を追及し、戦争は最大の人権侵害だということを訴えるゲンが削除され、
戦争の実相を学ばず、日本とアメリカの戦争責任を追及せず、「許す」心で「和解」するという政治主導の「平和行政」と「平和教育」が広島市で進んでいる。
2.パールハーバー・ナショナル・メモリアル(真珠湾国立記念碑)
と広島平和記念公園との姉妹「公園」協定問題とは
(1)締結経過から見えてきたこと
①不平等な協定
米国政府から広島市への「姉妹公園協定を結びたい」という一方的な要請を受けた広島市は協定文書作成を米国政府に丸投げして結んだ協定だから。
②不正義な協定
日本政府、天皇の戦争責任、米国政府の原爆投下の人道的責任を不問にして、「お互い許し合い和解」しようという両政府の都合の良い利益を実現するために結んだ協定だから。
③欺瞞の協定
松井市長の「和解と未来志向」という協定の目的が核廃絶とは真逆の、米国の原爆投下責任を隠し、今後も核兵器の使用を容認にする「免罪符」の役割として使われている。米国政府は「ヒロシマが許してくれた正義のための原爆投下」として、今後も「正義の核」を使用することの正当性を世界にアピールするための免罪符にした協定だから。
(2)パール・ハーバー(真珠湾)には、軍事基地であるフォード島があり、その島に姉妹協定を結んだ施設の隣に核戦争の推進を展示する施設があること
※ 国立公園局管轄の施設
①アリゾナ記念館 ②ビジターセンター ③ユタ記念碑 ⑤旧下士官宿舎(地図にはない訪問不可) ④オクラホマ記念碑
※ 協定締結外の施設
⑥太平洋航空博物館 ⑦戦艦ミズーリ記念館 ⑧潜水艦博物館 ⑨潜水艦ボーフィン号 ⑧⑨の展示物(略)
3.松井広島市長の教育勅語引用講話問題とは
(1)当該研修での松井市長の発言の整理(講話録画から文字おこししたもの)
松井市長はこの4年間「教育勅語は、今でも通用する大事な教えがあり、今でも通用する民主主義の基本概念を述べていて、民主主義的でいいことを言っていて、民主主義の先端をいく民主主義の素晴らしいことを書いてある。」との講話をしていた事実を確認した。
(2)教育勅語の官定解釈「勅語衍義」をよめば、教育勅語には民主主義が書いていないことがたやすく立証できる(一部紹介)
井上哲次郎の『勅語衍義(えんぎ)』(1891年)は、文部省が検定した政府による「官定解釈」であり、刊行後に明治天皇自身も読んで賞賛したが、教育勅語には民主主義の対極である皇国臣民化をめざす国家主義の内容が書かれていて、当時教育されたのはこの内容である。
①「兄弟に友に」の勅語衍義の解釈
妹弟は兄姉を敬って反目してはならない。もしも、兄弟姉妹が不和になれば親孝行にならない。一家は国の細胞だから家が不和になれば国民の心が一つにならず、国力が衰える。このことを兄弟姉妹はよく考えて仲良くしなければならない。
この徳目は「兄弟姉妹は国力を守るために仲良くせよ」と述べて、民主主義ではなく国家主義を目的としている。
②「博愛衆に及ぼし」の勅語衍義の解釈
博愛には順番がある。万国同じく愛せば忠君愛国に反するので我が国をまず愛するのが義務だ。特に国の危機のときには財産も命も投げ出して国を救いなさい。近親であっても国家が危ないときは国家を優先させなさい。なぜなら、臣民は国家のおかげで安全に生きているので、国家に大きな恩があるのだ。数人の命より国家の安全が優先する。国家の安全は逆に臣民の安全でもある。夫婦や兄弟姉妹は愛すべきものだがそれよりももっと愛すべきものは愛国心だ。国家のために命を投げ出すことが大事だ。
教育勅語の博愛は現代の「すべての人を平等に愛すること」という意味の博愛ではない。従って、教育勅語のいう博愛は国家主義なので民主主義とは言えない。
③「夫婦相和し」の勅語衍義の解釈
国を統治するものは国のそれぞれの家が安定し、不和が起きることがないようにしなくてはならない。・・・夫は妻を可愛がって妻の歓心を得、妻は夫に従順に対応して夫の意思に反してはいけない・・・。妻は知識や能力が夫より劣っているから、夫が無理難題を言わなければ夫に服従して・・・。結婚は男女ともに体格がよく発達してからするべきだ。国家に役に立たない弱小の子を産み、国家のカを弱くしてしまう。
国家の力を強くするために妻は従順に夫に従い、国家の役に立つ強い子どもを産まなければならない、という天皇から臣民への命令は60年間人々の人生の価値観を支配して、戦争をする国づくりを進めていった。
4.松井市長は8.6広島平和祈念式典にイスラエルを招き、当日広島平和記念公園の全域を入園規制すること
4月、松井広島市長は、イスラエルに「停戦を求めるメッセージ」を記した上で例年通り招待する方針を決め、定例記者会見で「ロシア、ベラルーシを招かず、イスラエルを招くのはダブルスタンダードではないのか。」と問われ、「そんなことはない!」と激怒していた。
一方、鈴木長崎市長は6月に「式典で不測の事態が発生するリスクが懸念されるので、イスラエルの招待を保留する」とした後、7月にはパレスチナ自治政府に招待状を送るとした。
このような中で、5月7日中国新聞は死没者を悼み、世界に反戦反核を訴える場である平和記念公園への入園規制を報道した。
8月6日午前5時から公園利用者に園外への移動を要請し、9時まで入場を規制する。入場口は6時半に開設。手荷物検査をし、拡声器やプラカードを持ち込めなくする。
検査を拒否したり、移動要請に従わなかったりした場合、会場外への退去を命令することがある。慰霊碑前の参列者席に入る人たちに金属探知検査を実施。
私たちは5年前に札幌で安倍元首相の演説にヤジを飛ばした市民を不当逮捕した事件を思い出す。
鈴木長崎市長が言うようにイスラエルを招けば参列に対する市民の抗議の声が上がるだろう。政治の不公正に対して市民には憲法が保障する表現の自由で抗議をする権利がある。
松井市長は市民を爾臣民と見なして表現の自由を抑圧しようとしているかのようだ。松井市長はヒロシマの市長だから核廃絶を訴えるが、同時に別の舌で自民党政権の操り人形として核抑止容認、イスラエル容認、教育勅語賛美の道にヒロシマを導こうとしているのである。
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