××ちゃんは、腫れぼったい目の奥で、そのかぼちゃを持ってあの世に行った亡霊を追っているにちがいなかった。
××ちゃんが、こんなことを言ったことも、書き連ねておかねばなるまい。
「お兄ちゃん。××ちゃんのお目々は、いつもお寝み(やすみ)しているの。××ちゃんは起きているのに。でも、××ちゃんは起きているのかな?お寝みしているのかな?どっちだか、分からなくなりそう。」
××ちゃんは、闇に消えたかぼちゃの器を、見えない目の中に探し求めたにちがいない。私は、盲目のことを失明という意味が痛いほど分かった。
かぼちゃの事件の翌日、多分、被爆三日目であったろう。
死体の群れの中に、負傷者が混じっているのか、負傷者の群れの中に、死者が混じっていたのか、寝たままの私には判断出来ることではなかったが、いずれにしろ、生か死かの境をさ迷い続ける者たちしかいない空間というものの陰湿さを破ったのは、やはり、生きて働く健康体の人々の声であった。
××ちゃんが、こんなことを言ったことも、書き連ねておかねばなるまい。
「お兄ちゃん。××ちゃんのお目々は、いつもお寝み(やすみ)しているの。××ちゃんは起きているのに。でも、××ちゃんは起きているのかな?お寝みしているのかな?どっちだか、分からなくなりそう。」
××ちゃんは、闇に消えたかぼちゃの器を、見えない目の中に探し求めたにちがいない。私は、盲目のことを失明という意味が痛いほど分かった。
かぼちゃの事件の翌日、多分、被爆三日目であったろう。
死体の群れの中に、負傷者が混じっているのか、負傷者の群れの中に、死者が混じっていたのか、寝たままの私には判断出来ることではなかったが、いずれにしろ、生か死かの境をさ迷い続ける者たちしかいない空間というものの陰湿さを破ったのは、やはり、生きて働く健康体の人々の声であった。