英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

ディケンズは超えてない

2006-04-17 | イギリス
今年出た翻訳から。
作者はスコットランド在住。

ミッシェル フェイバー「天使の渇き」(2002) アーティストハウス

描かれるのは1875年のロンドン。ニュー・オックスフォード・ストリート近くの貧民窟と新興成金が多く住むノッティング・ヒル。
登場するのは19歳の娼婦「シュガー」、そのシュガーの魅力に取り付かれ彼女を囲う資産家、大人になることを拒み娘すら顧みないその妻、自己の目指す宗教倫理とある女性に対する欲望で悶々とする資産家の兄、その兄の欲望を感じながらも娼婦を救うという理想を追い求める女性・・・・。
物語は娼婦街からレスタースクウェア、トラファルガー広場、そしてリージェント・ストリートへ・・・と怪しいガイドに導かれ、当時の風俗、流行、事件を丹念に散りばめながら進行します。
この時代のイギリスはヴィクトリア中期と呼ばれ、自由主義経済を基盤とした成長期でしたが、この70年代に入ると共に「大不況」の影が忍び寄り、次第に自由貿易帝国主義がより大きく台頭し植民地政策が顕著になっていく。政治の世界では保守党、自由党の近代的な2大政党政治が確立し、ディズレーリとグラッドストーンがそれぞれを引っ張ってた時代でもあったのだが。
残念ながらこの辺の政治・経済の描写はあまり出てきません。
時にきわどい性描写も飛び出し、読者を翻弄しながら進むこの物語。出てくる人物は押しなべて自己中心的であり、感情の起伏が激しく、求め合いぶつかり合って河のように流れていく。途中からは「ジェーン・エア」のような話に展開したりして・・・そして最後に大きな裏切りが。
腰巻宣伝文には「映画化決定!」の文字がありますが、むしろテレビドラマがいいかも。娼婦版チャングムとか。
2段組800ページ強のロンドンです。