英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

ラストブック(ドラゴンも出るよ)

2007-03-13 | イギリス

マシュー・スケルトン「エンデュミオン・スプリング」

過去、現在、未来の全ての知識が収められた「最後の書(ラストブック)」をめぐる物語。その本を手に入れれば世界を征服することが可能になるという。
15世紀末マインツの街、グーテンベルクの印刷工房に恐ろしい装飾がされたチェストが持ち込まれる。その中には、摩訶不思議な紙が入っていた・・・。現代のオックスフォード、少年ブレークはセントジェローム学寮の図書館で突然本に噛み付かれる。その本を開いて見ると・・・何も書かれていない・・・いやブレークにしか見えない文字が・・・・。
ブレークは妹とともに本の謎を解き明かすことに。
クライマックスはボドリアン図書館地下書庫。何キロも続く迷宮のような書棚を抜けてブレークは何にたどり着くのか。(ちょっと「薔薇の名前」を思い出したり・・)
引き裂かれたものが一つになろうとする力と、微妙な関係にあるブレークの両親なんかが絡み合っちゃうんですけど、最後はちょっとあっけない。これでは単に稀覯本の蒐集のために異常な行動をとる学者の話になってしまうのでは・・・。せっかく世界を征服できる本だったら、ちょっと使ってみても・・・。それは次回作ってことでしょうか。うーん、「指輪物語」の展開になってしまうのか?

グーテンベルクが後世に残した功績、それは金属活字の発明と刷りに適した油性インキの開発、そして均一に圧がかかる印刷機を作り上げたことなんですが、何よりも最初に「聖書」をその技術で印刷したということが大きいと思います。それまでの写本を凌ぐ美しさで聖書を作り上げたことで教会や金持ちの指示を得ることができ、それゆえ今でもその一部(50部足らず)が現存するということが可能となったのでしょう。

初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった


ボドリアン図書館はオックスフォード観光の目玉でもあります。
作中出てくるボドリアン図書館のショップのHP