カレン・ジョイ・ファウラー
「ジェイン・オースティンの読書会」
「私たちはそれぞれ、自分だけのオースティンを持っている。」で始まるこのお話。ジョスリン、バーナデット、シルヴィア、アレグラ、プルーディー、そして唯一の男性グリッグの6人が、ジェーン・オースティンの残した小説をテーマに、読書会を開催するという趣向。論じられる作品は「エマ」、「分別と多感」、「マンスフィールド・パーク」「ノーサンガー・アベイ」、「自負と偏見」、「説得」の6作品。6人それぞれの生い立ち、そして強さと弱さが読書会の合間に語られていくのですが、それを聞いているのが「私たち」という存在。そう読者もいつのまにかこの読書会のメンバーになってるかのような気がしてきます。随所にオースティン作品に出てくる人物像が、6人にさりげなく似てたりとかして、オースティン愛読者なら楽しめること請け合いですし、もちろん、オースティンをまったく読んだことのない人も十分に楽しめます。グリッグなんて、この読書会のために初めてオースティンの本を購入したという設定だし、途中で「自負と偏見」すら読んだことがないことがバレて、他のメンバーを愕然とさせたりするのですから、心配はいりません。私自身「自負と偏見」を読んだだけという初心者でしたが、十分に堪能しました。巻末には、ファウラー自らの取り上げたオースティン6作品の解説と、オースティンを取り巻く関係者、各時代の読者によるオースティン作品の評価がまとめられてます。そしてご丁寧にも、この本自体を読書会で取り上げるときの質問集まで・・・。ジェイン・オースティン作品への楽しい手引書としても価値がありそうです。
後半に出てくる、改良された占いボックス「オースティンに聞いてみよう!」っていいですよね。日本人作家だったら誰の占いボックスが欲しいですか?
全てを読み終えた後で、巻頭に掲げられたオースティンの言葉を読み返すと、ちょっとニヤッとしてしまいました。「人の打ち明け話が完全に真実を語っているということは、まれ、きわめてまれである。ふつうは何かが多少とも偽装されていたり、少しばかり間違っていたりするものだ。」
私も毎日の忙しい生活に少しだけオースティンを取り入れてみようかな。
白を基調としたシンプルな装丁もいいです。