ケイト・アトキンソン「博物館の裏庭で」
ペットショップを経営する家族の物語。「わたし」ルビーの受精の場面から始まる冒頭はセンセーショナルですが、未来を感じることができるルビーの語りを中心に、母バンティー、祖母ネル、曾祖母アリスという4代に渡る家族の悲しみ、喜び、空しさ、別れ・・・・・が、生き生きと、かつコミカルに描かれていきます。砲火を浴び炎上墜落する爆撃機からの脱出、突然の訪問者と駆け落ちし異国に向う女性、エリザベス女王の戴冠式の実況中継、家族揃っての楽しい?スコットランド旅行、ワールドカップのファイナル「イングランドVS西ドイツ」のまさに当日に結婚式をあげてしまったカップルの悲劇など・・・・・・イギリス現代史と共にお話はつきません。物語のインデックスとして度々使われるのが、代々手から手へ渡っていった小物たち。置時計、ボタン、銀のロケット、写真などなど。イギリス人はアンティーク好きですが、物としてよりそれが使われていた時代の物語を愛でているのかもしれません。
詳細な訳注により、20世紀イギリス各時代それぞれの世相、流行、そして庶民が普段何を食べているかが楽しめるのもこの小説のもうひとつの魅力です。
私の家族も遡っていけば、それなりの物語がありそうです。
面白かった。