R・L・スティーヴンスン&L・オズボーン
「難破船」
大人版「宝島」と腰巻には謳っています。
大人版ですから、いきなり海賊が出てきたり、すぐにお宝を目指したりはしません。
大人ですから、大人の事情があるのです。
19世紀後半に書かれたこの小説。時代はまさに世界経済を舞台に多角的貿易決済の世。アメリカ、スコットランド、パリ、オーストラリア・・・とお話は展開します。
難破船を競売で手に入れようとした主人公のそれまでと、それから、がお話の構成ですが、なかなかに面白いエピソード満載です。
バーチャル通貨を使って投機の実戦を学ぶエピソード等は現代の投機マネーの暴走と凋落を皮肉っている様にも。さらに面白いのが、ピクニックツアーを定期的に企画し、様々なアトラクションを披露して金儲けを行うこととか、広告コピーへのこだわり、傘を使った広告戦略等々。難破船の積荷をめぐる駆け引きも現代の企業買収を彷彿させます。そしてロイズ保険組合の仕組みなどもさりげなく学べたり・・・。
資本主義がイギリスから世界へと拡大していく中で、飽くなき右肩上がり成長を求める大人の哀しさが存分に語られる物語です。