英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

1984年に戻ってみたい?

2009-06-08 | 日常

めずらしく朝会社へ行く電車で座れた。ラッキーな始まりじゃわい、とカバンから読みかけの本を取り出そうとして、ふと隣の女性をうかがうと・・・・、やっぱり同じ本です。隣同士同じ本を読むのは、ちょっと照れくさいので、そのまま本を引っ込めたのですが・・・・・・・・。その女性を観察していると、何ともイライラするのです。1ページ読んだかと思えば、携帯をもてあそんでみるし、また1ページ読んだかと思うとバッグに仕舞って・・・・次の瞬間また出して読み始めて・・・・。「姉ちゃん、どっちかにせんかい!」と叫んでしまいそうでした。

村上春樹「1Q84」

冒頭から村上節が炸裂します。いきなりタクシーの中で流れる音楽はヤナーチェクの「シンフォニエッタ」。「羊をめぐる冒険」では、車の中ではバッハの無伴奏チェロ組曲が静かに・・・・だったのに。ヤナーチェクとは、いきなりの先頭打者バントヒットです。天国のヤナーチェクさんも突然2009年の日本で注目されるとは、可笑しいでしょうに。でもこのヤナーチェクの音楽テーマが一つのライトモチーフとなり、繰り返し再現されるのですね。そのテーマとは「解放」。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」以来お得意のパラレルな進行で紐解かれる2つの物語は、どこかでシンクロするはず、という期待を読者に抱かせながらも、そう簡単にはネタを明かしてはくれません。必殺仕事人にオウムにヤマギシ、文学賞捏造にDVに怯える女性達・・・。
後半、ホテルオークラのスイートルームで語られる展開は難解。カラマーゾフの兄弟よりも・・・難解・・。事件はよりミステリアスに刺激度を増し、セックスはより大胆に飽きることをしない。かつてのあの牧歌的な1984年は、何物にも無感動となった2009年というメガネを通して新たな意味を吹き込まれていくようである。
再生なのか、はたまた長い自分探しの旅の始まりなのか・・・・。
取り残される多くの登場人物と、それに比例する残像のような読後感です。
「カラマーゾフの兄弟」と同様、「続き」の存在が「ある」のか「ない」のか。

全国的に品薄となっているこの作品。この状況がもし演出されているとしたら・・・・。小説以上に怖い怖い・・・。それ以上に怖いのが電車で隣に座った女性が同じ本を読んでいる光景・・・。怖い怖い。








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