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韓国ドラマ「魔女の法廷」型破りな女検事、鑑賞コラム。
超ワガママで型破りな魔女検事が登場し、意表を突いた設定とハイテンポなストーリー展開が魅力の本作品。面白さの一番はやはりチョン・リョウォン扮するヒロイン、検事マ・イドゥムの魅力だろう。
母親と生き別れ、その喪失感を背負ってずっと一人で生きて来た女性。いつか偉くなって母親を探し出してみせる、自分をこんな境遇に落とした相手に復讐してやる! という気持ちを抱いて成長し、いつの間にか、起訴のため、裁判に勝つためなら依頼人の気持ちなどお構いなし、「検事は加害者の処罰が目的で被害者の事情を考慮する必要あるの?」なんて平気で言い放つ魔女になっていた~という個性派ヒロイン。
勝つためには手段を選ばず、頭脳を駆使して、というか時には悪知恵を働かせて裁判に勝ったときのしてやったりという誇らしげなドヤ顔はまさに魔女。おいおい、ヒロインとしてそれってどうよと突っ込みたくなる場面も多々あるものの、そんな風に自分の思うままに突き進む姿が小気味よくもある。かと思えばいざ自分が窮地に陥るとその傲慢さを反省したりして。なんかこのあたりの人間くささが魅力的でどんどん好きになっていくのだ。
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そんな魔女とタッグを組む相棒検事ヨ・ジヌクは、正義の化身のようなソフト男子。ユン・ヒョンミン演じるジヌクは、精神科医から検事に転身した、男にしては珍しいほどに清廉な、こちらもできる男。彼は常に被害者の心に寄り添っていきたいタイプだから、この2人はいわば真逆。時としてイドゥムのやり口や言動にあきれるけれど、それでも強気の彼女のはっきりとした言動についふっと口元が微笑んでしまうのがツボ。「この女、気持ちいいくらいに首尾一貫してるな」という彼の心の声が聞こえてきそうだ。
わかりやすい男女のラブというよりも彼女の強さや一貫性へのリスペクトというのがいい。時に熱く暴走しがちなイドゥムを抑えたりサポートしたり突っ込んでみたりと、この2人のケミストリー(相手との相性)が面白い。(ちなみに2017年KBS演技大賞ベストカップル賞を受賞!)
そんな彼らの前に立ちはだかるのが善人面をした悪魔。演じているチョン・グァンリョルは『ホジュン』や『リメンバー~記憶の彼方へ~』『会いたい』など良い人イメージが強いが、本作でのいけしゃあしゃあとした悪辣ぶりにはらわたが煮えくり返る。まさにチョン・グァンリョル史上一番の悪い奴ではなかろうか。それだけにこの男をどう打ち負かすのか見届けたくてラストまでぐいぐいと見てしまうわけなのだが。
このドラマの第2のポイントは、扱っているテーマだ。検事が登場する犯罪捜査ものというジャンルは近頃の韓国ではよくあるものだけど、『魔女の法廷』は扱っている題材が性犯罪に限っているのが希少で、その切り口がまさに今を表している。
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一筋縄ではいかない強姦未遂事件があったり、リベンジポルノや児童への性的虐待、政府高官、権力者への性接待、女性へのセクハラ、などなど、過去に韓国で起こった有名な事件を彷彿させるエピソードはもちろん、まさにこの時期のmee too運動を見据えていたかのような場面も出て来る。それでいてそれらを決してどんよりとした気分にさせずにきっちりと見て面白いエンタメに落とし込んでいる手腕がさすがだ。
1話にセクハラ男性の“こんなので犯罪者になったら大韓民国の男性の大半が犯罪者だ!”というセリフが出てくるけれど、まさにそんな意識がはびこる今の韓国を知るにはうってつけの一本になっている。
(kstyle)(文:韓流ナビゲーター 田代親世)
(あらすじ)
幼い頃に行方不明となった母を捜すため、検事になったマ・イドゥム。出世のためなら手段も選ばない彼女は、刑事2部のエースとして活躍していた。ある日、イドゥムは上司のセクハラ事件がきっかけで、年下の新人検事のヨ・ジヌクと知り合う。奇しくも彼はイドゥムが住むマンションの隣人だった。正義派のジヌクにとってイドゥムは相容れない存在だったが、何と2人は誰もが敬遠する「女性・児童被害対策部」に異動を命じられてしまう。数々の捜査でぶつかり合いながらも、次第に互いの存在が気になり始める2人。さらにジヌクは、いつも元気な彼女が母の失踪という傷を抱えていることを知り…。