映画「ペチコート作戦」、二日目です。
今日が真珠湾攻撃が行われた日であることとこの映画にはなんの関係もありません。
さて、コメディにはトラブルメーカーは付きもの。
この映画におけるトラブルメーカーその1であるホールデン中尉は、
制服めあてに海軍に入り、その甲斐あって絶賛婚約中。
全米の株シェアナンバーワンを誇る企業のお嬢さんに見初められ、
提督の覚えめでたく側近にまで上り詰めた身でありながら、
実は物資の闇調達(つまり窃盗)が得意という胡散臭い青年です。
そんな彼がシャーマン艦長の潜水艦シータイガーに乗り込んで来ました。
トラブルメーカーは得てして新たなトラブルメーカーを引き寄せるものです。
今日はそのきっかけから。
1941年12月22日、潜水艦「シータイガー」はマリンデュケ島に接近します。
艦長は役立たずのホールデン中尉をいい厄介払いと島の偵察にほうり出すのですが、
ホールデン中尉、大変なものを連れて帰ってきてしまいました。
女性です。
エドナ・ヘイウッド少佐以下5名のNC、USAR、つまり
陸軍予備看護士部隊の看護士たちでした。
シータイガーの艦橋は珍客の出現に騒然となります。
「我々は何故戦うか。答えはこれだ」
哲学的に感動するトルピードマン「モー」。
彼女ら看護部隊を乗せた飛行機が緊急離陸した島に日本軍が迫って来たのですが、
その飛行機はなぜか彼女たちを置いてけぼりにしたまま行ってしまったのです。
彼女らが困り果てていた時にやって来たのが白馬に乗った王子ならぬ
ホールデン中尉であったというわけです。
それを聞いて乗艦を断るわけにはいきません。
艦長は彼女ら輸送し、セブ島で陸軍に合流させることにしました。
しかし、いきなりこれからの波乱を暗示するかのように、一人の看護士が
パンプスのヒールを甲板に挟んでしまいます。
男性にはお分かりにならないと思いますが、
歩道の敷石の継ぎ目や排水溝の溝の幅がヒールの太さと同じか細い時、
すっぽりとかかとがはまって靴が脱げた経験は
ハイヒールを履く女性なら一度くらいはあるものです
ただし、自衛隊の艦艇公開でも口を酸っぱくして言われているように、
船、特に潜水艦に乗るのにヒールはご法度です。
そもそも南方の戦地にいる看護士がいくら制服でもヒールを履いて
脱出用のゴムボートに乗ってくるわけがないんですが。
とにかく、この看護士がドロレス・クランダール中尉。
のちにそのドジっ子ぶり(死語?)でシャーマン艦長を悩ますことになる
トラブルメーカーその2だったのです。
彼女たちが艦内に入って行った後、思わずホールデン中尉を睨みつける艦長。
いくら調達が得意でも、究極のいらんものを背負いこんでくるとは。
「いいかみんな、セブに着くまで彼女たちの存在は無視すること」
渋い顔で言いかけるや否や、衝突警報のサイレンが鳴り響きます。
案の定、クランドール中尉がラッタルを降りるときに
ボタンを「ぎゅっと掴んで」しまったのでした。
「いいですか、全てのボタンには機能があるんです」
「とにかく何も触らないこと!」
子供に言って聞かせるように注意をしていると、
ヘイウッド少佐「わたしたちは大人ですよ!」
艦長「大人だからだから言ってるんです。心配なのは”大人同士の情報の交換”・・」
(Exchange Information)
ストーバル少尉「あはは」
「・・・・・・#」「・・・・」
ストーバル少尉を演じているディック・サージェントは、この少し後、
「奥様は魔女」の二代めダーリン役で有名になりました。
ストーバル少尉による「艦内ツァー」の始まりです。
「シャワーは一人1分半です」
「無理よ」
「節水にご協力ください」
「二日に一度にすれば3分よ」
「ここは俗にいう・・・ヘッド(トイレ)です」
それはですね、昔帆船だった時代には、舳先(ヘッド)に開けた穴から
直接海に落ちる方式の「水洗トイレ」だったことからなんですよ。
一方野郎どもは女性の乗艦に浮き足立って大騒ぎ。
ホールデン中尉の主催による
「女性部隊に着てもらう服を寄付する権利」
の抽選会が開かれております。
ところで水上艦ではなく潜水艦に女性を乗せて航行する、
こんなことが実際にあったのでしょうか。
この映画のエピソードには実際に大戦中にあったことがしばしば登場しますが、
実はこれも、潜水艦「スピアフィッシュ」が、コレヒドールで
一人の海軍の看護士、数人の陸軍看護士を乗艦させ、
彼女らをオーストラリアまで運んだという史実から着想を得ています。
切羽詰まった状況で仕方なくそうなったという事情は映画と同じですが、
死ぬか生きるかの危険な航行とはいえ、その時のスピアフィッシュの乗員も
おそらく女性の乗艦に騒然となったと想像されます。
もしかしたら「制服を貸す権利をくじ引き」も本当にやったかもしれません。
さて、これは十分予想されたことですが、ホールデン中尉、
早速クールビューティのデュラン中尉に目をつけ、
自分のテニスショーツやパジャマなどを貸してやって露骨に接近中。
潜水艦隊司令の部屋から盗んできたシャンペンで君の瞳に乾杯・・・
おっと、誰か来たようだ。
さてこちらは兵員のバンク。
「クラウス、お前の服誰が着ているんだ」
「希望としてはあのでかい・・」
「やめろ!彼女は女だぞ」
「それが?」
「俺のお袋も女だ」
「それで?」
「いや・・イメージがダブるんだ」
兵たちはのんきでいいですが、大変なのはシャーマン艦長。
何かとガサツなクランドール中尉の数々のドジぶりに悩まされ続けます。
(冒頭漫画参照)
「艦長〜、ブラシくださいなー」(シャワー中手を出して)
エンジンルームの主、トスティンも怒り心頭です。
洗濯物を機関室に干すだけでなく、機関室の操作に口を出してくる
妙に機械に詳しいヘイウッド少佐にイライラ。
「セイラー!」
女のくせに、という態度を隠さぬトスティンですが、相手が少佐では
「イエス、マム」
と返事をせざるを得ません。
その頃シータイガーの乗員の中には体の不調を訴えるものが続出していました。
皆コロンの匂いをプンプンさせて診察の列に並んでいます。
「看護兵、君がなぜ寝ている」
「あうあうあー」
この後も艦内では事件が続出。
着替えを覗いてしまったレード中尉が覗かれた方のハンクルを殴るわ、
バネの代わりにガードルを機械に使用した少佐にトスティンが激怒するわ、
壁ドンでホールデン中尉がデュラン中尉に迫るわ。
「僕らはやかんだ。点火すると内圧が高まる」
(やかん)「ピーーーー」
お二人、艦長が火の元の見回りに来てますよー。
それにしてもホールデン中尉、あんた富豪の婚約者がいるんじゃなかったのか。
その時、シータイガーに緊張が走りました。
日本の8000トン級タンカー、しかも荷を積んだ船がカモネギ状態で
まるで撃ってくれと言わんばかりに現れたのです。
不幸続きだったこの潜水艦が初めての金星をあげるチャンスです。
艦長は魚雷戦を決意しました。
「3番魚雷発射管装填」
魚雷に「MOM」と書き込む例のマザコン水兵(笑)
「方位」「026」「距離」「2300」「1700ヤードで発射」
「3番管準備よし」
「距離2100」
「3番管前扉開け」
「発射準備よし」
「距離1900」
「最終距離」
「マーク」「1800 」「スタンバイ3」
水雷士の手が発射ボタンにかかります。
駄菓子菓子、そこになぜか現れたトラブルメーカークランドール中尉。
「艦長、お薬(白髪に効くビタミン剤)の時間ですうー」
「畜生、下に行ってろ!」
「きゃっ」
ぽちっ(魚雷発射管ボタンを押す音)
魚雷はタンカーを外れ、陸に上がってトラックを撃沈しました。
その日の艦長の日誌より:
「これまでの人生で初めて女性を殴りそうになった。
クランドール中尉は日本軍のスパイかもしれない」
反撃されて這々の体で潜航してそのままセブに逃げたシータイガー。
怒りのシャーマン艦長はそこで女性たちを現地に押し付け、
厄介払いしようと思ったら、現地の司令官にはつれなく断られてしまいました。
敵が明日にもやってきそうなところにさすがに女性をおいてはおけません。
しかもセブには物資がなく、補給もままならず・・・
そこで艦長、背に腹は代えられんと、再びホールデン中尉に
「調達」を依頼するのでした。
「勝手ですね("Doggy dog")」
と艦長に嫌味を言いつつも、ホールデン、現地に駐留している兵士たちから
個人的に「買い付け」を行ってたちまち物資を集めてしまいます。
なんかバッテリーとか明らかに官品を売りに来てる人がいるんですけど・・。
上官に対する敬礼はどんなシチュエーションでも欠かせません。
それだけでなく、ホールデン中尉とハンクル、再び行き掛けの駄賃で
現地農家の豚を一匹拉致して車に乗せて来てしまいました。
「新年のご馳走にしよう」
早速MPに車を止められ誰何されます。
「ブヒー」
「なんですか?」
「彼はホーンズビー水兵だ。具合はどうかホーンズビー」
「ブヒー」
「彼は調子が悪くてね。飲みすぎだ。
でも彼が唯一の通信士なんで何かあったら大変だ」
この後車を見送ったMP同士で会話があるのですが、軍曹は
「ホーンズビーとかいうのが病気でさ、あれ一見の価値ありだ。
潜水艦のことをピッグボートというわけがわかったよ」
(正確には I don't want to call submarine's pig boat.
Men, He was the ugriest! )
ピッグボート、で調べると=潜水艦、と出て来ます(笑)
しかしホーンズビー騒動はこれで終わりませんでした。
豚を盗まれた現地人が、MPを連れて乗り込んで来たのです。
「彼が豚を盗まれたというトラックにはホールデン中尉とハンクル、
そしてホーンズビー水兵が乗っておりました」
「ホーンズビー水兵?」
ホールデン、ピーンチ!
「ホーンズビー水兵はどこか、中尉」
「し・・・・士官用のトイレです」
艦長「・・・・・・・」
ホーンズビー「ぶひー」
「諸君、確かにホーンズビーが盗んだらしい。
彼は飲むと手がつけられない野郎 (スワイン)でね。
(Swineは豚の意もある)
明日になったら彼には『焼きを入れ』(good roasting)てやりますよ」
「彼の身柄をこちらに」
「いや、彼には飲まずにいられない理由があるんだ。
明日、ホーンズビーは大変危険な任務に就く。
おそらく生きて帰る可能性は大変低いだろう」
「そうですか・・・・なら仕方ありません」
艦長、案外はなせるぅ!
パァァァ(*´∀`)゚となるホールデン中尉。
ただし、豚の所有者にはホールデン中尉のゴルフバッグ、ダンスシューズ、
テニスラケット、マッサージ器、そして規則違反の靴下やサックス5thアベニューの
ショーツなどを豚の代金として全部供出させる鬼畜米英なシャーマン艦長でした。
さて、物資の困窮は補修後のペンキにも及び・・・、
下塗りをするのに赤と白のペンキしかなく、一時的にとはいえシータイガーは
ピンクのサブマリンになってしまいました。
そして、この「ピンク」が、彼女とその乗員(プラス看護士部隊の女性たち)
を生存の危機に陥れることになるのです。
続く。