次の日の掃海慰霊式の予行演習が終わったので、わたしたちは
階段をさらに降りて車を停めた「海の秘宝館」の駐車場に向かいました。
下から高校生の群れが押し寄せてくる予感。
そういえばわたし、中学の修学旅行でここに来てるんですよね。
バスケットボール部でしごかれていたせいか、本殿までの750段(だっけ)を
息も切らさず登りきった記憶があります。
商店街にはうどん県副知事の要潤等身大ポスターが。
この人のデビュー作、仮面ライダーアギトをDVDで見ていました。
確かこの劇中でも「香川に帰る」というシーンがあったような・・。
来てみて確かにここはうどん県だと思いますが、それだけじゃないそうです。
これらのポスターは惧れ多くも皇太子陛下の賜宿泊であった元旅館の門
(もう営業していないらしい)に貼ってありました。
ふりかけさんがここで「へそまんじゅう」なるお菓子を買い求めている間、
わたしは商品の中に「キョンシー変身セット」を発見。
今時キョンシーに変身したがる日本人の子供がどこにいるというのか。
お店の人がネコ好きだった場合、この辺に生息している野良ネコを
写真に撮ってポスターにしたりします。
見たら幸せになるという金目銀目の白猫さん。
そして車を停めた「海の秘宝館」駐車場に帰ってきました。
車を出そうとして、船のプロペラが屋外展示してあるのに気付き、
カメラを渡してふりかけさんに撮ってもらいました。
寄贈したのはナカシマプロペラだそうです。
少し車を走らせると、なんと駐車場の隅でつがいの孔雀が飼われていました。
「この狭いカゴではろくに羽を広げることもできませんねー」
「もう求愛する必要ないからいいんじゃないですか? 」
伊勢もそうでしたが、こういう観光地でもある大きな神社の周りの地域には
独特の、「いつも人がいるのに寂れた感じ」があるのはなんでなんでしょうか。
昔ながらの建物を、結構いいかげんな改装でつぎはぎにしつつ使っている
風情のあるような無いような家並みがその感じに輪をかけています。
アイデアは「かに道楽」だけど、経年劣化に耐えない仕様のため、
とっても怖いことになってしまった「たこ道楽」。
こんなものがあっては客寄せどころか逆効果だと思うのはわたしだけ?
ともあれ、それもこれも含めて日頃見られないものを発見する地方の旅は楽しいものです。
この後香川に向かう高速道路に乗ったら、掃海隊御一行様を乗せた
マイクロバス2台と女性自衛官二人の公用車とが一緒に走っていました。
わたしがバックミラーを見ながら、
「あ、後ろの車自衛隊だ!追い抜かせますから誰が乗ってるか見てください」
自衛隊の車というのは陸海(空は見たことない)問わず、法定速度を
わりときっちり守って運転するので、抜かせるのに苦労しましたが、
追い越し車線でスピードを落として抜いていく車を覗き込んでもらったら、
「・・・・全員寝てるし」(ふりかけさん)
わたしもちらっと確認したところ、ほとんどの頭ががっくりと陥没しています。
「まあ、朝早かったんでしょうから無理もないですよ」
「いや、あれは昨日の夜宴会をしていたからです」(きっぱり)
お昼ご飯が「神椿」のバケットつきスープだったので、うどん県に来たからには
一度くらい「その辺のうどん」を食べるべきである、と二議一決し、
栗林公園のあるあの妙に広い官公庁通りの商店街に入りました。
セルフサービス方式の店でカウンターに注文するのですが、お勘定でこれが
380円だと聞いて耳を疑い、お店の人に聞き返しました。
「・・1380円かと思った」
まあそれだと高すぎですけどね。
この通りを海に向かっていくと、高松城址があります。
ここは現在玉藻公園といって有料で公開されているそうですが、ふりかけさんによると、
お堀には潮水が入れられていて鯛が生息しているんだそうです。
「人から餌をもらって生きてるんだそうですよ」
「鯛がですか?鯛ともあろうものがというか鯛の風上にも置けないというか」
これぞまさに「家畜の安寧」というやつですな。
そうそう、家畜の安寧で思い出したのですが、昔栗林公園には動物園がありまして、
昔友達と学生のノリで無計画にここにやって来たとき見たことがあります。
無計画なので友達の誰もがお金を持っておらず、何も食べられないので、
わたしが母に電話してATMにお金を振り込んでもらい、銀行で引き出しました。
ATMの営業が土曜日の12時にばしっと終了してしまうという時代で、
振り込まれたお金を引き出した時、12時1分前というスリリングな展開でした。
そのときに栗林公園の動物園を見ました。
今調べたところ、昭和5年にオープンして、2002年に閉園していました。
閉園前の動物園はそのとき閑散として人影もまばら。
栗林動物園
写真を見てもおわかりのように、へたすると動物虐待ではないのか?というくらい
その環境は劣悪に見え、中でも狭い檻を激しく苛立ちがならうろうろしていた
シロクマは、檻の前に人が立つと、水の中に飛び込んで水をかけるのです。
「あれわざとやってない?」
一人が言い出し、皆で人が通るのを待って観察していたところ、
シロクマは向かいの檻に人が背中を向けて立ったところを狙って、
それをわざとやって楽しんでいることが判明しました。
「かわいそうに。こんな暗くて狭いところにいたらストレスたまるよね」
と言い合ったことを思い出し、ふりかけさんに話していたのです。
その後うどんを食べるために駐車場に車を停め歩いていくと、
通り沿いのお店のウィンドーにシロクマの剥製があるのに気付きました。
「シロクマだ」
「なぜこんなところにシロクマの剥製が・・・・・はっ!」
「もしかしたら栗林公園のあいつ?」
高松市のお店がシロクマの剥製をわざわざどこかで買い求めるとは思えないので、
この剥製があの水かけシロクマである可能性は高い、とこれも二議一決。
「だとしたら、劣悪な環境で一生を終え、死してなおさらしものに・・」
「うっ・・・(´;ω;`)」
数少ない高松市の思い出と、わたしはこんな形で再会を果たすことになった
・・・・のかもしれません。(違ってたらごめん)
ちなみに、上に貼ったページでシロクマの生息を確認したところ、
閉園の時点でもうすでにお亡くなりになっていたことが判明しました。
このときすでに彼は商店街のウィンドーにいた可能性高し。
今夜のお宿は城址の向かいにあるJR系のホテルクレメント。
飛行機代と宿泊がセットになっているプランで取ったのですが、
チェックインするとフロントの方が
「いいお部屋をご用意させていただきました」
たしかにいいお部屋だ〜!
なんと、これから艦上パーティの行われる「ぶんご」が停泊している
港を一望できる角部屋でした。
せっかくいい部屋なのにほとんど寝て荷物を置くだけだったのが残念です。
出入りする船を見ながらこの窓際でゆっくりしたかったなあ・・。
瀬戸大橋で繋がって電車も通るようになり、すっかり四国は
本州への通勤圏となったわけですが、やはりフェリーに乗る人もあります。
さて、チェックインして1時間でシャワーを浴びたり着替えたり、
カメラの電池を充電したりして過ごし、駐車場で待ち合わせて
わたしたちは「ぶんご」に艦上レセプションに出席するために向かいました。
指定された駐車スペースに行こうとすると、自衛官が制止します。
なんだなんだ、と見ていると、横から黒塗りの車が追い越し、
呉地方総監が乗艦するところでした。
わたしたちは盛り上がり車の中からこうやって写真を撮っていたのですが、
制止している自衛官がそれはそれは申し訳なさそうでした。
まあ、自衛隊にすればレセプション出席者は「お客様」。
そのお客様を自分のところのボスの通行のために制止したら、中には
「俺を誰だと思ってるんだ!」とキレる危ない人だっているかもしれませんしね。
サイドパイプの「ほひーほー」が鳴り響く中階段を上る呉地方総監。
前総監には表敬訪問でご挨拶しましたが、こちらの方にお目にかかるのは初めてです。
今感じた疑問。
ラッタルに上がったとき、自衛官が艦尾に向かって敬礼するのは
自衛艦旗に敬意を表しているということですが、それでは夜になって
自衛艦旗が降納されてから偉い人が船に乗る時、この敬礼は行われるのでしょうか。
わたしたちもこの後お迎えの敬礼のなか乗艦したわけですが、
わたしは今回初めてこの位置から、軽くではありますが艦尾の旗に向かって
頭を下げるという偉業(わたしのなかで)を成し遂げました。
今までやろうやろうと思っていたけど、大抵乗員たちが注目しているので
恥ずかしくてできなかったのです。
場慣れの賜物というやつですか。
続く。