一通りの見学を終わって、ブラッドが「飛行機の時間までうちでコーヒー飲んでけば?」
と提案してくれたので、お言葉に甘えることにしました。
日本人らしくわたしたちがえ?そんなのいいんですか?お邪魔じゃないですか?
と気を遣ったのに対し、ブラッドは軽~く
「House is just a house」
と言ったのがなんかおかしかったです。
彼らの家は、基地からわずか5分くらい車で行った高台の住宅街の、
いわば「普通の日本家屋」でした。
玄関を開けたら上がり框があって、入ってすぐ廊下があって、応接間の横に和室があって・・、
というあのお馴染みのタイプの家屋です。
もちろん基地の中にドミトリーがあるのだけど、職場と家は切り替えたい、
という二人の考えで、外に住むことになったそうです。
こういう風に考える軍人は結構多いものらしく、この家も前の借主は
やはり海兵隊の軍人家族だったということを言っていました。
わたしたちがとまどったのは、日本家屋の玄関のたたき、普通ならそこで靴を脱ぐところを
ひょいと階段のように上がって靴のまま入ってしまうことで、全員がそこでえ?と
立ち止まってしまい、二人にそのままでいいよ~と促されて中に入りました。
そして、お留守番していた彼らの愛犬が上がり框までお迎えしてくれました。
和室にダイニングテーブルを置いてそこで食事、日本人がダイニングテーブルを
置きそうなスペースには何も置かず、その分ソファーのスペースが広くとっています。
同じ間取りなのに、アメリカ人が住むとこうなるのか、とちょっとした驚きでした。
そして畳のダイニングのところも靴で歩いてしまうというあたりも。
日本人ならスリッパすら憚られる(畳が傷むから)ところですよね。
ブラッドはいかにもイヌ好きなタイプだなと思っていたのですが、やはり。
この犬(時間が経ったので名前を忘れてしまいました)はもともとブラッドの飼い犬だそうです。
わたしたちのためにキッチンに立ってコーヒーを入れてくれているブラッドを
期待の眼差しで見つめる犬。
耳が垂れているのに短毛で精悍な体型のこの犬、なんていう種類でしょうかね。
とにかく、彼はアメリカ生まれで、子犬の時日本に連れてきたのだそうです。
ところでキャリーさんはブラッドがシミュレーターに入っている間車であちらこちら
基地を案内してくれていたのですが、そのときにブラッドとの結婚式について
「サーベルのトンネルをくぐっている写真があるから後で見せてあげる」
と言ってくれていました。
もしかしたら、家に呼ぶことは最初から二人の間で決まっていたのかもしれません。
ほとんど初対面の人間を家に招じるくらい信用するというのは、ひとえにTOと
大学のアルムナイ同士であったということに他ならないと思います。
それはともかく、その二人の結婚アルバムを見せていただきました。
写真を撮ることも許可済みです。
ブログにアップするとは断っていないので顔隠しで。
この表紙らしい写真の飛行機、何でしょう?
出た、アメリカ人の好きな写真ポーズ。
ジェシカさんはアメリカ女性の中でも少数派に属する「ものすごくスマートな人」で、
体型的にはジョン・F・ケネディの息子の奥さん(ファッション関係者だった)の
キャロラインという人に雰囲気が似ているタイプ。
つまり美人です。
ある集まりで偶然出会ってブラッドが一目惚れしたとのこと。
そうそう、これが見たかったのよ。
教会から出てくる二人をサーベルのトンネルが・・・・・
・・・・まあ、飛行中隊なのでずらりとというわけにはいかなかったようだけど、
いや本当にかっこよろしいなあ。
自衛隊員と結婚した人も、メスジャケットなどをお召しになった新郎が
かっこいいので新婦はもちろん新婦の友人大感激、というものらしいですが、
このときのブライドメイド(花束を持っている新婦の友人、左のブルーのドレス)
たちは新郎友人にときめいたりしたのではないかと勝手に思ってみたり。
ちなみにこのブライドメイドの衣装も、結婚式の雰囲気を決する重要なファクターなので、
新婦と友人たちはこれにこだわりまくります。
これを決める様子を毎回三組ずつカメラで追う番組がアメリカにはあるくらいで。
さすがに彼女の友人は美人さんが多いようで、このような難ありスタイルの人には
難しそうなデザインと色も、綺麗に着こなしています。
ブルーはやはり海兵隊のブルードレス?と思ったのですが、ブライドメイドのドレスは
「サムシングブルー」で圧倒的に青が多いのです。
結婚式会場の上空をおめでとう飛行するF-18ホーネット。
すごいですよね。
一回の飛行にとんでもなくお金がかかるらしいということはわかりますが、
それを(さすがに編隊飛行ではないにせよ)出してくれるとはさすがアメリカ。
それぐらいせんでなんのアメリカ軍か、というわけでしょう。
皆に祝福を受ける二人。
ブラッドの左胸にはウィングマークがありますね。
ちなみに彼は軍人になろうとは全く考えておらず、エンジニアになりたかったそうです。
棚の上に飛行機の模型が(笑)
彼らは結婚して3年目でしたが、まだ子供を作る時期ではないということで、
日本では犬との三人暮らしでした。
もしかしたら日本に赴任している間は色々と大変なので(彼女の不便とか)、
アメリカに帰るときまで我慢するつもりなのかもしれないと思われました。
また、キャロラインさんの親族には軍関係の人物は一人もいなかったため、
「軍人の妻」の立場に未だに慣れていないという部分があり、特に夫が危険な仕事をしていることについては
「考えないようにしている」
とのことでした。
時間が来てお宅を辞する時、ブラッドがわたしたちにくれたお土産の一つ。
ペナントやコップのカバー、メダルなど、マーク入りの品ばかりです。
Tシャツは2枚あって、わざわざ基地でわたしたちのために買い求めてくれたのだと思うと感激でした。
ところでこのわんちゃんなんですが(笑)
カメラ目線でしょ?
このあとなぜかわたしのところにまっしぐらにやってきて、熱烈歓迎。
昔から犬猫に妙になつかれるという体質を自負するわたしですが、
ここでもまたものすごく好かれてしまい、もう舐めなさる舐めなさる(笑)
とりあえず外に出ている部分、肘から先は満遍なく彼の唾液まみれです。
舐めるって、本当に犬の歓迎のしるしなんでしょうね?
と疑わしくなるくらい、わたし一人が集中して「舐刑」(舐めの刑)にあいました。
TOも息子も普通に犬好きなんですが、わたしほどではないので、
動物ってそういうのがわかるのかな、と度重なる彼らの歓迎にあらためて思った次第です。
ブラッドはさようならのとき、わたしに向かって敬意溢れる態度で、
「ハグさせて」
といい、ハグ(息子とTOは握手だけ)をして別れの挨拶をしました。
優しく、かっこよくていかにもパイロットらしい精悍な男性と
やはり知性溢れる美人の(しかもブロンド)カップル。
まるでアメリカのドラマに出てくるような絵になる二人です。
「もし息子ができて自分と同じ道を選ぶといったらどうする?」
という質問には、知的な人たちらしく
「彼がそうしたいと言うならそれは彼の意思なので尊重する」
と答えていましたが、とりあえずそれについてはこだわらないそうです。
ブラッドの部隊はこの後すぐ外地に行く予定になっており、そのあとも
二人が一緒に居られる時間はあまり多くない、ということでしたが、
この美しい夫婦と、将来彼らの間に生まれてくる子供達ががこれからも幸せでいられるように、
アメリカと彼らの上に何事も起こらないでほしいと、心から今も祈らずにいられません。