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「世界のミイラ」と「ミニチュア鉄道&ヴィレッジ」〜カーネギーサイエンスセンター

2020-01-22 | アメリカ

さて、せっかくなのでピッツバーグで見た
カーネギー・サイエンスセンターの他の展示についてもお話ししましょう。

潜水艦以外にわたしたちが見るつもりをしていたのが
現在の当博物館の特別展示、「マミーズ・オブ・ザ・ワールド」、
世界からミイラを集めてきてお見せしましょうというもの。

特別展示で部屋が別なので、このエキジビジョンを見るのには
通常の入館料に加えて専用の入館チケットを買わなくてはいけません。

博物館のメンバーであれば20ドルの入館料はただですが、
ビジターが特別展示を見ようとしたらコンボで一人32ドル必要です。

アメリカの博物館にしては異例の高さですが仕方ありません。

で、観ましたよ。『世界のミイラ』。

Mummies of the World

最初の部屋で、「見学の注意」みたいな短いビデオを見せられます。
そこでは、展示館内での写真は禁止であることや、展示されているミイラは
かつて生きていた人々だったので敬意を払って見学するように、
みたいなことを言っていました。

写真は撮れませんでしたが、内容はこんな感じです。

一番最後の「干し首ミイラ」は、写真ではわかりませんが、大きさは
わたしのこぶしくらい。
人間の頭がこんなに小さくなるものか、と驚愕でした。

「どうやってこんなにちいさくしたんだろうね」

とMKにいうと、

「そこに書いてあるよ」

読んだところ、頭部から頭蓋骨を抜き取ったあとは、茹でたり、
熱した石などを中に詰めたりして徐々に乾燥させるうちに
だんだん小さくなっていくということでしたが、なんでも
結構な数の干し首は土産物として制作されていたとかなんとか。

なお、ここに展示されているミイラの皆さんについては、
カーネギーサイエンスセンターの科学的チェックを受け、
いつ頃、何歳くらいで、という資料に残された情報以外に、
なんの病気で亡くなったかなども公開されています。

紹介ビデオに登場する「家族のミイラ」ですが、確か女性は
亡くなったのが38歳で、胃からピロリ菌が見つかった、
などと書かれていたような記憶があります。

いずれにせよ、一か所の展示でこれほどたくさんのミイラ
(しかも完璧な状態で)観たのは初めての経験でした。

 

さて、これでここにきた目的は果たしました。
実はここにくることがあまり乗り気でなかったMKに、

「潜水艦とミイラだけ見たらすぐに出てこよう」

とその気にさせるために言って連れてきたので、潜水艦の後は
すぐに博物館を出るつもりをしていたら、なんとMK、

「せっかく来たから他のところも観てみたい」

 

いつも出だしを渋る割には必ず現場に来てからこういうことになるんだな。
思うにこれは彼の超保守的で変化を嫌う性格から来ているようです。

足を踏み出すのに躊躇するけれどその場に来てみれば今度はそこから動かない的な。

まあわたしも高い入館料の分ちゃんと見学するのに異論はありません。

 

長いスロープになっている回廊式の階段を上っていくと、
サイエンスセンターの目玉常設展示らしい、こんなコーナーがありました。

「ミニチュア・レイルロード&ヴィレッジ」という大ジオラマです。
広い部屋全部がジオラマの街。

ピッツバーグやペンシルバニア近郊の実在の地域を表現していて、
50年以上、地元の人々に親しまれているアトラクションなのだそうです。

舞台はペンシルバニア州西部、1880年から1930年までの光景です。

1954年12月1日以来、毎年サンクスギビングの初日に公開され、
ホリデーアトラクションとして人気を博していましたが、ここ
カーネギーサイエンスセンターでは、年に2ヶ月のメンテナンス期間を除き、
一年中展示を見ることができます。

当時の町や村の様子なので、車もそのころの型ですし、
子供の遊びは木の枝に吊り下げたブランコだったりします。

ブランコはゆっくりと揺れています。

鉄道模型なのでこのように常時列車が走り回っています。
これはかつてペンシルベニアにあったシャロン製鉄所を再現したもの。
実際の製鉄所の設計図から起こして構築したそうです。

西部開拓時代っぽい服装に馬車。
よりリアルに近づけるために、ジオラマには最新のコンピュータシステムを投入し、
レイアウトの制御を行っています。
システムはNASAやディズニーワールドに制御モジュールを提供している
Opto22という会社が提供しました。

今回は荷物になるので、一眼レフではなくニコン1のV3に、
広角レンズだけつけて、それで全てを乗り切りました。

ISOを調整しないで撮ったら列車が物凄い勢いで疾走してます(笑)

広い会場を右回りに歩いていると、だんだん暗くなりました。
なんと、昼夜をタイマーで表現しているのです。

この照明システムを開発したのはハーバード大のある研究室で、
実際の太陽光の動きが表現されるようにコンピュータ制御しています。

画面が暗かったので露光を上げすぎて画像が荒れてしまいました。
手前にはウェスティングハウスの研究センターがあります。

シェンリーパークの中にジョージ・ウェスティングハウスの
若い頃の銅像が建っているように、彼はここピッツバーグに住んでいました。

そして川の向こうにあるケーブルカーをご覧ください。

サイエンスセンター上階から潜水艦「レクィン」を撮ったものですが、
川の向こう岸に・・・。

これがそのケーブルカーでございます。
「モノンガヒラ・インクライン」といい、1870年に開通した
全米最古の連続式ケーブルカーなんだそうです。
(多分世界最古はザルツブルグのあれだと思うけどどうでしょう)

なんでも昔、山上に住み着いたのがドイツ系移民だったため、彼らが
祖国にあったこの同じタイプのケーブルカーを作ったということです。

夏に滞在した時、この山頂のレストランがお勧め、という
情報をいただいたのですが、ついに行けずじまいでした。

秋の夕陽に照る山紅葉。

というわけで、ジオラマは場所によって春夏秋冬が変わり、
フランク・ロイド・ライトの「フォーリングウォーター」
(落水荘)は紅葉の中にたたずんでいます。

ピッツバーグのジオラマに川は欠かせませんが、このジオラマの自慢は
水が全て本物であること。
フォーリングウォーターに流れるベア川の水も本物です。

ピッツバーグ市民には見覚えのある建物や光景ばかりなのでしょう。
子供はもちろんですが、大人たちも目を輝かせて見学しています。

冬の景色の中に採石場がありました。
作業員がドラム缶の焚き火で暖まっています。

ジオラマを一周してくると、最後は冬の冠雪した山々が現れます。

なんでも、サイエンスセンターではサンクスギビングの2ヶ月前に
展示を閉鎖して、その期間にクリーニングはもちろんのこと、
毎年新しいモデルとシステムがインストールされることになっているのだとか。

しかし、このジオラマももとはといえば、一人の第一次世界大戦のベテランが
先天性心疾患の闘病の合間に自宅で始めたモデル作りがきっかけでした。

彼が毎年クリスマスに自宅を公開して見せていた評判のジオラマが、
場所を受け継いで最終的にここにやってきたのは20年前のことです。

さて、別のフロアに行くとそこはロボティクスコーナーでした。
ここではロボットアームとエアホッケーの対戦が楽しめます。

アームは無駄な動きを一切しないので、相手の打ったパックの動線が
シュートにつながらないと判断するとピクリとも動きません。

そして確実にヒットしてくるので、人間はまず勝てません。

このコーナーは「歴史的ロボットの殿堂」。

この妖艶なロボットの名前は「マリア」
ドイツの名匠府フリッツ・ラング監督の1927年度作品
「メトロポリス」で描かれた未来の都市に存在するヒロインです。

超かっこ悪いこのロボットは「ゴート」(Gort)
1951年の映画「地球が静止する日」The day the earth stood still
に登場したロボットです。

惑星からの訪問者、クラトゥという名前の人型エイリアンが連れている
8フィートのロボットというのがこのゴート。

The Day the Earth Stood Still (2/5) Movie CLIP - Gort Appears (1951) HD

この頃はアメリカでもこの程度のSFしか作れなかったんだなあ。

当ブログでも一度取り上げた、1999年のアニメ、
「ザ・アイアン・ジャイアント」

わたしに言わせると手塚治虫の「鉄腕アトム」リスペクトのストーリーです。
地球を守るために我が身を犠牲にしたのがこのロボットでした。

説明は要りませんね。
C-3POもR2-D2も、1977年生まれで、もうすでに生まれてから
43年ということになります。

最新作にももちろん登場していますが、もし「スターウォーズ」が
40年前でなく2020年に初めて生まれていたら、登場するロボットは
こんなのではなくAI型美空ひばりみたいなのだったんでしょうか。

なんかそれ嫌だなあ。

ヤスデみたいなアームにバスケットボールを拾い上げ、えいやっと投げれば
必ずシュート成功、成功率100%です。

向こう側に人間が試すことができるバスケットゴールがありますが、
これは、自分でやってみて人間のダメさを思い知るためのもののようです。

次のコーナーはメディカルな分野。
内臓や神経の模型がありましたが、これらは、あのいわゆる
「人体の不思議展」と同じ手法(プラスティネーション)だと思われます。

ここでもやったことあるんですよね。人体の不思議展。
開催に際しては当センターのキュレーターが

「遺体の中国における取得方法について同義的な疑問がある」

として、辞表を提出するという騒ぎになったようです。

The Carnegie Science Center unveils Bodies
... The Exhibition ... but what are you seeing?

子供向け体験型科学的プレイゾーンでは、水を使うので
滑り止めのマットが敷かれていますが、こんな
バナナ型の注意喚起看板?があって和みました。

このあと昼食はフードコート型レストランに行ってみました。

メキシカン料理のカウンターにあったポキ丼。
見かけは美味しそうですが、如何せん味が辛すぎでした。

ブラウンライスは炊き方が堅かったし、ホワイトライスの方が良かったかな。

その日の晩ご飯がピッツバーグ最後なので、これもMKのリストにあった
「ポーチ」というちょっとハイセンスなレストランに行ってみました。

「ホールフーズ」などがある高所得者向けの住宅街の中心に
新しくできたショッピングモールの一角にあります。

MKのお目当てはこれ、スモークドウィングス・ブルーチーズソース添え。
ピリッと辛味がついていてウィングの肉付きもよく、最高です。

というわけで次の朝、ピッツバーグ空港に無事チェックインしました。

乗り換えのシカゴ・オヘア空港行きの小さな機に乗り込み、
1時間半寝るつもりで枕を首に巻いて窓に寄り掛かり、

うとうとしていたら、機内アナウンスがあって、皆がざわざわしています。

なんと、シカゴが天候不良で飛行機が飛ばせませんというのです。
ハブ空港なのにそんなことってある?と思ったのですが、
シカゴ空港の風の強さというのはかなりパイロット泣かせなんだとか。

そういえば昔シカゴに到着した便のパーサーが

「風が強くて大変でしたけど・・・これがシカゴです!」

とアナウンスしていた覚えがあるなあ。

待っていたら飛ぶんかいな、と外に出て時間を潰していたら、
いきなり電光掲示板に「キャンセル」の絶望的な文字が・・・!

カウンターに行って、

「国際線乗り継ぎがあるんですが・・・」

というと、

「お気の毒ですがシカゴには今日飛びません」

と本当に気の毒そうに言われてしまいました。

仕方がないので次の日の同時刻便とシカゴからの国際便を確保してもらい、
とりあえず今晩泊まるホテルをiPhoneから確保し、
そしてレンタカーのカウンターで一泊だけ車を借りました。
どちらにしても全てが手元で行える便利な時代で良かったです。

一泊だけ借りたこの車、キャディラックの新型SUV、エスカレードといいます。
怪我の功名というのか、おかげですごい車に乗れました。

何がすごいって、まず安定性が異様なくらいあって、
滑らかでかつ重厚な走り、まるで包み込まれるような居住性は驚きでした。

機能も充実していて、例えば右側の車線をタイヤが踏んだら、座席の右側が
ブルブルっと震えて「お尻に注意喚起」してくるのには笑いました。

こういうお節介は日本車の専売特許だと思っていましたが。

次の日、無事シカゴ空港に着いて、つい入ってしまったインチキジャパニーズ。
でもおいしかったです(くやし涙)とくに右側のアボカド巻き最高でした。

シカゴ空港は一つのコンコースがまっすぐ長いので、
待ち時間カートを引きながら三往復くらいテクテク歩いて、
Apple Watchに課されている1日のノルマ歩数を稼ぎました。

なぜかコンコースに陸軍と海軍のバナーがかかっています。

空港の所々に、ヴェテランリスペクトのプラークがあったり、
前にもご紹介したオヘアの紹介や、タスキーギ・エアメンのコーナーなど、
国防に携わる人たちに感謝する目的の展示がアメリカの空港には多々観られます。

帰りのシートは変更不可で、問答無用のプレミアムエコノミー。
でも隣が空いていたので超ラッキーでした。

そしてなかなかおいしかったトレイの食事。
というか、お皿を分けて出てくるだけで味は一緒なんだから、
量だけならこちらで十分って気はしました。

ここの問題はシートがフルフラットにならないことです。
無駄に神経質なわたしは真っ直ぐなところでないと熟睡できないのですが、
今回はそんなこともあろうかと、アメリカで買っておいたメラトニン10mgを
摂取して強制的に自分を眠らせる作戦を取りました。

そして帰ってきて1週間になるというのに、いまだに8時に眠くなり
4時に起きてしまうという健康的な時差ボケ生活を送っています。

 

終わり。