大西洋越え
膨大な人々の移動を可能にしたのが、十九世紀の『運輸革命』だった。 植民地時代には、ヨーロッパの貧民が大西洋を越える費用を自分で支払えるなどと思いもよらなかった。 年季契約奉公人は、渡航費用を前借する代償として、四~七年間も隷属労働に服さねばならなかったのだ。
しかし、国際貿易の発展が革命的変化をもたらした。 帆船時代には、大部分の移民にとって旅客船での渡航は贅沢過ぎたから、彼らは貨物船を利用した。 アメリカは農産物をヨーロッパに輸出し、工業背品を輸入した。
農産物は工業製品に比べてひどくかさばったから、アメリカに向かう船にはたっぷりと余裕があり、船会社は船客として移民を歓迎し、競争が激化し、船賃は下がった。 さらに、前払い渡航制度、すなわち先にアメリカに来ている者が、親族や友人に切符を買って故郷に送る制度が、移住をさらに容易にした。
それでも渡航は厳しい試練だった。帆船による渡航は、最低六週間を要した。それも風と天候次第だった。逆風の場合には、その二倍の期間がかかることもあった。 船は、元来貨物船であり、旅客の運輸に適していなかったから、移民たちは暗くて通風の悪い、不衛生な大部屋に何百人と詰め込まれ、長い航海で体が衰弱し、疫病が広がることもしばしばあった。
しかし、蒸気船の出現で事態は大幅に改善された。一八五〇年代に蒸気船が大西洋航路に登場すると、転換は早かった。 一八五六年に移民の九六%は帆船で来たが、六七年にはイギリスの港から合衆国に到着した旅客の九〇%以上が蒸気船で来た。
ちなみに、ペリー提督が黒船で日本にやって来たのは一八五三年、受験生は嫌でござんすペリーさんで、年号を覚えましょう。
蒸気船での渡航日数は一八七〇年代には、リバプールからニューヨークまで早くて十日間、ナポリからは十四日間となった。 渡航費用も大幅に下がっていった。 一八六〇~七〇年代には三等運賃で平均三十ドルだったが、九〇年代には十五ドルで渡航できることもあった。
ハンガリーのある出稼ぎ労働者が支払った運賃は、ハンブルグ~ニューヨーク間で往復四十ドルだった。 彼は、アメリカで炭鉱労働者として働いたが、炭鉱では坑内作業で一日二ドル、坑外作業で一日一.三ドルほど稼げたから、大西洋を幾度も往復する出稼ぎが可能となったのである。
(関連情報)
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