素材大手が特許の競争力を高めている。
日本経済新聞社が特許事務所の協力を得て調べたところ、国内上場企業で最も競争力があるのは三菱ケミカルグループだった。大日本印刷(DNP)や旭化成も上位に並んだ。パナソニックホールディングス(HD)などの電機大手は振るわなかった。
工藤一郎国際特許事務所が開発した、特許の価値を経済的な側面から評価する「YK値」を調べた。
YK値は特許の閲覧請求、異議申し立て、無効審判の件数などを基に算出する。数値の大きさは競合を排除して市場を独占する力が強いことを示す。
10月時点でランキング1位は三菱ケミカルだった。
製品ごとに知的財産戦略を練り、特許の競争力を高めている。近年は持続可能性に力を入れ、リサイクル材料などを活用した樹脂関連製品の出願が多い。電池材料関連なども強い。
2位のDNPも化学合成樹脂や生活用品関連で伸びが目立つ。競争環境が厳しい樹脂分野は特許の異議申し立てや無効審判が多く、YK値が高まりやすい側面もあるようだ。
かつて高い競争力を誇った電機大手は振るわない。順位は三菱電機の27位が最高で、パナソニックHDや日立製作所などは上位50位に入らなかった。製品やサービスのコモディティー化(汎用品化)が進んでいる可能性がある。
10年前に比べた伸び幅はDNPが1位だ。6位に入ったレゾナック・ホールディングスは2020年の日立化成買収で上積みしたうえ、その後も素材や電子デバイスといった分野でYK値が伸びた。
特許競争力という点では買収が成功しているといえそうだ。
強い分野を磨く企業が多い一方、得意領域の転換に成功した企業もある。
代表例が炭鉱事業を祖業とする三井松島ホールディングスだ。10年前は生活用品・エンタメが強かったのに対し、足元は機械・ロボット関連の競争力を高めている。
競争力の高い特許を持つまでの投資効率も調べた。1位はペッパーフードサービス、2位はエイチ・ツー・オーリテイリングだった。ペッパーフードは生活用品・エンタメ関連の特許の投資効率が高かった。