開幕したセミコン・ジャパン(11日午前、東京都江東区)
半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」が11日に開幕した。先端半導体の量産を目指すラピダスや米インテルの幹部らが登壇。
半導体の回路線幅を微細化する技術の難度が高まるなか、複数の半導体チップを組み合わせる「後工程」が技術革新の鍵を握ると語った。日本の半導体再興に向け素材や製造装置メーカーの存在感が高まる。
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「膨大なデータ量に対応するには前工程だけでなく、後工程の技術革新が必要だ」。ラピダスの折井靖光・専務執行役員は同社のブースに集まった来場者に訴えた。
回路線幅が2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの先端半導体に、後工程技術を加えることで消費電力をさらに10分の1に抑えられるという。
カギを握るのは種類の違う複数のチップを組み合わせる「チップレット」や縦方向に積み上げる「3次元実装」といった技術だ。
半導体チップ同士の距離を近づけることで、人工知能(AI)のデータ転送速度が高まり、電力効率も上がる。
半導体はこれまで回路を微細にすることで性能を高め、面積当たりの性能が約2年で2倍になるという「ムーアの法則」が研究開発の指針となってきた。
ただ、AIなどの開発に使う最先端品の線幅は数ナノメートルまで小さくなっており物理的な限界が近づいていると指摘される。
半導体の性能向上を続けるために「ムーアの先」を見据えた微細化以外の技術開発が重要になる。
インテルも日本企業との連携を広げる。同日講演したファウンダリー技術開発本部副社長のジェフリー・ペッティナート氏は「組み立て工程がより複雑化しており、一貫した方法で効率化していくことが求められている」と話す。
同社は後工程を自動化する技術を開発する企業連合を日本で設立した。9月時点でオムロンやTDK、シャープ、村田機械、レゾナック・ホールディングスなど22社・団体が参画。
日本の装置や素材メーカーなどと組み、数年内に実証ラインを作り、28年の実用化を目指す。
後工程装置が最大のブース
今回のセミコン・ジャパンには35カ国・地域から1107の企業・団体が出展する。後工程関連の企業は159社と2022年からほぼ倍増した。
ディスコは会場で最大のブースを構えた(11日、東京都江東区)
会場で最大のブースを構えたのは半導体装置大手のディスコだ。
ブース内に半導体ウエハーをチップに切り分ける切断装置やウエハーを薄く削る「グラインダ」といった装置をずらりと24台並べた。「これまで後工程の装置はコストや歩留まり改善が主な役割だったが、半導体の性能に直接影響し始めた」(ディスコ)という。
SCREENホールディングスは主力の前工程向けの洗浄装置の展示エリアとは別に、複数の半導体チップを組み合わせる「先進パッケージング」専用の装置を紹介するブースを設けた。
車載事業の技術を応用
コイル巻線機大手のNITTOKUは車載事業で培った技術を後工程に応用する。
25年に切断後のウエハーを高速で搬送し、次の工程へと据え付けるための装置の販売を始める。まずは日本企業に販売し、欧州企業をはじめ海外展開も目指す。
素材メーカーも需要の取り込みに躍起だ。富士フイルムは後工程で使う開発中の銅と樹脂を使った新材料を紹介した。
半導体チップと放熱材料の間に挟みこむ素材で、放熱性能が高い。半導体チップに熱がこもるのを防ぎ、性能を安定させられるという。
経済産業省によると日本は半導体の製造装置で約3割、主要部材で約5割の世界シェアを握る。
米ラムリサーチのティム・アーチャー最高経営責任者(CEO)は「日本はロボット工学や自動化だけでなく、半導体製造や材料技術の分野で優れた技術を持っている。半導体産業で日本が果たすべき役割は非常に大きい」と強調した。
先端分野での後工程技術の市場拡大は、日本企業にとってビジネスチャンスとなる。
業種や地域を越えた連携に向けて存在感を高められるかどうかが、日本の半導体産業の再興を左右する。(為広剛、向野崚、山田航平)
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日経記事2024.12.11より引用