複数店舗での共同配送を検討し、輸送効率を高める(東京都内の家電量販店)
大手家電メーカーと家電量販店が共同物流や在庫管理といった流通戦略を策定する新会社を2027年にも共同で設立する検討に入った。
ヤマダホールディングス(HD)やパナソニックHDなど10社超が参画する。人手不足などの課題が山積する物流分野を協調領域と位置づけ、製販一体で効率化に取り組む。
25年1月に物流連携への協議会を設立し、27年以降の新会社設立へ準備を始める。
同業種間の連携にとどまらず、メーカーから小売りまでの幅広い業種が参加する。家電の製造から販売までのサプライチェーン(供給網)全体の効率化を目指す。
家電量販ではヤマダHDのほか、ビックカメラ、エディオン、ケーズHD、上新電機、ノジマ、ベイシア電器(前橋市)が参画する。
7社で国内家電販売の6〜7割のシェアを占めるとみられる。メーカーではパナソニックHD子会社のほかソニーグループ子会社が名を連ね、物流会社の三井倉庫ロジスティクスなども参加する。
新会社では共同で倉庫の運用や物流の計画を練る。トラックの積載効率の改善をはかる。各社の費用負担や組織運営の詳細は今後詰める。実証実験を26年にも始める。
メーカーの工場・倉庫から共同倉庫に製品をまとめて運び、同じ地域に向かうトラックに複数量販の製品を混載するといった運用を想定する。
従来はメーカー側が各量販の拠点ごとにトラックを手配して荷物を運ぶ手間が必要だった。量販側も店舗が少ない地域で配送拠点を抱えるコストが重荷になっていた。
電子タグ「RFID」の活用も検討する。製品を個別管理できる電子タグで共同倉庫での仕分けミスを減らす。
倉庫や店舗の製品在庫情報を量販店やメーカーがリアルタイムで把握できるシステムを構想する。メーカーは売れ行きをもとに家電の生産量を調整できる。量販店側も適正な発注や欠品の減少につながると見込む。
他業界では食品で味の素など大手5社が19年に共同物流会社のエフライン(東京・中央)を立ち上げ、共同の海上輸送や卸とのデータ共有を検討するなど連携を進めてきた。
コンビニでも4月からファミリーマートとローソンが一部地域で冷凍食品の共同配送を実施している。家電の今回の協議会では川上から川下まで幅広い企業で連携する。
家電量販業界は上位企業の競争意識が高いとされ、競合同士が連携する取り組みは少ない。
他店に対抗して製品を安く売ろうとする小売りと、利潤を確保したいメーカーとの溝も大きく対立も生んできた。
1964年からは希望小売価格を下回る値段で家電を販売しようとしたダイエーに対して、松下電器産業(現パナソニックHD)が約30年にわたって製品出荷を停止した歴史もある。
ただ家電は機能進化の停滞や買い替えサイクルの長期化で、国内市場の成長が見込みにくくなっている。
「メーカーを含め、無駄なコストを削らないと利益が確保できない」(量販幹部)。「物流24年問題」を背景にドライバー不足や物流費の高騰も深刻で、競合同士の連携が避けられないと判断した。
協議会の会長にはヤマダHDの山田昇会長兼社長、副会長にはパナソニックマーケティングジャパンの堤篤樹社長が就任する。
(平嶋健人)
日経が先駆けて報じた最新のニュース(特報とイブニングスクープ)をまとめました。
日経記事2024.12.12より引用