インタビューに答える独インフィニオンテクノロジーズのヨッヘン・ハネベックCEO(東京都中央区)
独半導体大手のインフィニオンテクノロジーズのヨッヘン・ハネベック最高経営責任者(CEO)はマイコンなど汎用半導体の中国での現地生産比率を高める考えを示した。
顧客の要望に応じて江蘇省無錫市にある自社工場を活用するほか、現地工場への生産委託を増やす。
日本経済新聞のインタビューで明らかにした。
「安定調達のため、中国の顧客が現地生産を求めている」とした上で「中国内に工場を持つファウンドリー(受託生産会社)や現地メーカーに汎用品の生産を委託し、現地の自社工場も活用していく」と語った。具体的な生産比率や目標は明らかにしなかった。
インフィニオンは電気自動車(EV)や人工知能(AI)データセンターに使う電圧制御用のパワー半導体で世界首位だ。ドイツやオーストリア、マレーシアに生産拠点が集中する。
中国での工場の新設については「規模の経済を重視する」として否定した。パワー半導体など高性能品は、中国外の自社工場で生産を続ける方針だ。
米国との対立が深まるなか、中国は官民挙げて半導体の国産化を急ぐ。比亜迪(BYD)など自動車メーカーで中国内の半導体調達を増やす動きがある。
「一部の汎用品では中国が市場を支配しているが、高品質のEVや太陽光発電では複雑な機能が求められる。技術革新で差別化できる」と自信をみせた。
2025年1月20日にはトランプ前米大統領が米大統領に就任する。ハネベック氏は「供給網をローカライズすることは市場の成長にとってマイナスだが、多くの政府にとって半導体が戦略物資であることを受け入れなければならない」と語った。
インタビューに答える独インフィニオンテクノロジーズのヨッヘン・ハネベックCEO(東京都中央区)
足元ではEVや産業機器の需要が低迷しており、インフィニオンも24年9月期の連結純利益が前の期比59%減の13億ユーロ(約2000億円)となった。
市況回復については「25年4月以降には顧客の在庫調整が終わり、受注体制が通常に戻る」とした。25年9月期は約25億ユーロを投資し、独ドレスデンなどで増産体制を整える。
生成AIの消費電力の問題を解決するためにAIデータセンターで高効率のパワー半導体を採用する動きがある。インフィニオンでも前期のAI向け売上高が2倍の5億ユーロに増えた。「2年以内に10億ユーロに到達する」という。
英オムディアによると23年時点でインフィニオンのシェアは21%で首位だった。日本もパワー半導体で一定のシェアをもつが、1社当たりの規模が小さい。
日本政府はパワー半導体向けに補助金を出して増産投資を後押しすると同時に、最先端半導体の国産化を目指すラピダスへの支援も拡充している。
ハネベック氏はパワー半導体について「技術だけでなく、規模や製品群の拡充によって顧客提案を革新する必要がある」と語った。各国政府の半導体支援については「資金があるからといって新しいビジネスを始めることに意味はない。経済的な意義とビジネスモデルがなければ持続可能ではないからだ」とも話した。
(向野崚)
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日経記事2024.12.10より引用