生成AI(人工知能)の世界的な成長を背景に、電子部品や半導体、半導体製造装置を手掛ける京都企業の活躍の領域が急拡大している。
脱炭素社会の実現に向けた電気自動車(EV)シフトも電子部品・半導体関連の需要を押し上げる。市場では、ものづくりに強みを持つ京都企業を評価する動きが広がっている。
ニデックは生成AIサーバー向けの冷却装置を主力事業に育てている。
生成AIサーバーは画像処理半導体(GPU)などが高温になりやすく、冷却性能が高い水冷式装置の需要が急増している。
装置は米サーバー大手のスーパー・マイクロ・コンピューターと共同開発しており、生産能力を2025年3月期中に月3000台と1年間で15倍に引き上げる計画だ。
村田製作所はAIサーバーなどに搭載される電子部品の需要増に備える。島根県出雲市やフィリピンの工場に積層セラミックコンデンサー(MLCC)の新たな生産棟を建設中だ。
MLCCは電気を一時的に貯蔵・放出し、機器の誤作動につながるノイズを除去する役割を持つ。同社は世界シェア約4割を占めるトップ企業だ。中島規巨社長は「AIサーバーやEV向けが伸びており、MLCCの生産能力は毎年1割程度引き上げている」と話す。
ロームはスイスの半導体メーカーSTマイクロエレクトロニクスと結んでいる炭化ケイ素(SiC)製ウエハーの供給契約を延長した。
供給開始は20年で、契約を複数年延ばし、2億3000万ドル以上の取引額を見込む。自動車や産業機器向けに需要が伸びているパワー半導体の材料となるSiCを安定供給する。
SiC製を含むパワー半導体の設備投資は28年3月期までの7年間で5100億円を計画する。
半導体洗浄装置に強みを持つSCREENホールディングス(HD)は滋賀県彦根市の主力工場を増強し、24年初めに新棟を稼働した。
現在は生産能力いっぱいまで受注しており、彦根市の工場のほかに「新工場を建設するための土地を選定している」(広江敏朗社長)という。
堀場製作所は半導体製造装置の内部で様々なガスの流量を制御する「マスフローコントローラー」で、世界シェアの約6割を占める。
需要拡大に対応し、京都府福知山市で170億円を投じて新工場を建設中だ。同社の設備投資としては過去最大級で、26年の完成を予定している。同製品の国内生産能力を3倍に高める計画だ。
傷や汚れから半導体を守る封止装置に強みを持つTOWAは国内外で新工場や開発拠点の整備を予定している。
25年3月期の連結売上高は前期比19%増の600億円を見込む。岡田博和社長は「(長期目標の)売上高1000億円のために本格的に投資をする」と話す。
EV対応でも各社はしのぎを削る。ニチコンは24年1月、京都府亀岡市の工場で新生産棟を稼働した。
EV向けの急速充電器やEVの電力を住宅に供給できる「ビークル・ツー・ホーム(V2H)」システムを手掛ける。需要に応じて生産能力を増やし、将来は急速充電器は新棟稼働前の4倍、V2Hシステムは8倍まで引き上げる。
GSユアサはホンダと共同出資会社を23年に設立し、EV向け電池の研究開発を進めている。
27年にも量産を開始する計画だ。滋賀県に建設する新工場への設備投資などには経済産業省の補助金も活用し、両社で4000億円超を投じる見通し。
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日経記事2027.07.29より引用