2035年の配備をめざす次期戦闘機(7月、英ファンボロー)
日本、英国、イタリアは次期戦闘機の共同開発にサウジアラビアを加える調整に入った。サウジの資金力に期待する。
サウジは条約に基づく参加国とは異なる「パートナー」として参画し、自国の防衛産業の育成につなげる。
日英の関係者が明らかにした。次期戦闘機の開発計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」は2022年12月に発足した。
日英伊の官民が一体で開発し、35年までの配備をめざす。米国のF35など最新鋭の戦闘機を上回る能力を持つ第6世代機となる。
日英伊は19日にブラジルで開いた首脳会談で開発計画へのサウジの参画について協議した。
その後の英国での高官協議でも参画の方針を確認した。年内にもサウジを含めた4カ国が合意する方向で調整を進めている。
日英伊は締結した条約に基づき、共同開発のための国際機関「GIGO(ジャイゴ)」を近く英国に設置する。条約やGIGOの枠組みは変えずにサウジを迎える。
サウジは日英伊のような戦闘機の製造能力を持っておらず、機密情報の保全にも懸念があるとされる。まず日英伊の協力のもとで情報保全や製造能力などを向上させ、そのうえで具体的な役割を検討する。
サウジが調達する機体の組み立てなどを自国で担う案がある。次期戦闘機の購入代金のほか、開発費の一部を拠出する可能性もある。
サウジは現在、英伊などが共同開発した「ユーロファイター・タイフーン」戦闘機を運用している。英伊は次期戦闘機でもサウジを輸出先として期待する。
一方、自国の防衛産業を育成したいサウジは単なる買い手ではなくパートナーとしての参画を望んでいる。
防衛装備品の輸出でつながりが深い英国はサウジの参画を後押ししてきた。保守党のスナク前政権がサウジと協議し、7月に発足した労働党のスターマー政権も方針を引き継いだ。
サウジと目立った防衛協力の実績のない日本は参画に慎重だった。参加国が増えれば開発の協議が長引き、配備が遅れかねないことを懸念した。
サウジと関係の近い中国やロシアに軍事機密が漏れる心配もあった。
日本は日英伊の基本的な枠組みを維持し、サウジが情報保全を徹底したうえでパートナーとして参画する形式であれば受け入れられると判断した。
(ロンドン=江渕智弘、湯前宗太郎、三木理恵子)