晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

海堂尊 『極北クレーマー』

2012-08-05 | 日本人作家 か
海堂尊の「バチスタ」シリーズは宝島社からで、それのスピンオフ的な作品は
他の出版社から、ということになっているようで、この『極北クレーマー』は、
「螺鈿迷宮」からの流れといっていいんでしょうか、または「ジーン・ワルツ」
に繋がってゆく、さらにいうとバチスタシリーズとも関連はあって、最終的に
「全部読め」ということですね。

北海道にある架空の街、極北市は、人口10万で、第3セクターで遊園地やホテル、
スキー場を作っていずれも失敗、巨額の財政赤字を抱えている倒産寸前の自治体。

そこにある極北市民病院も市の失策のあおりを受けて、いつ閉鎖に追い込まれても
おかしくない状態で、そんな病院に、極北大から医師が派遣されてきます。

今中は、いわば貧乏くじを引かされたようなもので、誰もが嫌がる極北市民病院
にやって来ます。
聞いていた”悪い噂”は、病院の事務長に案内されている間に実感します。

勤務態度の酷い看護師連中、入院患者は褥瘡(いわゆる床ずれ)だらけ、自他共に
認めるダメ医者の研修医、事務方と院長は仲が悪く、はやくも今中は後悔します。

しかし、そんな中にあって、産科医の三枝医師は市民からの尊敬も厚く、この病院
の良心といっていいような存在ですが、今中の歓迎会の席で、今中が来る前にある
医療事故を起こしたと聞きます。

その”事故”で赤ちゃんと奥さんを失った極北市の消防士、広崎のもとに、医療
ジャーナリストを名乗る女性が近づいてきます・・・

一方、市民病院では、院長の要請で皮膚科の医師がやって来ます。その医師とは、
「バチスタ」シリーズに出てくる白鳥の部下、姫宮。
はじめは、厚生労働省の役人だということを隠して、この市民病院に来たのですが、
それはさておき、姫宮が来てからというものの、医師を小馬鹿にしていた看護師連中
が言うことを聞き出し、患者たちの褥瘡問題も改善され、少しずつですが病院の
雰囲気が良くなってきます。

ところで今中ですが、外科部長の肩書きの他に「病院環境改善検討委員会」委員長と、
さらに「リスクマネジメント委員会」の委員長も就任しろ、と院長から辞令が。
このリスクマネジメント委員会で、院内医療事故調査委員会が近々開かれることに。

そもそも姫宮は、いや正確には白鳥は、なぜこんな小さな病院を調査するのか。その
裏には「司法対医療」という大きな問題が・・・

そんな中、赤字経営の病院の立て直しを強く望む市長の要望で、「日本医療業務機能
評価機構」なる団体の査察を受けることになります。
そこに、妊婦死亡事案に対する損害賠償の請求が・・・

ジャーナリスト、西園寺さやかという女性は、極北市の監察医のもとへ。このふたりの
関係とは。

いちおうメインの話としては、財政破綻に陥った自治体運営の病院の問題、ならびに
臨床研修制度の問題、出産時の医療事故訴訟、などなどですが、そこにちらちらと出
てくる謎めいた人物、謎めいた話の流れに関しては「詳しくは他の本に書かれているので
そちらで」といった感じで、気になります。

コメント (2)
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