晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

服部真澄 『バカラ』

2012-08-12 | 日本人作家 は
今までパチンコを一度もしたことがなく、競馬も付き合いで行って数百円
の馬券を買ったのが数回ほど、つまり賭け事にはまったく興味がないの
ですが、ということで、この本のタイトルにもなっている『バカラ』という
ゲーム?ですか、もちろん名前くらいは知ってます、いろいろ有名な方が
バカラで大負けしたとか何とかで。でもルールは知りませんでした。

しかしこの小説、たんに賭け事にハマっていく人間の話だけではなく、
日本の経済、いや日本の国を揺るがす大事まで展開してゆくので、まあ
ギャンブルをよく知らなくても楽しめます。

「ゲートライン」という会社の社長、日継は、とある画廊へと向かいます。
ゲートラインは日継が小さな会社を作ってから急成長し、買収、売却を
繰り返して短期間で大企業となり、つい先日も銀行を買収したばかり。

そこに画廊主の小牧が近づいてきます。小牧は大資産家で、政財界に顔
が利くという大物。
ここ最近、いろんなことに虚しさを感じ始めた日継。それを見抜く小牧。

日継と小牧は何のために会ったのか、そして、小牧が日継にけしかけた
こととは・・・

話は変わって、中堅の出版社に勤める志貴は、バイヤーの仕事で海外から
帰ってきた妻と会います。そこで妻から、そろそろ持ち家を買いたいという
話が。ふたりとも高給取りで生活費はお互いが自分のぶんだけを出している
この夫婦、志貴の給料は年収一千万ほどなのですが、妻の提案を避ける様子。

というのも、志貴は、前に取材の一環で仲良くなった情報源の男に誘われて
闇カジノに行って、それ以来バカラにハマってしまい、給料の大半、ボーナス、
はては会社から借りられる取材費までも借りて、ピンチの状態。

そんな中、カジノで知り合ったヨウジという、噂で社長をやっているという
くらいの情報しか知らない男がいるのですが、ヨウジも同じくバカラで負け
越していて、週刊誌の記者をしている志貴に”ネタ”を売ってきます。

その”ネタ”というのが、アフリカの小国、ロビアの大使館で、闇カジノが
行われている、というのです。
張り込みをしてみると、そこに現れたのは、人気漫画家の黒木魅春・・・

これを詳しく掘り下げて記事にしようと編集長に話しますが、黒木はこの
出版社で漫画を書いていて、コミックやキャラクターの権利などなどで
莫大な売上を貢献してくださってる「黒木先生」の暗部ネタを記事になど
できない、と及び腰。

またまた話は変わり、志貴の週刊誌のフリーライター、明野は警視庁公安部
の男と密会。男から、おたくの週刊誌でカジノに関する肯定的な記事を書いて
ほしい、と頼まれます。
そこで先輩ジャーナリストの風間から話を聞きついでに、風間があるパーティー
に出席していたことを知ります。その会には、パチンコ業界の大物フィクサーが
出席しています。そして出席している政治家の顔ぶれを見ると、カジノ合法化に
むけての話がされたようで・・・
そして、その会に、なんとゲートライン社長の日継の名前が・・・

いよいよ首が回らなくなる志貴、大使館の闇カジノの取材で一発でかいスクープ
で起死回生をはかりたいところですが、さすがに数千万の借金はどうにもならず、
いよいよ自己破産か・・・と思っていたところにヨウジから助け船が。
ヨウジに連れて行かれた倉庫にある金庫の中には、大量の札束が・・・

志貴がギャンブルにハマっていってどうにもならなくなるまでの話、出版社での
さまざまな人間模様、カジノ合法化に動く勢力、そして日継の謎の行動、これら
が複雑に絡み合って、事態は思わぬ方向に。

文中で、志貴がバカラで百万円勝って、じつはこれが落とし穴、というところに
「なるほど」と。というのも、負け続けても「前に百万勝ったから」という自己暗示と
いうか自信過剰になって、まあそういう時は面白いもので、勝てないんですね。

最終的に儲かるのは胴元だけ、というのも「なるほど」と。



コメント
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