晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

黒井千次 『春の道標』

2011-12-06 | 日本人作家 か
本屋さんへ行って、これといって目当ての欲しい作品が無く、
かといって何か読みたいからなあ、と選ぶ「基準」は、まずは
作家の名前。まあ一度でも耳にしたことがあれば、つまりそ
れだけ話題になっている(インタビューだったり原作の映像化
だったり)ということで。他にも、帯で○○氏絶賛!という
推薦。

この『春の道標』という作品名も、作家の名前も、申し訳ない
ですが存じ上げなくて、うしろの解説を見てみたら、宮本輝さん
が書いてるではありませんか。
まあ、解説を頼まれてこき下ろすなんてことは普通しないでしょ
うし、多かれ少なかれリップサービス的な部分もあるでしょうが、
これも何かの縁で買ってみました。

舞台は東京の西部、武蔵野の辺り。時代は、戦争が終わって数年
後、主人公の倉沢の通う学校が旧制中学から高校へと名前が変わ
り、倉沢が高校2年になったときに1学年下から男女共学になった
という、そんな頃。

倉沢には幼馴染みで近所にすむ年上の慶子と、なんとも微妙な、恋
心なのか友情なのか曖昧な感情でいうると、ある日突然、慶子から
キスされたりして、17歳くらいの男子にとっては大事件。
そんな慶子ですが、引っ越してしまいます。そこで文通をはじめる
のですが、恋人として?幼馴染みの友達として?倉沢はポジション
に悩みます。

そんな倉沢くんですが、朝の通学バスの車内で見かける女子に惹かれて
しまい、なんやかやでその女性は棗(なつめ)という名前の中学3年生。
倉沢は、彼女の乗るバス停の付近を探して(棗の苗字は『ソメノ』)と
いうヒントだけで)、「染野」という表札のかかってる家を見つけるの
ですが、その家には確かに棗はいて、しかし横には青年男性が・・・

高校のクラスメイトから、政治運動の真似事みたいな新聞を作ろうと
誘われたり、ときたま進駐軍のジープが通ったりと、さりげなく描いて
いるのですが、昭和20年代という背景、十代の淡い恋の話に陰を
落とすというか障壁の役割としてはあまり効果的には使わないところ
が、真っ向勝負してて良いですね。


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