夜の散歩途中、
いつも同じ場所で出会う『サビィ』という猫がいる。
その道を通る時は必ずこちらから声を掛けるか
向こうから待ち伏せされているのが常だ。
特に何をするでもないのだが
挨拶代わりに頭を撫でて、持っている撮影料（カリカリ）を
少し分けてあげるようにしている。
高齢のご夫婦が住まう庭の軒先に
小さな10cm四方の穴の開いた段ボールを
自分の家にしている猫さんだ。
そのご夫婦は飼っているつもりはないらしいが
ちゃんとご飯を貰って生活しているので
多分、猫からしてみれば飼われていると思って
その家から離れず暮らしているのだろう。
たまたま２日程、『サビィ』の姿を見掛けなかった。
塀の方から鳴き声がしたので『サビィ』かと思ったら
全く違う猫がそそくさと庭の奥へ逃げる後ろ姿が見えた。
しかし『サビィ』は３日目になると
ちゃっかりその御宅の前で待ち構えていて
私が見えるとわざわざ出迎えに小走りでやって来た。
そしてまるで「連日の不在」の言い訳でもするように
私の後を付いて回り、小さく「にゃっにゃっ」と
話しながら何度も私の顔を見詰めるのである。
どうやらあの見知らぬ猫との間に何かあったらしい。
居心地の良い家をあの見知らぬ猫に勝手に出入りされ
腹が立っているが相手が強そうなので
自分ではどうしようもないとでも言っているように見えて
何だか可愛そうだった。
時々ではあるが『サビィ』が不在の時に
見知らぬ猫（多分以前とは違う猫）が
あの御宅の庭先から出て来て何食わぬ顔で
通り過ぎた日の翌日には、
『サビィ』の必死に報告する姿が見られるようになった。
人の社会にも色んな種類の困った人が存在するが
猫の社会にも度々、困った猫が現れては消えるらしい。
猫の社会も案外大変そうだと、ふと思った。
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