好きで好きでたまらないことがあれば、生きていることが
楽しくてやめられません。
そんな、好きなことを見つける力、それが本当の生命力、
なのかもしれませんね。
あなたは何が好きですか?
私は…ワクワクするものなら何でも。
たとえば、イギリスのファンタジー文学。これは私にとって
は宝の山のようなものです。
その中から今日は、ロージー・セレクションと題して、メア
リー・ポピンズのお気に入りの一節をご紹介しましょう。
メアリー・ポピンズはロンドンの桜通り(Cherry Tree Lane)
に暮らすバンクス家の乳母で、彼女の周りでつぎつぎと起
こる不思議な出来事の数々を描いた物語は、美しくて楽し
くて、好奇心が刺激される魅力がいっぱいです。
そのメアリー・ポピンズがお出かけの時に必ず持っている
のが、オウムの柄のついたこうもり傘。それは使わない時
はいつも子ども部屋の暖炉の隅のお決まりの場所に立て
かけてあるのですが、ある夜、バンクス家の子どもたち、ジ
ェーンとマイケルの二人は、こんな光景を目にするのです。
それは…
From the corner by the fireplace came a little glow of
light. And they saw that the folds of the parrot umbrella
were full of coloured stars the kind of stars you expect
to see when a rocket breaks in the sky.
Their eyes grew wide with astonishment as the parrot’s
head bent down. Then, one by one, its beak plucked the
stars from the silken folds and threw them on the floor.
They gleamed for a moment, gold and silver, then faded
and went out. Then the parrot head straightened upon
the handle, and Mary Poppins’ black umbrella stood stiff
and still in its corner.
暖炉の隅から、小さな光がもれています。そして、オウムの
傘のひだに、色とりどりの星がいっぱいちりばめられている
のを二人は見たのです。それはちょうど、ロケットが空で弾
けるときに見える星のようでした。
オウムの柄がその頭を下に曲げたとき、彼らは驚きで目
を見張りました。すると、一つ一つ、そのくちばしが星をひだ
からつまんでは、床に放っていくではありませんか。それら
は一瞬、金と銀にきらめくと、やがて光を失って消えていき
ました。そして、オウムの頭が柄の上にまっすぐ元通りにな
ると、メアリー・ポピンズの黒い傘は、そのお決まりの場所
にちゃんとおさまったのでした。
P. L. TRAVERS“Mary Poppins Opens the Door Vol I”
(Kenkyusha, 1976, pp.23-24)
(日本語訳はロージーによる。)
バンクス家の子どもたちの毎日は、こんなふうに、メアリー・
ポピンズの不思議な力のおかげで、新鮮な驚きと興奮に満
ちているのです。
こんな乳母が家にいたら、どんなにいいか! そう思うのは
私だけでしょうか。
ただし、原作者トラヴァースが描くメアリー・ポピンズのキャ
ラクターというのは、ディズニー映画でジュリー・アンドリュ
ースが演じたそれとは、全く別物なんですよね。
映画のメアリー・ポピンズのように万人受けする人当たりの
いいキャラクターとは違って、原作のメアリー・ポピンズはド
ライで皮肉屋で、しつけに厳しく、ナルシスト。(決して意地
悪ではありませんが。)
でも、子どもたちが困ったり、しょげていたり、とにかく、ここ
ぞ、という絶妙の場面で不思議な力を発揮して、助けてくれ
るんです。
そのタイミングが完璧で、実にスマート。まるで、天使のサ
ポートのようなのです。
そういう意味では、メアリー・ポピンズはファンタジー界の
天使的存在の一人、といってもいいかもしれません。
* * * * * * * * * * *
写真は、<メアリー・ポピンズ>シリーズの1作、“Mary
Poppins in Cherry Tree Lane”の原書です。(邦訳本は
『さくら通りのメアリー・ポピンズ』で刊行。)
夏至の日の出来事をファンタジックに描いたもので、ちょ
うど今の季節にぴったりなのですが、邦訳本はすでに品
切れ状態の模様なのが実に残念です。
楽しくてやめられません。
そんな、好きなことを見つける力、それが本当の生命力、
なのかもしれませんね。
あなたは何が好きですか?
私は…ワクワクするものなら何でも。
たとえば、イギリスのファンタジー文学。これは私にとって
は宝の山のようなものです。
その中から今日は、ロージー・セレクションと題して、メア
リー・ポピンズのお気に入りの一節をご紹介しましょう。
メアリー・ポピンズはロンドンの桜通り(Cherry Tree Lane)
に暮らすバンクス家の乳母で、彼女の周りでつぎつぎと起
こる不思議な出来事の数々を描いた物語は、美しくて楽し
くて、好奇心が刺激される魅力がいっぱいです。
そのメアリー・ポピンズがお出かけの時に必ず持っている
のが、オウムの柄のついたこうもり傘。それは使わない時
はいつも子ども部屋の暖炉の隅のお決まりの場所に立て
かけてあるのですが、ある夜、バンクス家の子どもたち、ジ
ェーンとマイケルの二人は、こんな光景を目にするのです。
それは…
From the corner by the fireplace came a little glow of
light. And they saw that the folds of the parrot umbrella
were full of coloured stars the kind of stars you expect
to see when a rocket breaks in the sky.
Their eyes grew wide with astonishment as the parrot’s
head bent down. Then, one by one, its beak plucked the
stars from the silken folds and threw them on the floor.
They gleamed for a moment, gold and silver, then faded
and went out. Then the parrot head straightened upon
the handle, and Mary Poppins’ black umbrella stood stiff
and still in its corner.
暖炉の隅から、小さな光がもれています。そして、オウムの
傘のひだに、色とりどりの星がいっぱいちりばめられている
のを二人は見たのです。それはちょうど、ロケットが空で弾
けるときに見える星のようでした。
オウムの柄がその頭を下に曲げたとき、彼らは驚きで目
を見張りました。すると、一つ一つ、そのくちばしが星をひだ
からつまんでは、床に放っていくではありませんか。それら
は一瞬、金と銀にきらめくと、やがて光を失って消えていき
ました。そして、オウムの頭が柄の上にまっすぐ元通りにな
ると、メアリー・ポピンズの黒い傘は、そのお決まりの場所
にちゃんとおさまったのでした。
P. L. TRAVERS“Mary Poppins Opens the Door Vol I”
(Kenkyusha, 1976, pp.23-24)
(日本語訳はロージーによる。)
バンクス家の子どもたちの毎日は、こんなふうに、メアリー・
ポピンズの不思議な力のおかげで、新鮮な驚きと興奮に満
ちているのです。
こんな乳母が家にいたら、どんなにいいか! そう思うのは
私だけでしょうか。
ただし、原作者トラヴァースが描くメアリー・ポピンズのキャ
ラクターというのは、ディズニー映画でジュリー・アンドリュ
ースが演じたそれとは、全く別物なんですよね。
映画のメアリー・ポピンズのように万人受けする人当たりの
いいキャラクターとは違って、原作のメアリー・ポピンズはド
ライで皮肉屋で、しつけに厳しく、ナルシスト。(決して意地
悪ではありませんが。)
でも、子どもたちが困ったり、しょげていたり、とにかく、ここ
ぞ、という絶妙の場面で不思議な力を発揮して、助けてくれ
るんです。
そのタイミングが完璧で、実にスマート。まるで、天使のサ
ポートのようなのです。
そういう意味では、メアリー・ポピンズはファンタジー界の
天使的存在の一人、といってもいいかもしれません。
* * * * * * * * * * *
写真は、<メアリー・ポピンズ>シリーズの1作、“Mary
Poppins in Cherry Tree Lane”の原書です。(邦訳本は
『さくら通りのメアリー・ポピンズ』で刊行。)
夏至の日の出来事をファンタジックに描いたもので、ちょ
うど今の季節にぴったりなのですが、邦訳本はすでに品
切れ状態の模様なのが実に残念です。