店主敬白(悪魔の囁き)

栄進大飯店の店主さがみやがおくる日々の悪魔の囁き。競馬予想や文学・音楽・仕事のグチやちくりまでいろいろ。

36度7分

2005-06-16 01:08:39 | Weblog
 やっと熱がさがる。
 何度も事務所のSさんが交渉してくれたおかげで、遅配になっていた給料の一部が入ってきたので、それをおろしに行きながら図書館に行く。
 少し時間があったので、いつものように図書館の近くの公園の日陰で、ちょっとおにぎりでも食べて本を読もうとしたら、本日もいい場所はみんなふさがっていた。
 この場合いい場所とは、日陰のベンチ(もう日差しが強いので)、休憩所、池のほとりの日陰の石などであるが、ことごとく人がいるので、あきらめて帰る。
 世の中は、出遅れるとこんな場所取り競走でさえ厳しいのだ。
 本日は、「色川武大・阿佐田哲也全集の1と3」「ゆめはるか吉屋信子」「グロテスク」を借りてきた。
 それ以外は何もナシ。
 
 今年は占いによると誕生日の近辺を中心に「争いの年」になるらしい。
 もうすぐ誕生日なので、そんななかで平和なのはいいことである。
 
 

 

悲しい家族探し

2005-06-16 00:53:43 | 小説・読んだ本
 「男女7人ネット心中」という本を読んだ。
 今もなお次々と起こるネット心中を扱った本で、この中の主人公ともいうべき「マリア」という女性がたどる道を追いかけていくと、愕然とする。
 かつては有名ミュージシャンの妻で、自身も才能あるミュージシャンであったにもかかわらず、彼女はどんどん追い詰められていく。
 悲惨な家庭環境を脱出したかと思うと、結婚して作った家庭が破綻し、自分の病気のせいにされて子供をとりあげられる。
 そのうちに知り合った少年、女性とそれぞれ擬似家庭のような同居生活に入るが、それも相手の思わぬ自殺やトラブルで破綻し、また彼女はひとりで取り残される。
 いくら音楽の中で悲痛な「魂の叫び」をはじきだしてみたところで、「そうだそうだ」と共感してくれるファンはできても、彼女自身にさしのべられる「家族」の手はないし見つからなかった・・・。
 誰かを癒し、慰めることはできても自分のことはどうしようもないのだ。
 「芸術家の孤独」なんていうありきたりのものではない。
 生きれば生きるほど絶望が深まっていく。
 あまりに痛ましい人生だ。

 彼女は最後まで「家族」が欲しかったのだ。
 血縁で結ばれてなくてもいい、ただ自分を愛してくれる人が欲しかったのに。
 そして「心中」すら彼女にとっては「家族探し」であったことが、この本を読むとわかってくる。
 仕事がうまくいかないとか破産とか、何かを壊したから死ぬのではなく、彼女は仲間と死ぬことによって「自分が作った家庭の絵」を完成させようとしたのかもしれない。
 何かを探し続け、すくい取ったかと思うとすぐこぼれていく砂のように、さまざまな人が彼女と関わり、彼女のもとを去っていく。
 そしてその砂に似たものをすくい取るたびに確実に彼女は傷ついていったのだろうと思う。
 それを思うと悲しい。合掌。