北へふたり旅(52)
「予行演習へ行きましょう」
7月の半ば。茄子の収穫が今日で終わった。
その日の午後。妻が電車に乗りましょうと言い出した。
「電車に乗る予行演習?」
「北海道行きの予行演習です。新幹線は宇都宮からでしょ。
JRに乗るなんて久しぶりですもの。
明日から暇になりました。いいでしょ、お出かけても」
たしかに明日からながい夏休みがはじまる。断る理由はとくにない。
「焼きそばが食べたいですねぇ。ひさしぶりに」
妻の出身は宇都宮。
宇都宮グルメといえば餃子が有名だが、焼きそば屋もおおい。
宇都宮焼きそばはキャベツ、肉、イカ、ハムがはいったもちもち麺の上に、
ちょこんと目玉焼きがのっている。
「そういうことなら本番の時間にあわせて宇都宮まで行ってみるか。
9:39発のやまびこ43号だから、7時台の両毛線に乗るようだな」
両毛線は群馬の高崎と、栃木の小山をつなぐローカル線。
上毛野国(かみつけのくに)の群馬と、下毛野国(しもつけのくに)の栃木を
むすんでいることからこの名前がついた。
わたしの住まいからの最寄り駅は、JR両毛線の岩宿駅。
駅名は日本に旧石器時代があったことを証明した、岩宿遺跡に由来している。
「乗り換えがおおいですからね、今回は。
ホップ・ステップ・ジャンプでようやく新幹線ですからね。
うふっ」
「東京駅まで2時間。途中の大宮駅でも1時間30分はかかる。
どちらも南下していくから、北海道とは逆方向になる。
おなじ時間をかけるなら横に移動したあと、北上したほうが距離をかせげる」
「両毛線で小山へ出てから、東北本線に乗り換えて宇都宮。
宇都宮から東北新幹線のやまびこに乗って仙台。
仙台から北海道新幹線のはやぶさに乗り換えて、新函館北斗。
列車を4本乗り換えて、やっと北海道へ到着です。
「予行演習へ行きましょう」
7月の半ば。茄子の収穫が今日で終わった。
その日の午後。妻が電車に乗りましょうと言い出した。
「電車に乗る予行演習?」
「北海道行きの予行演習です。新幹線は宇都宮からでしょ。
JRに乗るなんて久しぶりですもの。
明日から暇になりました。いいでしょ、お出かけても」
たしかに明日からながい夏休みがはじまる。断る理由はとくにない。
「焼きそばが食べたいですねぇ。ひさしぶりに」
妻の出身は宇都宮。
宇都宮グルメといえば餃子が有名だが、焼きそば屋もおおい。
宇都宮焼きそばはキャベツ、肉、イカ、ハムがはいったもちもち麺の上に、
ちょこんと目玉焼きがのっている。
「そういうことなら本番の時間にあわせて宇都宮まで行ってみるか。
9:39発のやまびこ43号だから、7時台の両毛線に乗るようだな」
両毛線は群馬の高崎と、栃木の小山をつなぐローカル線。
上毛野国(かみつけのくに)の群馬と、下毛野国(しもつけのくに)の栃木を
むすんでいることからこの名前がついた。
わたしの住まいからの最寄り駅は、JR両毛線の岩宿駅。
駅名は日本に旧石器時代があったことを証明した、岩宿遺跡に由来している。
「乗り換えがおおいですからね、今回は。
ホップ・ステップ・ジャンプでようやく新幹線ですからね。
うふっ」
「東京駅まで2時間。途中の大宮駅でも1時間30分はかかる。
どちらも南下していくから、北海道とは逆方向になる。
おなじ時間をかけるなら横に移動したあと、北上したほうが距離をかせげる」
「両毛線で小山へ出てから、東北本線に乗り換えて宇都宮。
宇都宮から東北新幹線のやまびこに乗って仙台。
仙台から北海道新幹線のはやぶさに乗り換えて、新函館北斗。
列車を4本乗り換えて、やっと北海道へ到着です。
あ、5本目がありました!。
新函館北斗から函館まで、なんとかライナーに乗ると言っていましたねぇ。
新函館北斗から函館まで、なんとかライナーに乗ると言っていましたねぇ。
JTBのお姉さんが。
ちゃんと目的地へ着けるかしら。だいじょうぶかしら、わたしたち」
「しかたないさ。
関東平野の最北端はどこへいくにも、不便な場所だ」
「はじめての列車旅にしては、たいへんハードな乗換えです。
無事に行けるのかしら、本当に」
「だからこその予行演習だろ。
あ・・・あったぞ。
岩宿駅が7:36で、小山到着が8:42。
小山から宇都宮まで、30分みれば着くだろう」
「忙しいのは嫌。
ぎりぎりの接続で、ホームを走るなんて最悪です。
もうすこしはやい列車は無いの?」
「6:52というのがある。これだと小山の到着は8:12だ。
いくらなんでも早すぎるだろう。
宇都宮の駅で一時間ちかく、まつことになる」
「たかが一時間でしょ。
ホームを走るよりはるかにマシです。
それに時間があれば駅で優雅に、コーヒーを呑めます」
「コーヒーを飲めるような場所が、駅の中にあるの?」
「それを確認するために行くんでしょ。明日」
「あ・・・明日!」
「あら。なに驚いているの、当然でしょ。
膳は急げです。
ちゃんと目的地へ着けるかしら。だいじょうぶかしら、わたしたち」
「しかたないさ。
関東平野の最北端はどこへいくにも、不便な場所だ」
「はじめての列車旅にしては、たいへんハードな乗換えです。
無事に行けるのかしら、本当に」
「だからこその予行演習だろ。
あ・・・あったぞ。
岩宿駅が7:36で、小山到着が8:42。
小山から宇都宮まで、30分みれば着くだろう」
「忙しいのは嫌。
ぎりぎりの接続で、ホームを走るなんて最悪です。
もうすこしはやい列車は無いの?」
「6:52というのがある。これだと小山の到着は8:12だ。
いくらなんでも早すぎるだろう。
宇都宮の駅で一時間ちかく、まつことになる」
「たかが一時間でしょ。
ホームを走るよりはるかにマシです。
それに時間があれば駅で優雅に、コーヒーを呑めます」
「コーヒーを飲めるような場所が、駅の中にあるの?」
「それを確認するために行くんでしょ。明日」
「あ・・・明日!」
「あら。なに驚いているの、当然でしょ。
膳は急げです。
明日からながい夏休みがはじまるんですもの。うふっ」
(53)へつづく
(53)へつづく