居酒屋日記・オムニバス (78)
第六話 子育て呑龍(どんりゅう)⑨

八瀬川沿いの300本の桜に春が来た。
満開をむかえた桜が、水面を覗き込むように900mのトンネルを作る。
4月にはいった最初の土曜日。和太鼓の演奏が、近所の公園から響いてきた。
満開のサクラをいっそう盛り上げる、恒例の和太鼓の競演だ。
この日だけ真理子は、弁当店を休む。
2人の娘たちと、満開になった八瀬川の桜を満喫するためだ。
赤いレンガを敷き詰めたさくらプロムナードに、多くの人が集まって来る。
ソメイヨシノの花言葉は、「純潔」と「優れた美人」。
満開時の見事さと、散り際のいさぎよさ、そこには涙が出るほどの美しさがある。
春の風にあおられて、早くもサクラの花びらが水面へ舞い落ちていく。
埋めつくされた花びらで、水面が、まるで万華鏡のように華やいでいく。
「よお。そこを歩いて行く、美人の三姉妹!」
背後から男の声が、真理子を呼び止める。
(美人の3姉妹?、それって、もしかして私たちの事かしら・・・)
真理子が、怪訝そうな目でうしろを振り返る。
呼び止めたのは、散歩しているような雰囲気の幸作だ。
右手に、大きな風呂敷包みを下げている。
「弁当を作って来た。どこかそのあたりで、花見と洒落こもう」
「うふふ。なんだ、誰かと思ったら、幸作さんか。
でも、いくらなんでも美人の三姉妹というのは、無理が有り過ぎです」
「そうでもないようだ。
八瀬川の満開のサクラに、まったく負けていないぜ3人とも。
弁当を用意したんだ。
だが、あいにくのことにウチの娘は、ソフトの大会で朝から遠征だ。
このまま、無駄にするのはもったいない。
そういう事情だ。
いい天気だ。見た通り、絶好といえる花見日和だ。
俺といっしょに、どこかで、この弁当を食わないか」
「そこまで言われたら、断る理由が見当たりませんねぇ・・・
よろこんで、御馳走になります」
「そうこなくっちゃ!。やっぱり、良い女は決断が速い。
それでこそ、真理子だ。
ちょうどいい。
さくらプロムナードの真ん中に、俺の友人が経営している喫茶店がある。
2階のテラスから満開のサクラが見下ろせる。
そこでこいつを食いながら、世間話でもしょうじゃないか」
「あら。2階のテラスまで確保してあるの・・・
ふぅ~ん、なんだかずいぶん、手回しがいいわねぇ」
何か下心でも有るのかしらねぇ、と真理子が目を細めて笑う。
「朝からのいい天気だ。
こんな日は、誰でもポカポカ陽気に誘われて、外へ出かけたくなる。
こんないい日に、家に居るのはもったいねぇ。
おや・・・もうひとり、陽気に誘われて花見にやって来た奴がいるみたいだな・・・」
向こう岸で、見覚えのある男が、花びらが舞い落ちる川面を覗き込んでいる。
その姿を幸作が、いち早く見つけ出した。
満開になったばかりのサクラが、春の風が通り過ぎていくたびに、
惜しげもなく、ハラハラと、川面に向かって舞い落ちていく。
幸作が見つけ出したのは、舞い落ちる様子を見つめている安原の姿だ。
「よう。何やってんだ、そんなところで!」
幸作が対岸に向かって声をかける。
川面を覗き込んでいた運転手の安原が、あわてて顔をあげる。
「あっ・・・幸作さん。先日はどうも、ごちそうさまでした!」
「ちょうどよかった。
たったいま、みんなで、弁当を食おうという話がまとまったところだ。
どうせなら、大勢の方が盛り上がる。
暇ならお前もこっちへ来い。まぜてやってもいいぜ、俺たちの宴会に」
「えっ、いいんですか・・・ホントウに?」
「かまうもんか。年に一度の花見だ。
ただし。仲間に入れるには、それなりの試験が有る。
いまから俺が出す問題をクリアできたら、たぶんここにいる真理子のやつも、
仲間入りを、許可してくれるだろう」
(79)へつづく
新田さらだ館は、こちら
第六話 子育て呑龍(どんりゅう)⑨

八瀬川沿いの300本の桜に春が来た。
満開をむかえた桜が、水面を覗き込むように900mのトンネルを作る。
4月にはいった最初の土曜日。和太鼓の演奏が、近所の公園から響いてきた。
満開のサクラをいっそう盛り上げる、恒例の和太鼓の競演だ。
この日だけ真理子は、弁当店を休む。
2人の娘たちと、満開になった八瀬川の桜を満喫するためだ。
赤いレンガを敷き詰めたさくらプロムナードに、多くの人が集まって来る。
ソメイヨシノの花言葉は、「純潔」と「優れた美人」。
満開時の見事さと、散り際のいさぎよさ、そこには涙が出るほどの美しさがある。
春の風にあおられて、早くもサクラの花びらが水面へ舞い落ちていく。
埋めつくされた花びらで、水面が、まるで万華鏡のように華やいでいく。
「よお。そこを歩いて行く、美人の三姉妹!」
背後から男の声が、真理子を呼び止める。
(美人の3姉妹?、それって、もしかして私たちの事かしら・・・)
真理子が、怪訝そうな目でうしろを振り返る。
呼び止めたのは、散歩しているような雰囲気の幸作だ。
右手に、大きな風呂敷包みを下げている。
「弁当を作って来た。どこかそのあたりで、花見と洒落こもう」
「うふふ。なんだ、誰かと思ったら、幸作さんか。
でも、いくらなんでも美人の三姉妹というのは、無理が有り過ぎです」
「そうでもないようだ。
八瀬川の満開のサクラに、まったく負けていないぜ3人とも。
弁当を用意したんだ。
だが、あいにくのことにウチの娘は、ソフトの大会で朝から遠征だ。
このまま、無駄にするのはもったいない。
そういう事情だ。
いい天気だ。見た通り、絶好といえる花見日和だ。
俺といっしょに、どこかで、この弁当を食わないか」
「そこまで言われたら、断る理由が見当たりませんねぇ・・・
よろこんで、御馳走になります」
「そうこなくっちゃ!。やっぱり、良い女は決断が速い。
それでこそ、真理子だ。
ちょうどいい。
さくらプロムナードの真ん中に、俺の友人が経営している喫茶店がある。
2階のテラスから満開のサクラが見下ろせる。
そこでこいつを食いながら、世間話でもしょうじゃないか」
「あら。2階のテラスまで確保してあるの・・・
ふぅ~ん、なんだかずいぶん、手回しがいいわねぇ」
何か下心でも有るのかしらねぇ、と真理子が目を細めて笑う。
「朝からのいい天気だ。
こんな日は、誰でもポカポカ陽気に誘われて、外へ出かけたくなる。
こんないい日に、家に居るのはもったいねぇ。
おや・・・もうひとり、陽気に誘われて花見にやって来た奴がいるみたいだな・・・」
向こう岸で、見覚えのある男が、花びらが舞い落ちる川面を覗き込んでいる。
その姿を幸作が、いち早く見つけ出した。
満開になったばかりのサクラが、春の風が通り過ぎていくたびに、
惜しげもなく、ハラハラと、川面に向かって舞い落ちていく。
幸作が見つけ出したのは、舞い落ちる様子を見つめている安原の姿だ。
「よう。何やってんだ、そんなところで!」
幸作が対岸に向かって声をかける。
川面を覗き込んでいた運転手の安原が、あわてて顔をあげる。
「あっ・・・幸作さん。先日はどうも、ごちそうさまでした!」
「ちょうどよかった。
たったいま、みんなで、弁当を食おうという話がまとまったところだ。
どうせなら、大勢の方が盛り上がる。
暇ならお前もこっちへ来い。まぜてやってもいいぜ、俺たちの宴会に」
「えっ、いいんですか・・・ホントウに?」
「かまうもんか。年に一度の花見だ。
ただし。仲間に入れるには、それなりの試験が有る。
いまから俺が出す問題をクリアできたら、たぶんここにいる真理子のやつも、
仲間入りを、許可してくれるだろう」
(79)へつづく
新田さらだ館は、こちら
小渕と主要首長たちそのものの感じ
いいリズムですね (●^o^●)
ナイターソフトも・・今いい時期ですよね
でも、普段そんなに走っているように
見えませんので・・気をつけて
無理しないで下さいよ
6月5日に差し支えては困りますから
ベンチワークだけで済みました。
第1戦は8名しか来なかったため、1塁主として
久々にゲームへ参加しました。
たしかに最近は身体が動きません。
反応時間も、ずいぶんと遅くなりました。
しかし。ソフトボールはゴルフと違って団体競技。
勝ったときは歓びが、人数分だけ多くなります。
10人集まりましたので、よろこびも10倍になりました!