オヤジ達の白球 (78)再建はいつになる?
慎吾のハウスの片づけは、3週間におよんだ。
日曜日をつかい3日間。
おとこたちは午前8時にあつまり、午後5時まで働いた。
おぼつかなかった足元も、作業の終る3日目にはすっかり職人風になってきた。
「再建用の資材は間に合いません。
このあたりでいちばんはやいハウスでも夏のおわりか、秋のはじめになるそうです」
「群馬県全体で倒壊したハウスは、32544棟。
とくにパイプハウスが甚大な被害を受けた。ハウス面積の74%を占めたという。
被災した農家は7600世帯。
復旧には413億円かかるという試算が出た。
で、おまえさんのところの再建は、いつごろになるんだ、慎吾」
「いつになるのか、まったく予定はわかりません。
県が提示してきた条件は、もとどおりの規模でハウスを再建することです。
縮小するのであれば補助金は出ないそうです」
「元通りの規模にハウスを再建することか。なんとも厳しい条件だな。
農家の中心世代は、60歳代の半ば。
後継者が居れば別だが現状では、ほとんどの野菜農家に後継者はいない。
これを機会にハウスの縮小を考えている農家もおおいだろう。
高齢化がすすみ過ぎているからな」
「シルバー世代がパートで働いていますが、それも間もなく先細りになるでしょう。
そのうち外国人労働者と海外研修生があふれてきます。
そうなることを見越して、ハウスを再建する農家があるのも事実です」
「海外からの働き手か。
そこまで人手が不足しているのか、日本の農業は・・・」
「きつい仕事は敬遠されますからね。
それに、休みもない。
最盛期になれば朝6時から収穫をはじめます。さらに出荷のための荷ごしらえ。
出荷がおわれば、ハウスへもどりキュウリの手入れ。
3ヶ月から4ヶ月の間、まったく休みの無いそんな生活がつづきます。
週休2日に慣れた若者に、農家の仕事なんかさいしょから眼中にありません。
戦力になるのは、海外からの働き手です」
「おまえも受け入れるのか?。海外からの働き手を?」
「来年。ベトナムから研修生が2人やってきます。
しかし。ハウスの再建は間に合わないでしょう」
「どうするんだ。
研修生が来るというのに、ハウスがないのでは仕事にならないだろう」
「ハウスが間にあわないので、露地で野菜をつくります。
大量栽培が可能なキャベツか、ナスか、ホウレンソウでもつくります。
ぜいたくは言えません。
仕事をしなければ生活が成り立ちませんから」
「露地物の野菜か・・・背に腹はかえられないからな」
「そうでもないですよ。
露地の野菜造りは、農家の原点です。
狭い路地を耕し、うまく四季の天候とつきあいながら野菜を作って来た。
それが日本の農業です。
いつ頃からでしょうねぇ。
ビニールハウスをたて、工場のように、大量の野菜をつくり始めたのは?」
「そうだよな。
俺が子供の頃は、露地でたくさんの野菜がつくられていた。
太陽をたっぷりあびてまるまる肥ったトマトは、酸味があって美味かった。
夏休みに入ると、スイカの畑から、1個だけ失敬して川へ泳ぎに行ったもんだ。
そうか。束の間だけ露地の野菜造りにもどるのか、このあたりの百姓たちは」
「そういうことになるでしょうね。たぶん。今年と来年の夏は・・・」
きれいに整理されたハウスの廃材部品を見つめながら、慎吾が複雑に笑う。
しかし。ここに置かれた材料だけでは、ハウスの再建はできない。
ハウス部材のメーカーは、必死の増産をつづけている。
しかし、需要の規模がおおすぎて再建のための材料がいつ揃うのかは、
まったく誰にも分らない。
(79)へつづく
慎吾のハウスの片づけは、3週間におよんだ。
日曜日をつかい3日間。
おとこたちは午前8時にあつまり、午後5時まで働いた。
おぼつかなかった足元も、作業の終る3日目にはすっかり職人風になってきた。
「再建用の資材は間に合いません。
このあたりでいちばんはやいハウスでも夏のおわりか、秋のはじめになるそうです」
「群馬県全体で倒壊したハウスは、32544棟。
とくにパイプハウスが甚大な被害を受けた。ハウス面積の74%を占めたという。
被災した農家は7600世帯。
復旧には413億円かかるという試算が出た。
で、おまえさんのところの再建は、いつごろになるんだ、慎吾」
「いつになるのか、まったく予定はわかりません。
県が提示してきた条件は、もとどおりの規模でハウスを再建することです。
縮小するのであれば補助金は出ないそうです」
「元通りの規模にハウスを再建することか。なんとも厳しい条件だな。
農家の中心世代は、60歳代の半ば。
後継者が居れば別だが現状では、ほとんどの野菜農家に後継者はいない。
これを機会にハウスの縮小を考えている農家もおおいだろう。
高齢化がすすみ過ぎているからな」
「シルバー世代がパートで働いていますが、それも間もなく先細りになるでしょう。
そのうち外国人労働者と海外研修生があふれてきます。
そうなることを見越して、ハウスを再建する農家があるのも事実です」
「海外からの働き手か。
そこまで人手が不足しているのか、日本の農業は・・・」
「きつい仕事は敬遠されますからね。
それに、休みもない。
最盛期になれば朝6時から収穫をはじめます。さらに出荷のための荷ごしらえ。
出荷がおわれば、ハウスへもどりキュウリの手入れ。
3ヶ月から4ヶ月の間、まったく休みの無いそんな生活がつづきます。
週休2日に慣れた若者に、農家の仕事なんかさいしょから眼中にありません。
戦力になるのは、海外からの働き手です」
「おまえも受け入れるのか?。海外からの働き手を?」
「来年。ベトナムから研修生が2人やってきます。
しかし。ハウスの再建は間に合わないでしょう」
「どうするんだ。
研修生が来るというのに、ハウスがないのでは仕事にならないだろう」
「ハウスが間にあわないので、露地で野菜をつくります。
大量栽培が可能なキャベツか、ナスか、ホウレンソウでもつくります。
ぜいたくは言えません。
仕事をしなければ生活が成り立ちませんから」
「露地物の野菜か・・・背に腹はかえられないからな」
「そうでもないですよ。
露地の野菜造りは、農家の原点です。
狭い路地を耕し、うまく四季の天候とつきあいながら野菜を作って来た。
それが日本の農業です。
いつ頃からでしょうねぇ。
ビニールハウスをたて、工場のように、大量の野菜をつくり始めたのは?」
「そうだよな。
俺が子供の頃は、露地でたくさんの野菜がつくられていた。
太陽をたっぷりあびてまるまる肥ったトマトは、酸味があって美味かった。
夏休みに入ると、スイカの畑から、1個だけ失敬して川へ泳ぎに行ったもんだ。
そうか。束の間だけ露地の野菜造りにもどるのか、このあたりの百姓たちは」
「そういうことになるでしょうね。たぶん。今年と来年の夏は・・・」
きれいに整理されたハウスの廃材部品を見つめながら、慎吾が複雑に笑う。
しかし。ここに置かれた材料だけでは、ハウスの再建はできない。
ハウス部材のメーカーは、必死の増産をつづけている。
しかし、需要の規模がおおすぎて再建のための材料がいつ揃うのかは、
まったく誰にも分らない。
(79)へつづく
欲しいものです、農業体験・・何度も
経験を積んで一人前になるのに・・
時間がかかりすぎるために嫌われます
体外、露地物の栽培は年に一度の収穫
経験を積むのに5年10年は当たり前の
世界の中で・・その間が食べていけない
なので嫌われてしまいます。
色んな諸問題を沢山提起した作品にして
本にしてほしいと思います
健康だけは無理してはいけません
体の全体バランスが大切です
体の中は宇宙と同じまだまだ未開発
お大事に!!
最盛期には3時間ほどかかった収穫も
いまは1時間半程度で終わりです。
花はたくさん咲いていますので、これから
10日ほど先になると、再びピークをむかえます。
そういう意味で、いまはちょうど骨休めの時期。
ひさしぶりにゴルフの打ちっぱなしに
行ってきたいとなどと考えております。