オヤジ達の白球(最終話)おとこたちの白球
一塁手が坂上へ顔を寄せる。
「おまえがもどってくるのを、待っていた。
すぐに戻って来ると思っていたが、予想外に1年間も待たされた。
おれたちはいくら待たされてもいい。
しかし。これ以上待たせるとリベンジにやってきた、消防チームが気の毒だ」
三塁手も顔を寄せる。
「全力で投げることはねぇ。力を入れず、楽に投げればいい。
俺たちが守っているんだ。
どんな打球でも取ってやる。ぜんぶアウトにしてやるさ。
一年ぶりのゲームじゃねぇか。楽しくやろうぜ坂上」
一塁手と三塁手の顔を、遊撃手が怖い顔で睨む。
「坂上。こいつらの甘い言葉を信じるんじゃねぇぞ。
かならず二遊間へ打たせろ。
おもえも知っているとおり、1塁手と3塁手は下手くそだ。
だが遊撃手の俺と、2塁手の寅吉は鉄壁だ。
まちがっても、1塁と3塁には打たせるな」
ポンと背中をたたき、内野手がそれぞれの位置へ散っていく。
坂上の顔が、うえをむきはじめた。
(お・・・やっと投げる気になったみたいですねぇ。坂上先輩が)
マウンドを見つめていた慎吾がうれしそうに、ミットを鳴らす。
「監督さん。3度目のプレィボールをかけてもいいでしょうか?」
球審の千佳が祐介をふりかえる。
しかし。顔をあげはじめた坂上は、まだ目頭をこすっている。
「すまねぇ千佳ちゃん。あとすこし。もう30秒だけ待ってくれないか。
それからいつものようにいい声で、プレーボールを宣言してくれ」
「わかりました。でもこんなことは今回だけですよ監督さん。うふふ」
「すまねぇなぁ。
呑んべェどもが国際審判員の千佳ちゃんに、迷惑ばかりかけちまってよ。
恩に着る」
「どういたしまして。そのかわり、こんど顔を出したら冷酒をおごってください。
素敵なチームに乾杯しましょ」
「素敵だって?、こんなどうしょうもない、呑んべェどものチームがかい?」
「うふふ。
素晴らしさに気が付いていないのは、しろうと監督の大将だけです。
さて、それではこんどこそ、試合開始といきましょう。
消防さんもしびれをきらして待っていますから」
おう。頼むとぜと祐介がベンチへ引き上げていく。
監督がベンチへ座ったのをたしかめたあと、主審の千佳がマウンド上の坂上へむかい
「プレィボ~ル」と、ひときわたかい声をはりあげる。
目元をぬぐった坂上が、身体を前へ傾ける。
ボールを握った指先に力がこもる。
(待たせたな慎吾。今度こそ本気で行くからな。しっかり受けてくれよ)
(待たせすぎです、坂上先輩。
それはともかく、今夜は本気で、おもいきりゲームを楽しみましょう)
「お~い、みんな。打たせるぞ!。しっかり守ってくれよ」
慎吾の大きな声がグランドを響き渡る。
「おう。打たせろ、打たせろ。おれのところへ打たせろ。ぜんぶアウトに取ってやる」
内野と外野から、つぎつぎ男たちの元気な声がかえってくる。
(完)
一塁手が坂上へ顔を寄せる。
「おまえがもどってくるのを、待っていた。
すぐに戻って来ると思っていたが、予想外に1年間も待たされた。
おれたちはいくら待たされてもいい。
しかし。これ以上待たせるとリベンジにやってきた、消防チームが気の毒だ」
三塁手も顔を寄せる。
「全力で投げることはねぇ。力を入れず、楽に投げればいい。
俺たちが守っているんだ。
どんな打球でも取ってやる。ぜんぶアウトにしてやるさ。
一年ぶりのゲームじゃねぇか。楽しくやろうぜ坂上」
一塁手と三塁手の顔を、遊撃手が怖い顔で睨む。
「坂上。こいつらの甘い言葉を信じるんじゃねぇぞ。
かならず二遊間へ打たせろ。
おもえも知っているとおり、1塁手と3塁手は下手くそだ。
だが遊撃手の俺と、2塁手の寅吉は鉄壁だ。
まちがっても、1塁と3塁には打たせるな」
ポンと背中をたたき、内野手がそれぞれの位置へ散っていく。
坂上の顔が、うえをむきはじめた。
(お・・・やっと投げる気になったみたいですねぇ。坂上先輩が)
マウンドを見つめていた慎吾がうれしそうに、ミットを鳴らす。
「監督さん。3度目のプレィボールをかけてもいいでしょうか?」
球審の千佳が祐介をふりかえる。
しかし。顔をあげはじめた坂上は、まだ目頭をこすっている。
「すまねぇ千佳ちゃん。あとすこし。もう30秒だけ待ってくれないか。
それからいつものようにいい声で、プレーボールを宣言してくれ」
「わかりました。でもこんなことは今回だけですよ監督さん。うふふ」
「すまねぇなぁ。
呑んべェどもが国際審判員の千佳ちゃんに、迷惑ばかりかけちまってよ。
恩に着る」
「どういたしまして。そのかわり、こんど顔を出したら冷酒をおごってください。
素敵なチームに乾杯しましょ」
「素敵だって?、こんなどうしょうもない、呑んべェどものチームがかい?」
「うふふ。
素晴らしさに気が付いていないのは、しろうと監督の大将だけです。
さて、それではこんどこそ、試合開始といきましょう。
消防さんもしびれをきらして待っていますから」
おう。頼むとぜと祐介がベンチへ引き上げていく。
監督がベンチへ座ったのをたしかめたあと、主審の千佳がマウンド上の坂上へむかい
「プレィボ~ル」と、ひときわたかい声をはりあげる。
目元をぬぐった坂上が、身体を前へ傾ける。
ボールを握った指先に力がこもる。
(待たせたな慎吾。今度こそ本気で行くからな。しっかり受けてくれよ)
(待たせすぎです、坂上先輩。
それはともかく、今夜は本気で、おもいきりゲームを楽しみましょう)
「お~い、みんな。打たせるぞ!。しっかり守ってくれよ」
慎吾の大きな声がグランドを響き渡る。
「おう。打たせろ、打たせろ。おれのところへ打たせろ。ぜんぶアウトに取ってやる」
内野と外野から、つぎつぎ男たちの元気な声がかえってくる。
(完)
一部を・・素晴らしいエンディングで終わり
ソフトボールのチームの真髄を歌い上げて
エンディング・・またまたいいお話となりました
大雪を経験したり、ハウスの倒壊を経験したり
いろんなことを通しての人間関係・・
素晴らしい生き方に感動しました。
長いことありがとうございました
体調をよくされて、お仕事に、小説家書きに
更に素晴らしい人生を謳歌しながらのご清祥を
心よりお祈り申し上げお礼とします
ありがとうございました。
早くに読者登録いただきましてありがとうございます。ようやく「読む」ということを始めたところです。体調が体調だけにサクサクとはいきませんが 知らず知らずに オヤジ達の白球 に引き込まれていました(笑)
音読訓練しながら楽しませていただいています。次はどれ読もうか と。
寒さ ご自愛ください。
今回は農業を中心に書きたいと思います。
地味な題材ですが、この間の体験もふまえて
書きあげてみたいと考えています。
とはいえ、あたらしい題材だけに、どんな方向へ
すすんでいくのか・・・
書いている当人にもわかりません(笑)
60歳から書き始めた小説も、今月で8年目へ突入しました。
今年1年はいろいろありました。
怪我有り病気有り、健康のありがたさを
しみじみ痛感した1年です。
生きていることのすばらしさを書きあげてみたい。
そんな思いで、新作を書きはじめました。
どうぞ末永いおつきあい、どうぞよろしくお願いします。