オヤジ達の白球 (82)熊の本音
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/f1/894d398ca72b3c019ce657d199851aa8.jpg)
「失敗を取り返すための舞台はととのえた。
けどよ。このチャンスを生かすも殺すも、あとは坂上のがんばり次第だ」
「なるほど、熊。おまえさんの気持ちはよくわかった。
ひとつだけ聞く。いまの坂上は、Aクラスの消防チームに通用するか?。
勝てるか今夜は?。坂上で」
「監督。勝ち負けは関係ねぇ。
逃げ出さずなにが有ろうが歯を食いしばり、最後まで投げることが大切だ。
坂上も、それを充分に自覚しているはずだ」
「何が有っても今夜は、最後まで坂上を投げさせる、ということか」
「野手は、投手の背中を見ながら守備につく。
言葉はいらねぇ。
四球を出そうが、ヒットを何本打たれようが関係ねぇ。
投手は3つのアウトを取るまで、ひたむきに投げることが大事だ。
そんな風に投げてる投手の背中を見ているうち、野手もなにかを感じるとる。
坂上のために勝とうと思うようになる。
そのときはじめて、野手の気持ちがひとつになる。
チームワークってやつは、そんな風にして生まれるくる。
ソフトボールは、9人でおこなうスポーツ。
何点取られてもいい。大量点を取られて負けてもいい。
ゲームセットのときまでマウンド上へ、坂上がいればそれでいいんだ」
「それだけじゃないでしょう。
熊さん。そろそろ、ホントのことを言ったらどうなの。
北海道のおとうさんが倒れたんでしょ。
農家を継ぐため、北海道へ帰るかどうか、実は悩んでいるって」
「あねご。そいつを口にしちゃだめだ。そいつは極秘中の極秘情報だ!。
俺個人のささいな問題だ」
「えっ・・・おやじさんが倒れた!。それで北海道へ帰る気になったのか、熊?。
そうか。そういうことか。
ウチの投手は、熊、おまえさんひとりだけだ。
お前さんが抜けたとたん、ここまで来た俺たちのチームがばらばらになっちまう。
そうなるまえに坂上を呼びもどしたということか」
「まいったなぁ。それほどの美談じゃねぇ。
北海道の農家といったって、ウチの畑はちいせぇ。猫の額のようなもんだ。
食っていくのにせいいっぱいだけの土地に、執着はねぇ。
しかしよ。電話のたびに弱気になっていくおふくろが、なんだかあわれに思えてきた。
がらにもなく、帰ろうという気持ちがわきあがってきた。
それだけのことだ」
「おやじさん。悪いのか?」
「余命半年。よくもって、あと1年だろうと宣言された。
おやじが生きているうちに、百姓を教えてもらおうか、なんて考え始めた。
親孝行のひとつくらい、せめて、おやじが生きているうちにしたいなぁ・・・
なんてかんがえはじめている昨日、今日だ」
「そういうことなら、すぐにでも北海道へ帰る必要があるな。熊」
「あわてて群馬から俺を追い出すな、監督。
百姓してもいいかなと、ふと考えはじめただけのことだ。
帰ると決めたわけじゃねぇ。
だいいち。いまのままじゃ坂上が心配で、帰るにも帰れねぇだろう。
あいつを何とかしないことには、安心して北海道へ帰れねぇ」
マウンドで5球目を投げ終えた坂上が、おおきく肩で息をつく。
「プレィボール~!」
千佳の澄んだ声が、夜空へひびきわたる。
(おっ。試合開始だ。坂上のやつ、いったいどんな投球を見せてくれるかな)
祐介が身体を乗り出す。坂上が投球のための前傾姿勢へ入る。
しかし、そのまま動かない。投げ出す気配がいっこうにない。
そのまま10秒、20秒と時間だけが経過していく。
(あれれ・・・どうしたんだ?、坂上のやつ・・・)
ピッチャーサークルで、石のように固まっている坂上の姿に祐介が不安をおぼえる。
脳裏におもわず、あの日の記憶がよみがえってくる・・・
(83)へつづく
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「失敗を取り返すための舞台はととのえた。
けどよ。このチャンスを生かすも殺すも、あとは坂上のがんばり次第だ」
「なるほど、熊。おまえさんの気持ちはよくわかった。
ひとつだけ聞く。いまの坂上は、Aクラスの消防チームに通用するか?。
勝てるか今夜は?。坂上で」
「監督。勝ち負けは関係ねぇ。
逃げ出さずなにが有ろうが歯を食いしばり、最後まで投げることが大切だ。
坂上も、それを充分に自覚しているはずだ」
「何が有っても今夜は、最後まで坂上を投げさせる、ということか」
「野手は、投手の背中を見ながら守備につく。
言葉はいらねぇ。
四球を出そうが、ヒットを何本打たれようが関係ねぇ。
投手は3つのアウトを取るまで、ひたむきに投げることが大事だ。
そんな風に投げてる投手の背中を見ているうち、野手もなにかを感じるとる。
坂上のために勝とうと思うようになる。
そのときはじめて、野手の気持ちがひとつになる。
チームワークってやつは、そんな風にして生まれるくる。
ソフトボールは、9人でおこなうスポーツ。
何点取られてもいい。大量点を取られて負けてもいい。
ゲームセットのときまでマウンド上へ、坂上がいればそれでいいんだ」
「それだけじゃないでしょう。
熊さん。そろそろ、ホントのことを言ったらどうなの。
北海道のおとうさんが倒れたんでしょ。
農家を継ぐため、北海道へ帰るかどうか、実は悩んでいるって」
「あねご。そいつを口にしちゃだめだ。そいつは極秘中の極秘情報だ!。
俺個人のささいな問題だ」
「えっ・・・おやじさんが倒れた!。それで北海道へ帰る気になったのか、熊?。
そうか。そういうことか。
ウチの投手は、熊、おまえさんひとりだけだ。
お前さんが抜けたとたん、ここまで来た俺たちのチームがばらばらになっちまう。
そうなるまえに坂上を呼びもどしたということか」
「まいったなぁ。それほどの美談じゃねぇ。
北海道の農家といったって、ウチの畑はちいせぇ。猫の額のようなもんだ。
食っていくのにせいいっぱいだけの土地に、執着はねぇ。
しかしよ。電話のたびに弱気になっていくおふくろが、なんだかあわれに思えてきた。
がらにもなく、帰ろうという気持ちがわきあがってきた。
それだけのことだ」
「おやじさん。悪いのか?」
「余命半年。よくもって、あと1年だろうと宣言された。
おやじが生きているうちに、百姓を教えてもらおうか、なんて考え始めた。
親孝行のひとつくらい、せめて、おやじが生きているうちにしたいなぁ・・・
なんてかんがえはじめている昨日、今日だ」
「そういうことなら、すぐにでも北海道へ帰る必要があるな。熊」
「あわてて群馬から俺を追い出すな、監督。
百姓してもいいかなと、ふと考えはじめただけのことだ。
帰ると決めたわけじゃねぇ。
だいいち。いまのままじゃ坂上が心配で、帰るにも帰れねぇだろう。
あいつを何とかしないことには、安心して北海道へ帰れねぇ」
マウンドで5球目を投げ終えた坂上が、おおきく肩で息をつく。
「プレィボール~!」
千佳の澄んだ声が、夜空へひびきわたる。
(おっ。試合開始だ。坂上のやつ、いったいどんな投球を見せてくれるかな)
祐介が身体を乗り出す。坂上が投球のための前傾姿勢へ入る。
しかし、そのまま動かない。投げ出す気配がいっこうにない。
そのまま10秒、20秒と時間だけが経過していく。
(あれれ・・・どうしたんだ?、坂上のやつ・・・)
ピッチャーサークルで、石のように固まっている坂上の姿に祐介が不安をおぼえる。
脳裏におもわず、あの日の記憶がよみがえってくる・・・
(83)へつづく
終わってほぼ終了、ナイターソフトの
チームもたぶん終わる頃でしょう
いつも日本シリーズの前には終わっていました
みんな本職を別に持ってのチームです
学生野球やプロ野球と違って気持ちを
一つにまとめる・・大変ですよね
ますますお話の方は面白くなりました
落合さんも健康に注意して・・本業と
作家業と・・頑張ってくださいね
熊さんのように・・
あと2ヶ月で、ことしも終わりです。
キュウリのハウスも、冬に向かって衣替えの準備中。
周囲の側面をカーテンでおおい、
天井にも、保温用のカーテンが広がります。
さらに暖房もはじまります。
温かい風をおくるためのビニールの筒が
ハウス内をめぐります。
冬でも野菜は育ちますが、生育コストが
寒さと比例して、あっという間に跳ね上がります。