上州の「寅」(34)

それから15分。網がからになった。
あれほどいたハチがすべて、巣箱の中へ居場所をうつした。
「凄い。ホントに巣箱へ移った。まるで魔法を見ているようだ」
「ニホンミツバチの群れは女王蜂、働き蜂、雄蜂で構成されている。
数千匹の群れがまるでひとつの生物のように振舞うんだ。
とても興味深い生き物さ」
「巣箱から逃げ出さないのか?」
「よほどのことがないかぎり定着すると思う。
ここは南にむかってひらけているし、木陰で夏も過ごしやすい。
こんな環境はめったにない。
気難しい日本ミツバチもここなら気に入ってくれそうだ」
「ということは捕獲成功、第一号、ということだな!」
「そうよ。大成功。
成功を祝って祝杯をあげよう。今夜は」
「待て。まずいだろ。未成年が祝杯をあげるのは」
「あら18歳は大人でしょ。選挙権もあるし」
「酒とたばこは駄目だ。競馬や競艇などのギャンブルも20歳になるまでは駄目。
それに成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるのは2022年からだ。
選挙権はあってもまだ君は子供だ」
「よく見てよ。ほら。あたし、おっぱいは大人並みに大きいのよ。
ユキなんかわたしよりもっと大きい。
おっぱいの大きさも成人の基準にしてくれないかしら」
「馬鹿なことを言うな。おっぱいのおおきさには個人差がある。
そんなもの成人の基準になるもんか」
「そういえば寅ちゃんはどっちが好き?。オッパイ。それともお尻?」
「いきなり何の話だ」
「決まってるでしょ。女性のどこに魅力を感じるか聞いてんの。
男の人は女性の顔を見る前にまず、胸かお尻をチェックするでしょう。
寅ちゃんはどっちさ。先に見るのは?」
「どちらかといえば、お尻かな。
あっ。馬鹿。何を言わせんだ。こんな場所で!。仕事中だぞ」
「お尻かぁ・・・。う~ん残念。あたし小さいからな。
ということは寅ちゃんの好みは、お尻のおおきいユキのほうだな」
「勝手に決めつけるな。俺の好みの女性を!」
「あら。違ったの?。
じゃぁ寅ちゃんは、あたしが好み?。
胸はそこそこでお尻は小さいけど総合点で、あたしが好みかしら」
「嫌いじゃないが、金髪は嫌いだ」
「じゃ黒髪にする」
「えっ・・・ほ、本気か?」
「かまわないよ。黒髪にしても」チャコの黒い瞳が寅を見つめかえす。
その瞬間、寅の背中へ電気が走る。
(まいった・・・なんだか予想外の方向へ暴走しそうだ)
(35)へつづく
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます