落合順平 作品集

現代小説の部屋。

上州の「寅」(34)おっぱい?お尻?

2020-10-01 18:26:20 | 現代小説
上州の「寅」(34)

 
 それから15分。網がからになった。
あれほどいたハチがすべて、巣箱の中へ居場所をうつした。


 「凄い。ホントに巣箱へ移った。まるで魔法を見ているようだ」


 「ニホンミツバチの群れは女王蜂、働き蜂、雄蜂で構成されている。
 数千匹の群れがまるでひとつの生物のように振舞うんだ。
 とても興味深い生き物さ」


 「巣箱から逃げ出さないのか?」


 「よほどのことがないかぎり定着すると思う。
 ここは南にむかってひらけているし、木陰で夏も過ごしやすい。
 こんな環境はめったにない。
 気難しい日本ミツバチもここなら気に入ってくれそうだ」


 「ということは捕獲成功、第一号、ということだな!」


 「そうよ。大成功。
 成功を祝って祝杯をあげよう。今夜は」


 「待て。まずいだろ。未成年が祝杯をあげるのは」


 「あら18歳は大人でしょ。選挙権もあるし」


 「酒とたばこは駄目だ。競馬や競艇などのギャンブルも20歳になるまでは駄目。
 それに成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるのは2022年からだ。
 選挙権はあってもまだ君は子供だ」


 「よく見てよ。ほら。あたし、おっぱいは大人並みに大きいのよ。
 ユキなんかわたしよりもっと大きい。
 おっぱいの大きさも成人の基準にしてくれないかしら」


 「馬鹿なことを言うな。おっぱいのおおきさには個人差がある。
 そんなもの成人の基準になるもんか」


 「そういえば寅ちゃんはどっちが好き?。オッパイ。それともお尻?」


 「いきなり何の話だ」


 「決まってるでしょ。女性のどこに魅力を感じるか聞いてんの。
 男の人は女性の顔を見る前にまず、胸かお尻をチェックするでしょう。
 寅ちゃんはどっちさ。先に見るのは?」


 「どちらかといえば、お尻かな。
 あっ。馬鹿。何を言わせんだ。こんな場所で!。仕事中だぞ」


 「お尻かぁ・・・。う~ん残念。あたし小さいからな。
 ということは寅ちゃんの好みは、お尻のおおきいユキのほうだな」


 「勝手に決めつけるな。俺の好みの女性を!」


 「あら。違ったの?。
 じゃぁ寅ちゃんは、あたしが好み?。
 胸はそこそこでお尻は小さいけど総合点で、あたしが好みかしら」


 「嫌いじゃないが、金髪は嫌いだ」


 「じゃ黒髪にする」


 「えっ・・・ほ、本気か?」


 「かまわないよ。黒髪にしても」チャコの黒い瞳が寅を見つめかえす。
その瞬間、寅の背中へ電気が走る。
(まいった・・・なんだか予想外の方向へ暴走しそうだ)




(35)へつづく


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