「最近の国畜化計画の進捗はどうなっている?」
「比較的順調に進んでいます。新型コロナウイルスの蔓延で、渡航制限がかかっていることが功を奏しているとも言えます。国民は新規感染症が蔓延したとしても、日本国内にとどまっている限りほかの国より安全だと思っていますし」
「それは非常に重要なことだ。諸外国の方が生きる可能性が高いと思われてはいけない。もっとも、個人主義ではなく、長いものに巻かれる文化であるのだから、不平不満は言っても、個人単位では何もできないが。ほかの文化という意味ではオリンピックはどうだ?」
「感染症対策もあったため、異国から異文化がやってくるという危機感があり、開催は危ぶまれましたが、もとよりお祭りが好きな国民なので、始まってしまえば自国のメダル獲得数のみに目が行きます。国内の無観客を行い、海外からの観客を制限して、不公平感も出ていないということも重要でしょう。なによりも、『不公平』は日本人が最も嫌います。すべての人が平等に制限される限り、文句は言いません」
「そうだな。自分より権力が上のものがどんなにおかしいことを言っていたとしても、ほかの人が我慢しているなら自分も我慢してくれる。とにかく特例は設けないことだ。他国文化の流入は防げているな?」
「選手は基本的に隔離していますし、ほとんどの国民は国外の選手に近寄ろうとしません。物理的なソーシャルディスタンシングが、異文化にそもそも触れないことにつながっています」
「あまり国外の情報は日本語に訳さないようにしてくれたまえ。せっかく日本語は世界的に見て特殊な言語で、情報を隔離するにはもってこいなのだから、下手に異文化の価値観を理解されては困る。生活インフラに大きな問題はないか?」
「労働政策研究・研修機構からの情報からわかるように、輸出入額は急激に回復・向上しています。
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c15.html
労働生産力が抑制されたことは大きな痛手でしたが、国内国外の生産能力が回復したため、その不足分を補う方向に向かっています。人と人のコミュニケーションで感染が広がるわけで、モノの交換そのもので感染するわけではないですから」
「それはもっともなのだがね。ワクチン接種の進行状況は?」
「IT総合戦略室の情報発信でもわかるように、順調に進んでいます。
https://cio.go.jp/c19vaccine_dashboard
各都道府県の接種率に大きな差は出ていません」
「接種率が上がるより地域差が出るのが最も危険だ。不平等・不公平だと感じてしまうからな。
あとは周りの目を気にしながら、勝手に自粛してくれる。個々人の主張よりその他大勢の社会が迷惑をこうむる方が悪なのだよ。
何はともあれ、『生かさず、殺さず』ではなく、他国より非常に快適に生きていると感じられる状態で、しっかりと働いてもらわないとならないのだ。日本国民は非常に勤勉な労働力だ。少なくとも国としては、そのような勤勉な労働力に対する保護を行っている姿勢と対応は見せねばなるまい。
一生涯を日本に捧げてもらうことが何よりも重要だ。自由を求められては困る。
不平等な自由より、平等な不自由だ。
みんな我慢していれば従うのだから」
参考:「国畜」佐高信著