現実はコンピュータシミュレーションではないのだけど、そんな当たり前のことをちゃんと認識しているか、他人にそれを説明できるのか、それは確認しておきたいなと。
FPSやGTAなどのゲームをやると、
「この現実世界はコンピュータの中の出来事なのでは?」
と思ってしまうのは納得できる。
そんなリアルワールドゲームもここ数十年で飛躍的進化を遂げたのですよ。
初期のバイオハザードなんか、思うようにキャラクターを操作できなくて、相当イライラするわけですが。
そのイライラの原因は、データを読み込むロード時間という要因もあったわけですが、PS5ではその時間がかなり削減されているらしい。
更に現実世界とシミュレーションが近くなるなぁ。
十代の頃、コンピュータの中に現実世界を再構築できるんじゃないかと、色々試行錯誤した上で世の中のありとあらゆる学問を調べて知っていったわけですが。
知れば知るほど、現実世界をコンピュータに再現できないことはわかる。
その理由をいくつか挙げるとすれば。
富岳の飛沫飛散シミュレーションを見かけます。
どんなマスクをして、どんな状況だと、どのように口からの飛沫が飛ぶかというシミュレーション。
論文を完全に読み込んだわけではないけれど、あれを見ると、ものすごく難しい前提条件でシミュレーションしているなと思う。
そもそもで言えば、同じマスクをしていても、着け方が少し違えば飛散状態は全く変わってしまう。
不織布マスクであれば、鼻に当たる変形部品をどのように曲げるかで、密閉性は全く異なってくる。
人と状況によって、何万通りの(それこそ上限がないパターンの)マスク着用条件がありうるわけだけど、たった一つの条件で粒子シミュレーションを行っている。
視覚情報としてどのような飛散状況があるかを捉えるためのシミュレーションなのだと捉えてはいる。
世界一のスーパーコンピュータで計算すると、マスクをしているとしていないとで、どれだけ差が出るかという、一般大衆向け情報としてのインパクトなのだろうなと。
同じシミュレーションでも複数の前提条件で計算すれば、全く違う結果が出る。
最終的には確率論でしか物事を論じられなくなる。
最初のちょっとした違いで後々の結果が大きく変わる理論は、カオス理論とも言われるわけだけど、一つの結果だけを提示するコンピュータシミュレーションでは、この表現が難しい。
人にとって理解しにくいというのもある。
仮にこの世界がコンピュータシミュレーションなのだとすれば、これから未来のある地点ある時間の、天気、温度、湿度、風向、風力は完全に述べられなくてはならないわけだけど、そんなことはできない。
数年後にその地点に建物が立っている可能性もあるわけでね。カオス理論云々の前に。
大体過去にさかのぼってそれら詳細なデータが残っているかも疑わしい。
自然現象よりも人の行動のほうが予測できない。
原子模型なんか見ると、原子核の周りを電子が回っているわけだけど、じゃあ電子顕微鏡でその電子の位置を特定しようとすれば、電子が当たった瞬間に測定しようとした電子は光のスピードでどこかに行ってしまう。
電子はこのあたりにいるんじゃないの?としか漠然としかわからない。
不確定性原理ともいう。
世の中のありとあらゆる物理エネルギーを、一つの式で表したいという人の欲求はもちろんある。
電気・熱・磁力・重力・慣性力などなど、個別のエネルギー変換の方程式はあるのだけど、全てを一つの式で表現できる大統一理論というのはまだできていないはず。
個人的には、あればシミュレーションしやすいとは思うけれど、式の構築をするだけで、途方もない労力が予想されてやる気さえ起こらない。
コンピュータシミュレーションで、というか、技術的に難しいと思うのは、匂いの再現で。
同様に味覚も再現が難しいのだけど。
人はほとんどの現実世界認識を視覚聴覚情報に頼っているわけで、それをコントロールする技術は進んでいるのだけど。
嗅覚味覚のコントロールは難しい。
もちろん視覚聴覚情報も、現実と少しでも違えばおかしいと認識できる能力は(大抵の人に)ある。
そもそもなんのためにそれら認知能力があるかといえば、自分の身がどのような危険にさらされているかを知るためにあるのであって、それらすべてがコントロールされてしまうというのも危険極まりない状態とも言える。
そのような知覚情報を厳密にコントロールするよりも、脳の認識そのものにエラーを起こさせることのほうが遥かに簡単だとはわかる。
つまり、
「今認識していることはすべて嘘で、私の言っていることが全て正しい」
と思い込ませることのほうが遥かに簡単。
そのような情報バイアスはいつでもどこにでもあるし、誰にでも起こりうることなので、そこに縛られてないかどうかは常に確認し続けないと簡単に情報に流される。
テレビ情報やSNSなどインターネット情報や、他人のうわさ話なども、そのような危機感を持って受け取らないと、簡単に流される。
100%純度の高い確実な情報などないとわかっているかどうかが重要で。
そうでないと、簡単に物事や他人を信じてしまう。
それでも、
現し世はゆめ よるの夢こそまこと
である可能性も否定できない。
少なくともこの現実世界は、コンピュータで再現できないぐらいは複雑だとは知っていますよ。