百合子さんは何色―武田百合子への旅村松 友視筑摩書房このアイテムの詳細を見る |
虚実入り混じった雰囲気というのは、確かに武田百合子の文章に見られることである。
「富士日記」では生を謳歌する、積極的でエネルギッシュな日々が綴られているが、
読み手は日常的に垣間見える死の淵の描写などに、度々ドキリとさせられる。
百合子さんって、どんなひとなの?
喜怒哀楽を素直に表しているけれど、時折ふと虚無的なものも感じる。
頭でっかちなインテリには敵わない、無の心と、肯定感。
「富士日記」はシンプルであるがままの生活を描いた、私的日記のように見えるけれど、
本当はすごく複雑で、奥行きの深い作品なのではないかしら?
武田泰淳の妻として、また秘書代わり、口述筆記者、運転手として、
それに花さんの母として、多忙な日々と送っていたはずの百合子さん。
「富士日記」以前の人生のステージで、様々な表情を見せる百合子さん。
生前の百合子さんを知る人々の言葉が集まるほど、さらに謎が深まるのだけれど、
不思議と“そういうもんだ”という気もする…。
矛盾も全部ひっくるめて、武田百合子というキャラクターなのだって。
喫茶店の「ランボオ」で働いていた、戦後の闇雲な時代も、
「富士日記」で見られる、元気で無鉄砲な作家の妻の時代も、
どこかで通じているような、そんな感想を持つのでした。
ちなみに、上の本は図書館から借りました。
下の本は、出版社が増刷したタイミングを見計らい、購入。
(こちらの感想はブクログのsayukiの本棚にあります)
KAWADE夢ムック 文藝別冊 武田百合子河出書房新社このアイテムの詳細を見る |
最近は、武田百合子さんの著書だけではなく、こうした研究本も読んでいます。
でも読み終えると、また「富士日記」や「犬が星見た」を
読み返したくなっちゃうんだよな。
危ういのに健やかだったりと、アンバランスなところが魅力的。
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