☆ 昨日の復習
先手番米長先生の次の手は?
☆ 今日の棋譜20170702
昭和55年11月、脇健二先生とがんばれ新鋭戦(朝日新聞の臨時棋戦)です。
大山先生は四間飛車、脇先生は急戦のようですが
天守閣美濃からの右46銀でした。
大山先生はいつもの32金はできませんが、32銀と引いて対抗します。普通の応手は37桂~26飛~35歩という攻めですが、脇先生は55銀と出ました。
普通の棋士は63金ですが、大山先生は63銀から54歩で
まだ72金と締まっていないのですが、55歩、同歩に45歩でさばこうというわけです。
脇先生の66歩から67金、というのも不思議な感じですが、この4枚美濃は右金が攻め駒になることもあるので、指されてみれば、という手でした。
右桂を跳ねて、24歩同歩55歩、こうなれば好調です。55同銀には24角22飛33角成28竜55馬で銀得ですから
大山先生は角で取って桂の取り合い。
脇先生は55桂に端を攻めるのは元気が良すぎました。68金引で我慢しておいて、玉が堅いので悪くはないです。攻めるにしても、24角なのかと思うのですが。
大山先生は金を剥がして55馬から22馬。端は気にしないで強く守りました。
脇先生、今度は手堅すぎ。駒損ですから、94歩とか23歩とか53歩とか、どんどん攻める手を考えたいです。
桂を取れば駒損でもない、という主張でしたが
角を攻めに使って銀を引く、凝った手順をひねり出しました。
でも角を追われて封じ込められては苦戦です。
角で22飛を責めれば
大山先生は金を投入して守ります。
天守閣美濃はこの地点を攻められると弱いです。
玉頭に手がついて、先手玉の寄りが見えてきました。
大山先生は確実な攻めを選びます。ですが速くないのでちょっと危険です。
脇先生は眠っていた角が使えて
ぐるっと回ってきました。これで攻め合いです。
大山先生は平然と桂を取るのですが、まあ相手の強さを見てみようという感じです。銀を取られて詰めろ。
角を取って詰めろが消えましたが、香を走られて詰めろ。
これに金を出たのが詰めろ逃れ、先手玉が詰めろですね。
逆転の手段はなくて、投了です。
脇先生は大山先生と初対局なのでずいぶん緊張したでしょう。攻め急いだり慎重になりすぎたりで、大山先生の有利が続いた終盤でした。ちょっと強引なところもあるのですが、これくらいなら悪くない、と指していたのでしょう。脇先生の攻めの強さも見えて、結構面白い勝負です。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:脇健二4段
後手:大山王将
先手省略名:脇
手数----指手--
1 2六歩(27)
2 3四歩(33)
3 7六歩(77)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4二飛(82)
9 6八玉(59)
10 6二玉(51)
11 7八玉(68)
12 7二玉(62)
13 5八金(49)
14 8二玉(72)
15 9六歩(97)
16 9四歩(93)
17 5七銀(48)
18 4三銀(32)
19 2五歩(26)
20 3三角(22)
21 3六歩(37)
22 7二銀(71)
23 1六歩(17)
24 1四歩(13)
25 8六歩(87)
26 5二金(41)
27 8七玉(78)
28 6四歩(63)
29 7八銀(79)
30 7四歩(73)
31 4六銀(57)
32 3二銀(43)
33 5五銀(46)
34 6三銀(72)
35 7九角(88)
36 5四歩(53)
37 6六銀(55)
38 4三銀(32)
39 7七銀(66)
40 5五歩(54)
41 6六歩(67)
42 4五歩(44)
43 6七金(58)
44 7二金(61)
45 3七桂(29)
46 5四銀(43)
47 2四歩(25)
48 同 歩(23)
49 5五歩(56)
50 同 角(33)
51 2四飛(28)
52 3七角成(55)
53 2一飛成(24)
54 5五桂打
55 9五歩(96)
56 6七桂成(55)
57 同 銀(78)
58 5五馬(37)
59 9四歩(95)
60 2二馬(55)
61 9三歩成(94)
62 同 桂(81)
63 2二龍(21)
64 同 飛(42)
65 2四歩打
66 9四歩打
67 9五歩打
68 同 歩(94)
69 9四歩打
70 8四歩(83)
71 6五歩(66)
72 同 銀(54)
73 5七角(79)
74 8三金(72)
75 7八銀(67)
76 5六歩打
77 3九角(57)
78 2九飛打
79 1七角(39)
80 2六歩打
81 4四角打
82 2四飛(22)
83 5五桂打
84 7二銀(63)
85 3三角成(44)
86 2一飛(24)
87 3四馬(33)
88 5三金打
89 4四桂打
90 4二金(52)
91 6三歩打
92 7三銀(72)
93 3五馬(34)
94 5七歩成(56)
95 3二桂成(44)
96 6七と(57)
97 同 銀(78)
98 6九飛成(29)
99 7八銀(67)
100 5八龍(69)
101 2一成桂(32)
102 8五歩(84)
103 9三歩成(94)
104 同 金(83)
105 6八桂打
106 8六歩(85)
107 同 玉(87)
108 8八歩打
109 6二歩成(63)
110 同 銀(73)
111 3九角(17)
112 7五歩(74)
113 同 角(39)
114 7四銀(65)
115 6四角(75)
116 7三歩打
117 6三歩打
118 8九歩成(88)
119 6二歩成(63)
120 8五歩打
121 8七玉(86)
122 6四金(53)
123 9五香(99)
124 9四金(93)
125 7二と(62)
126 同 玉(82)
127 6一銀打
128 8二玉(72)
129 投了
まで128手で後手の勝ち
20170702今日の一手
6月10日の名南将棋大会から、SさんとHさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
これは後手の横歩取らせ(横歩取り23歩)の将棋です。
34飛88角成同銀25角に32飛成
というのが定跡ですが、36飛と引いて飛角交換でも指せます。これをNHK杯で先手羽生先生の将棋で見たことがあります。
32同銀38銀33銀に16歩
というのが比較的新しい手(と言っても20年は経っていると思いますが)で、私が子どものころ読んだ本には、45角が従来の手、68玉が新しい手でした。77銀はやや劣ります。16歩は14角と逃げる変化を消していて、角を捕獲しやすくなります。詳細を忘れましたが、16角と取って後手が1筋を攻める将棋を見たことはあります。
ここで後手Iさんの41玉が新手でしょうか。35金に34角
が問題図ですが、普通は34角ではなくて24歩、25金同歩23角
から馬を作れば先手有利です。41玉は32玉として安定させよう、という狙いだと思うのですが、これは32金と打つくらいなので、新手は不発だと思います。
さて問題図に戻って
☆ 形勢判断をします。
飛と金歩の交換で、後手に持ち歩がないので歩もカウントします。それでも後手の駒得なのですが、問題図は角金交換が避けられないので、実質は飛と角歩の交換で、先手の駒得になります。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒35金と持ち駒角で2枚。あるいは角を取って角2枚と数えてもよいです。
後手の攻め駒は34角と持ち駒飛で2枚。あるいは角を取られて持ち駒飛金で2枚。
総合すれば先手有利です。
☆ 大局観として
後手は駒得になりにくいですし、玉も薄いです。だからこの戦型は避けるのが普通です。最初は飛と金歩の交換で駒得、と言っていたのですが、馬を作られたり(これは昔の45角と打つ定跡など)角を金で取られたりするので、駒得を保てないのです。
41玉が後手の工夫で(この定跡に詳しくて新手を試したかったのか?)すが、32玉の形を作れば玉が守りにも働くので主張が通ります。
先手としては、なるべくなら32玉を避けて強く攻めるか、32玉とされても3筋を攻めて逆用する、という考え方もあります。いずれにしても先手有利なので、変な手を指さなければ大体はよくなるのですが、なるべく欲張ってみましょう。感覚的には後手が嫌がる手を指せばよい手になります。
△ 実戦は22歩と打って
22同飛に34金同銀56角
で銀取りと馬作りとの両狙いです。これは悪くはないのですが、33歩83角成72金84馬52玉85馬24歩75馬25歩
と伸ばされて、あまり得をしていないのだろうと思います。飛と馬歩の交換なので、先手有利には間違いないのですが、後手玉が安定して、飛も使えます。
実戦は33歩と打たないで84飛と打って
頑張りました。これは後手がまだ形勢が悪くないよ、と思っていて、全部受けようとしたわけです。66角82飛寄84角
で84同飛まであっという間に進むので、こういう定跡があったのか?と思いましたが、先手のSさんに聞いたら定跡ではないとか。84角では11角成で優勢でした。角飛の交換よりも、香得で馬を作るのが大きいです。
84同飛にずいぶん考えて22歩でしたが(83飛もあるか)54飛
ここで56飛から攻められるのを気にしすぎました。21歩成で先手有利でした。58金24角68金左56飛同歩39角
中央を受けましたが、ずいぶん攻められて気が弱くなったのでしょう、ここでも57金と打たれるのは気にせず、21歩成で優勢でした。自陣飛車を打ってずっと受けるのですが
もうかなり怪しい雰囲気です。反撃に転じてまだ形勢は互角くらいなのですが、1手負けになってしまいました。
△ 34金と先に取っても同銀で
攻めるなら22歩くらいですから、先に22歩とした実戦と同じです。77角には33金
でたいしたことはないです。
○ 角を取らずに66角(77角でもよい)ならば
金を渡していないので受けにくいです。44歩には34金同銀44角
でうまい受けがないです。
一番手堅そうなのは12飛打
で、34金同銀に56角
56角のところで22歩なら取れるようにしたのが、飛を打った意味です。でもこの銀取りは受けにくいです。24金と打つわけにもいかず、32飛右83角成72金84馬
くらい。これは歩を渡さず馬を作り、飛角の打ちあいも先手の得でしょう。
とすれば54飛
と上から打って34金に同飛を用意するくらい。(この時に77角よりは66角の方が少し得)ここからはじっくり駒組みです。34金や33角成の機会をうかがいます。
○ じっと68玉と上がっておく
のが手堅い手です。86歩からの歩交換は後手が危ないので、玉を先に上がるほうが良いのです。これは昔の定跡と同じ考え方。32玉に66角54飛
と前の変化に合流させることもできます。
じっと駒組みを続けて(32玉に77銀)
36歩~37桂と右桂を使っていくのが本筋で
44歩と催促(角を逃げる)された時に角を取ります。このときの後手の陣形が難しくて、65角、61角や72角から83角成狙いとか、後手は怖い攻め筋が多いです。54歩と突く形に出来るかどうか。
44歩の時に25桂として
43角に33桂成とすることもできます。先手の攻めの選択肢が多いです。
× 77銀は悪手で
67角成同金79飛
先手玉が薄いですから、駒得とはいえ桂香を取られたら悪くなります。
△ 68玉や77銀を省略して、36歩32玉37桂
を急ぐことは可能です。67角成でも問題はないです。86歩同歩同飛には68玉
で角打を狙います。67角成の強襲は怖いですが、何とかなるでしょう。まあ危険を避けた方が簡明ですが。
☆ まとめ
角2枚を持てそうなので、狙いは自陣角(敵陣に打ち込んで馬を作るのも理想ですが)です。
34金同銀56角の筋か
66角の筋か
前者は22歩同飛で(先に決めないと45金で返されるので)1歩渡すことになります。83角成から85の歩を取り返せますが、後手から見ると85歩のほうが価値が低いですから歓迎するところ。
後者は34金同銀を決める前に打てば厳しいです。
自陣角を打たないで、角も取らずに68玉からチャンスをうかがうというのも有力で、左金と34歩の存在していない後手陣には隙が多いです。なにか催促されたら(24歩とか44歩とか)角を取ると、その分だけ角打ちの隙ができます。
じっと待つなら自陣を整備するのが優先ですが、その後は取った筋の歩を伸ばすのが本筋。さらに37桂と使うと攻撃力が上がりますし、チャンスがあれば35歩と突いていきます。
3筋の歩が伸びていくと、後手玉(32玉と上がる構想だったはず)の真上ですから、かなり効果的なのです。
後手のほうから見ると、32玉とできれば角打ちの隙が減るはずなのですが、先手に3筋を攻められると、歩のない筋なので受けにくいわけです。そこまで検討すると、41玉の新手はうまくいかない、という結論になりそうです。(私はこの横歩取り、41玉の形で取らせたら32飛成に同玉とできる、という検討をしたことがあるのですが、同じ理由でうまくいきませんでした。)
優勢な時には欲張ってみる、というニュアンスが伝わるとよいのですが。
34金と取るのは後回し、一番良い時に取ります。歩も渡さずに馬を作りたいわけです。
でも欲張りすぎると自滅することがありまして(77銀に67角成など)、やりすぎてはいけない、というのが面白いところです。有利になったくらいでは欲張らないほうが良いです。