名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(572);四間飛車に矢倉引き角棒銀(加藤一二三)

2017-07-06 | 大山将棋研究
☆ 昨日の復習

先手番大山先生の次の手は?


☆ 今日の棋譜20170706
昭和56年1月、加藤一二三先生と第39期名人挑戦者リーグです。加藤先生は十段タイトル獲得しています。


大山先生は四間飛車で、加藤先生は引き角に。

矢倉の形は完成していませんが、引き角棒銀で速攻です。大山先生は前と同じで45歩。

この場合は15銀の余地があるので、44角という受け方はできません。飛車をまわって受けます。
加藤先生はすこしゆっくり位を取って銀の立て直しです。

やや駒組みを進め、大山先生は角の転回です。2筋はがら空きになるのですが

中央へ。

23歩成の時に26歩が入りました。

これは大山先生のペース。歩切れでも金をもって

飛を攻め

桂香を拾います。これで17飛の詰めろ。

桂で捕獲して、少し駒得になります。

加藤先生は角と と金で反撃です。

大山先生は飛を取って88香。取れば両取りで飛を打つ筋で攻め返します。

加藤先生の金打ちがしっかりした受けで

先手玉がかなり堅くなりました。先手よしになったようです。ここで64歩同金53と 進めたのですが、53香52歩43桂か42歩というのはどうでしょう。

角を取られて、と金を払われるというのはマイナスだと思うのです。

これは互角の攻め合いで

飛を成られ

先手玉は手厚いのですが、

大山先生は角で香を食いちぎり、どんどん攻めます。

馬も使って

犠牲にして、先手玉に食いつきます。

加藤先生も攻め合いです。でも68同金のほうが普通でした。

この寄せ合いは後手玉が詰めろかどうか。加藤先生は詰ましに行ったのですが、一度96歩から端に逃げるのは難解でした。

ここまで進めば詰まず。大山先生の勝ちです。

中盤は大山先生有利かと思ったのですが、加藤先生もタイトルを持っている充実期です。うまく玉を固めて逆転していたと思います。そこから大山先生らしからぬ、荒っぽい攻めでしたが、難しい寄せ合いになりました。加藤先生が少し良かったと思うのですが、詰みだとみたのが間違い。残念でした。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:加藤一二三十段
後手:大山王将
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4二飛(82)
9 6八玉(59)
10 6二玉(51)
11 7八玉(68)
12 7二玉(62)
13 5八金(49)
14 8二玉(72)
15 6八銀(79)
16 7二銀(71)
17 3六歩(37)
18 4三銀(32)
19 2五歩(26)
20 3三角(22)
21 7七銀(68)
22 5二金(41)
23 7九角(88)
24 2二飛(42)
25 3七銀(48)
26 6四歩(63)
27 2六銀(37)
28 4五歩(44)
29 3五歩(36)
30 3二飛(22)
31 3四歩(35)
32 同 銀(43)
33 3五歩打
34 4三銀(34)
35 3七銀(26)
36 5一角(33)
37 3六銀(37)
38 4四銀(43)
39 3七桂(29)
40 7四歩(73)
41 6六歩(67)
42 6三金(52)
43 1六歩(17)
44 5四歩(53)
45 6七金(58)
46 6五歩(64)
47 同 歩(66)
48 7三角(51)
49 2七飛(28)
50 5五歩(54)
51 2四歩(25)
52 5六歩(55)
53 2三歩成(24)
54 2六歩打
55 1七飛(27)
56 5二飛(32)
57 5八歩打
58 5五銀(44)
59 3四歩(35)
60 6六歩打
61 同 金(67)
62 同 銀(55)
63 同 銀(77)
64 2七金打
65 同 銀(36)
66 3七角成(73)
67 1八銀(27)
68 1九馬(37)
69 3三歩成(34)
70 5七歩成(56)
71 同 角(79)
72 2五桂打
73 4三と(33)
74 5六飛(52)
75 6七銀打
76 5四飛(56)
77 3五角(57)
78 1七桂成(25)
79 4四と(43)
80 5一飛(54)
81 1七銀(18)
82 8八香打
83 2六銀(17)
84 3九飛打
85 7九金打
86 8九香成(88)
87 同 玉(78)
88 5五桂打
89 7八銀(67)
90 4七桂成(55)
91 6四歩(65)
92 同 金(63)
93 5三と(44)
94 3五飛成(39)
95 同 銀(26)
96 5三飛(51)
97 6五歩打
98 5八成桂(47)
99 6四歩(65)
100 6九成桂(58)
101 同 金(79)
102 6八歩打
103 同 金(69)
104 6七歩打
105 同 銀(78)
106 5九飛成(53)
107 6九金打
108 3九龍(59)
109 6五香打
110 4七角打
111 5九歩打
112 3八龍(39)
113 4八歩打
114 6五角成(47)
115 同 銀(66)
116 5五馬(19)
117 7七桂打
118 6六歩打
119 8六桂打
120 7三金打
121 5六銀(67)
122 6七香打
123 5五銀(56)
124 6八香成(67)
125 7四桂(86)
126 同 金(73)
127 同 銀(65)
128 7八金打
129 同 金(69)
130 同 成香(68)
131 同 玉(89)
132 4八龍(38)
133 5八香打
134 6七金打
135 8八玉(78)
136 5九龍(48)
137 7三角打
138 同 銀(72)
139 8三銀成(74)
140 同 玉(82)
141 8四金打
142 同 銀(73)
143 7四金打
144 8二玉(83)
145 投了
まで144手で後手の勝ち

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20170706今日の一手(その535);筋の良い手を心がける

2017-07-06 | 今日の一手
20170706今日の一手

整理が追いついていないので、しばらく古い将棋です。2014年11月の名南将棋大会から、私とMさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。


一昨日の一手の回答
仕掛けから見てみます。

先手は平美濃(いわゆる飯島流引き角戦法、と飯島先生は主張するのですが、何が飯島流かわかりません)この戦法は美濃囲いに囲うために57に角を移動するのが難点で、角頭を狙われやすいです。また、駒組み完成まで手数がかかるので、振り飛車の迎撃態勢が整ったところで仕掛けることになり、よい戦法だとは思えません。46歩に55歩と返され、早速角頭を狙われました。
55同歩44銀75角32飛

この場合は75角と先手を取って逃げられるので悪いということもないようです。45歩55銀54歩64銀

66角55銀75角64銀では千日手。57角65銀に24歩同歩同角と攻めて互角の戦いでした。実戦は64同角同歩41銀

こういうのは筋が悪い、あるいは俗手だ、と言われるのです。それがイコール疑問手というわけでもないのですが、後手玉が薄くなる代わりに手駒を与えます。後手の守備力が下がり、攻撃力が上がるわけです。

41銀よりは44銀

のほうが良かったようで、44同角同歩は先手十分。42角に24歩同歩53歩成同金同銀成同角24飛

が自然な応手で、21飛成と43金があるので先手よし。自然に進んで先手よしなら44銀で指しやすいだろう、ということがわかります。

戻って41銀から

42飛52銀成同飛24歩同歩

で問題図です。

☆ 形勢判断をします。
角金交換で先手の駒損です。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は28飛と持ち駒金で2枚。
後手の攻め駒は33角と持ち駒角銀で3枚。

総合すれば後手が指しやすいです。

☆ 大局観として
形勢を改善するなら
駒損を回復する
攻め駒を増やす
どちらかです。玉を固めるのは悪手ではないけれど、駒損で長期戦ということになりかねないので、次第に形勢が悪くなります。

金で両取りをかけるのが見えますよね。それでよいかどうか。持ち駒の金を角と交換すると駒損はほぼなくなり、玉の堅さで優っているけれど、後手の攻め駒が3枚、飛を使われたら4枚になります。せいぜい互角、まだ後手が良いかもしれません。
ですからもう少し工夫が必要です。なるべく条件をよくして駒損を回復したいのです。

攻め駒を増やす、ということで24歩同歩の突き捨ては好手です。これを入れないで金を打って角を取ったら悪いでしょう。あとは37銀や29桂を使って・・・と考えるところですが、先は長いですね。つまりは角を切って後手陣を薄くしたというのは時期尚早だったということなのです。


× 本筋としては46銀と使うのですが

39角27飛54飛44金

44同角同歩同飛45歩54飛22角

こんな感じに進めばまあまあには見えるのですが、後手の攻め駒はもう4枚ありますね。強く58飛成同金56金

が受けにくいし、寄せ合いに持っていくこともできません。これは困っています。
1手溜めると、後手の54飛の味が良い、というわけです。


× 実戦は43金と打ったのですが

54飛33金同桂43角53飛34角成

馬を作って駒得になってまあまあ、ではないです。やはり後手の攻め駒は4枚なので、25桂と跳ねて46銀に39角

と打たれたら後手優勢に近かったです。28飛を逃げるところに困りますし、5筋も破られそう。例えば26飛57歩68金寄56飛35歩47金

という進行です。勝負になりません。

実戦ではここから

57歩68金寄58金

と攻めたのですが単調です。44馬69金同金56飛66金58歩成

これを同飛と取ったのが敗着で、金で取れば難しい形勢でした。58同飛同飛成同金57歩

攻め駒4枚でこんなところに歩を打たれたら受けようがありません。


○ 44金なら

これも筋が良いとは言えませんが、とりあえず54飛は防いでいます。44同角同歩54飛43歩成
は と金得で、後手の攻め駒は4枚ですが24飛からの攻め合いも望めるので形勢は互角です。

44金に62銀と受けたとしたら

角を取って飛をさばこう、なんて考えずに、じっと46銀

が本筋です。


△ 53金も筋が悪いようですが

51飛に44歩42歩22歩

抑え込めればちょっと指しやすくなります。

44歩に同角

が普通で、24飛57歩68金寄47角

は少し先手が指しにくそうですが、後手も飛を抑え込まれていて互いに難しいです。


○ 44歩は筋が良くて

44同角に24飛33桂53金

51飛には23飛成

で飛を抑えて竜を作っています。45桂と使われるのが難点ですが、右銀が働きだすということもあります。

53同角なら同歩成同飛22飛成。

これは攻め合いになるので玉が堅いのと攻撃力が高いのとどちらがよいか、ということで形勢互角です。

44歩に42歩と受けたら

53金51飛22歩

としてもよいですし、

53金を入れないで22歩54飛21歩成

でも56歩48銀57銀に45金51飛11と

から54香を狙っても互角の形勢です。45金というのが飛角を抑える手になります。


☆ まとめ
やはり形勢互角の時に筋の悪い手というのは指さないほうが良いです。
筋の悪い手、という定義は難しいですが、効率の悪い手、という言い換えはできそうです。

問題図に至る前に、角で64の銀を取って41銀の割打ち、というのは筋が悪いのです。駒損でも敵玉を薄くしていますから、悪いというほどでもないですが、その後の攻撃力不足が心配です。

問題図では
43金は駒損を回復できるので少し「効率が悪い」という意味が薄れますが、後手から見たら角金銀をさばいた、さらに飛と左桂が働きだした、ということになります。

44から金を打てば、角取りと と金作りの両狙い。44同角同歩の形は左桂を使わせていない分だけ優ります。そのため24飛が可能なので、攻め合いも望めます。

もう少し筋が良いのは44歩と突きだす手で、同角には43金ではなくて(これは44同飛まで強制できるのでやや得だが)、24飛とさばくのが正しいわけです。

形勢がやや良い、というくらいまでは筋の良い手(=効率の良い手)を心がけたいです。
形勢がはっきり有利になってくると、俗手の好手、と呼ばれる、やや筋が悪いけれども確実な手が良い手になる場合もあります。
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