20161013今日の一手
9月24日の名南将棋大会から、NさんとOさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは同程度。先手は金銀3枚ですが、17銀がある分だけ堅いとも言いづらいです。
先手の攻め駒は88飛と持ち駒角銀で3枚。
後手の攻め駒は55銀と持ち駒角銀で3枚。
総合すれば互角です。
大局観として
相振り飛車で互いに金無双(2枚金)というのは(私には)堅いとは思えません。先手は盛り上がろうと47金左の形を作ったわけですが、矢倉(片矢倉や流れ矢倉などを含めて)にならない47金の形にしても悪い形が解消されません。一番の弱点である46の地点を狙われて、ゆっくりできない状態です。
代わりに棒銀で93にいた銀と左銀を交換したのはプラスではあるわけですが、それが得だという主張をするためには、攻撃続行できるか、その攻撃を避けるために相手にだけ交換した銀を打たせるか、といったことにつながらないといけません。
まずは何か待っていたら悪くなるか、という相手のねらいを考えます。それが問題ないのならなるべくよい形にしておいて待っているのもよいでしょう。
この場合はそれでよいとは思えないので、受けるか、先攻するか、という分かれ目です。主張できるのは相手が歩切れだということ。そのために17銀とか47金左の形を作ったのです。変化を考える中で、相手の歩切れが利いてくる順を考えましょう。
× 何か待つ手を見てみます。75歩としてみます。
15歩から1歩手に入れて45歩同歩46歩という筋があります。(45歩同歩15歩同歩同香16歩46歩)
56金同銀同歩47銀同金同歩成同玉79角
これは後手優勢です。
また、歩が手に入らないとしても、45歩同歩46銀打
という攻め筋もあります。58銀45桂46金同銀47歩79角
と強攻されて、78飛57銀成79飛48成銀同玉68金
というのも受けきれません。
× 自然な56歩は46銀同金79角
で馬を作られて悪い、というのはすぐにわかるでしょう。
△ 手堅く受けるなら56銀と打ちます。
45歩には55銀同歩45歩
79角78飛88銀と絡まれる筋もあるので嫌ですが、まだ互角でしょう。
56銀に同銀同金55銀47銀
というのは千日手。
まあつまらない指し方ですが、ほかの手がないならこういう手でしょう。
× 95歩と攻めて
95同歩93歩同香92銀
82銀91角84角
82角成同玉83銀成同玉75銀
みたいになれば指せないことはないのですが
95歩同歩93歩のあたりで45歩
から攻められると厳しさが違います。1歩渡すだけでまずいのです。
○ ということで、実戦は84歩と合わせました。通常の第一感だと思います。
84同歩同飛83歩54飛64銀66角53銀打56飛78角
横歩を取って銀を引かせた後どうするのかわからなかったのですが、この進行は失敗している感じです。95歩67角成94歩55歩
55同角同銀同飛77馬35飛45歩
馬が存分に働いて後手が優勢です。
途中54飛64銀の時に51角
という見えにくい手がありました。33角成があるし、角も取りにくい。42銀同角成同金51飛成52金左11竜
くらいでしょうか。まだ後手は歩切れなので56香を受けにくいです。82歩同玉71銀もあります。攻め駒4枚なので十分でしょう。
他には53銀打ですが、33角成
飛車の取り合いというわけにもいかず、21飛56飛88角32馬71飛65桂
というのも後手の歩切れで攻めが続く形です。
△ 最後は65角
83角成を防ぐために82銀なら84歩同歩同飛83歩54飛
64銀52飛成同金32角成
と強攻します。後手は壁銀ですし33桂も助けにくいので先手が指せそうです。
74銀と受けられたら
54角は45歩がぴったり
なので74同角同歩84歩同歩同飛
73金は61銀71玉72銀打同金52銀成
とうるさい攻めが続きます。
83歩と受けたら74飛
73桂しかなく、85桂64銀75銀
と打てばこれもうるさい攻めです。
74角と合わされると
74同角同歩84歩同歩同飛83銀88飛84歩
これが一番大変そうで、56銀同銀同歩でしょうか。後手玉が堅くなりましたが銀を使わせたので互いに陣形整備ということになりそうです。
☆ まとめ
そのままでは攻められて悪い、というのは作戦負けの感じがします。56歩と突いても銀を追い返せない、自然な手では悪いのですからやはり47金左の構想が悪かったというとこでしょう。
けれど、横歩を取って強攻するというのが55銀をとがめているわけで、この筋を考えることになります。51角は見えにくいと思うのですが、いかがでしたか?
65角で82銀と打たせて横歩が取れれば条件がよく、飛車を切っても攻めが続けばよいです。ですから得になるかどうか検討するわけですが、74銀は強攻できます。74角は落ち着きそうで、これは互角か。
近年は攻めの技術が発達したといいますが、新しい攻め筋が見つかったという意味や、少し無理そうな攻めでもやってみれば案外手が続くのだ、という発見があったということでしょう。定跡の進化というのもそういう流れのなかでとらえるべきかと思います。
より読みが有効になる率が高くなったということになるのかもしれません。(私は読みが不得意なので)困ったものです。いろいろな手を考えてみるという習慣をつけようと悪戦苦闘しております。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/46/c7c5a764cbfe66ce65f10662dc1b0879.png)
大山先生の四間飛車に高島先生は玉頭位取りです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/95/3725f6c47e77ef616b2aceef08a62fdc.png)
大山先生は石田流に組み替えて
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/c0/e75f5c7ee59faa67b7c05c5dac3d4b01.png)
互いに58金41金と離れているうちに仕掛けたのが大山先生の感覚の良さです。実は先手の78金から88玉が危険で、68金左と1手で済ませて65歩から角筋を通しておかなければなりませんでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/e8/4404e0675f99166d5a8e120fa08ba05d.png)
ここで65歩と67金右の2手を指したいところ。38飛成に37飛とぶつけて居飛車も指せます。大山先生の仕掛けが機敏でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/e7/e3948ca64d05f16757b249dd47aedf8b.png)
37歩と打たざるを得ず、大山先生の手が間に合っています。ゆっくりした攻めですが確実。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/bd/a27d0e04f97e056c7c8e3d705b683941.png)
高島先生はどこかで争点を作らねばなりません。角をぶつける準備をして
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/ca/8f40db232c09e966f3a200acc6c7037e.png)
大山先生は確実に攻めて焦らせます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/9f/3cc3c90d39f7b57785eaa5f32cf6a34f.png)
高島先生は角交換で勝負
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/5b/d0f7dda0586f9b448ea3c1851a4ee192.png)
でも飛車を取られそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/86/ab49edd186cd6d3078402e9883d182cf.png)
王手飛車で飛車を取り返しましたが
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/72/8807b691e85975f1d18b54a5b988cd97.png)
飛車打ちが先手です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/f9/4c8496409e55e8e12590f9a25dd136a0.png)
角を切って攻めますが
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/c7/0389ef6e8d2cd81a22d89a6f2bc3f910.png)
大山先生としては飛銀だけの攻めなので すそ空きでも平気
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/15/3ae0712a7a1ae7d22cf9d3e44d99b7ca.png)
早いですが投了図。
大山先生の快勝です。玉頭位取りは組み上げるまでに神経を使います。間違えるとこうなるという見本でした。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:高島弘光7段
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4二飛(82)
9 6八玉(59)
10 6二玉(51)
11 7八玉(68)
12 7二玉(62)
13 6八銀(79)
14 8二玉(72)
15 9六歩(97)
16 9四歩(93)
17 5七銀(48)
18 4三銀(32)
19 7五歩(76)
20 3五歩(34)
21 2五歩(26)
22 3三角(22)
23 7七銀(68)
24 3二飛(42)
25 1六歩(17)
26 4二角(33)
27 2六飛(28)
28 5四歩(53)
29 7六銀(77)
30 3四飛(32)
31 5八金(49)
32 7二銀(71)
33 6六歩(67)
34 6四歩(63)
35 7七角(88)
36 3三桂(21)
37 8八玉(78)
38 5三角(42)
39 7八金(69)
40 3六歩(35)
41 同 歩(37)
42 4五歩(44)
43 2七飛(26)
44 3六飛(34)
45 3七歩打
46 3四飛(36)
47 6七金(58)
48 2四歩(23)
49 6五歩(66)
50 2五歩(24)
51 6四歩(65)
52 同 角(53)
53 8六角(77)
54 5二金(41)
55 6六銀(57)
56 3八歩打
57 7七金(67)
58 3九歩成(38)
59 6五銀(66)
60 5三角(64)
61 7四歩(75)
62 同 歩(73)
63 1七桂(29)
64 8六角(53)
65 同 歩(87)
66 4九角打
67 2八飛(27)
68 3八と(39)
69 2七飛(28)
70 3七と(38)
71 同 飛(27)
72 同 飛成(34)
73 6四角打
74 7三桂(81)
75 3七角(64)
76 3八飛打
77 7三角成(37)
78 同 銀(72)
79 3一飛打
80 6二金(61)
81 8五桂打
82 6四歩打
83 6三歩打
84 同 金(52)
85 7三桂成(85)
86 同 金(62)
87 6一飛成(31)
88 4四角打
89 投了
まで88手で後手の勝ち
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/d9/ac91e886d450859baca293ddd1c757b4.png)
どちらが振るかという序盤で、内藤先生が三間飛車に。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/a4/b666970c69c4c7019b2f6c4fe847371f.png)
さらに穴熊です。これは玉頭位取りに逆らわないという考えですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/a2/72d2b5ee941084de4a73cf156638f346.png)
大山先生はいつものように7筋の歩交換をさせて
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/ea/1d8f9762887604b8fbcfd74cf70511ea.png)
角をぶつけます。これはわかりやすい指し方です。まねしやすそう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/df/e594bcaff92f35eddf688156e42c40bb.png)
72飛で歩を謝らせました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/f4/79bc1f6c51b911d70a06b3c23533b3a6.png)
あとは互いに固く囲ってそろそろ戦いが始まります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/19/1d589d0434bb592f1ae778d75cbd5277.png)
内藤先生は7,8筋から動き、大山先生は5筋から軽く飛車をうきます。96香に当たっています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/8e/264155cd8ec6c2288f8338bcdacc52e8.png)
内藤先生はやむなく角を切って飛車を成り
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/0f/1d9f3916487e7d4b438c96bbb3d3155d.png)
大山先生は馬を作って香を取ろうとします。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/fe/7edffdf345b28165c1867e88f7531ad8.png)
内藤先生は3筋を工作して
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/c8/a5d9d80fb92c8fcc44f16c5cd101a516.png)
先手で桂を取り77桂を逃げ出します。これでうまくいったのかと思ったら
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/68/0d0e48c4131f9b43ead75dc36f45e620.png)
香を据えられてみると玉頭攻めが強力すぎます。大山先生が有利です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/bd/22d7e288286506fca83035cdbc5d2a61.png)
馬は自陣に引いてから
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/0a/65f5092dd1a55f203e6e67c717740c5f.png)
2筋を攻めます。34歩は無視。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/72/a2035b5eb0c83e6a247a6fc6923d0e65.png)
飛車取りも気にしなくてよいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/c2/5b2f544d2214d8cb05e46c2ecfd53aa1.png)
これで筋に入ってしまいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/4d/d6f0f125a7f5069631e5d7d2b7afd119.png)
内藤先生は一応受けてみますが
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/40/23c7ca169c047f30fbb34d9d6393606b.png)
受けにならず。
大山先生の快勝譜。56飛と浮いたあたりで有利なのでしょうが、振り飛車から見ているせいか気が付きにくいです。内藤先生は3筋の工作で角と銀桂の2枚換えのような展開でしたが、玉頭の攻めがより強烈になり、気が付けば斬られていたという感じです。
この大山先生の指し方は真似がしやすそうで、振り飛車穴熊は怖くない、という気がしてきます。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:内藤国雄9段
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 9六歩(97)
4 4四歩(43)
5 6八銀(79)
6 3二銀(31)
7 6六歩(67)
8 4三銀(32)
9 6七銀(68)
10 3五歩(34)
11 7五歩(76)
12 5四歩(53)
13 7八飛(28)
14 6二銀(71)
15 4八玉(59)
16 4二玉(51)
17 3八玉(48)
18 3二玉(42)
19 2八玉(38)
20 1四歩(13)
21 5八金(69)
22 4五歩(44)
23 1八香(19)
24 5二金(61)
25 1九玉(28)
26 3三角(22)
27 2八銀(39)
28 2二玉(32)
29 3九金(49)
30 3二金(41)
31 4八金(58)
32 8四歩(83)
33 7六飛(78)
34 3四銀(43)
35 7七桂(89)
36 4三金(52)
37 9七角(88)
38 1五歩(14)
39 7四歩(75)
40 同 歩(73)
41 同 飛(76)
42 7三歩打
43 7六飛(74)
44 2四歩(23)
45 6五歩(66)
46 4二角(33)
47 8八角(97)
48 7二飛(82)
49 5六歩(57)
50 3三桂(21)
51 7五歩打
52 5三角(42)
53 9五歩(96)
54 4四角(53)
55 5八銀(67)
56 5三銀(62)
57 4九銀(58)
58 5五歩(54)
59 同 歩(56)
60 同 角(44)
61 9六香(99)
62 4四角(55)
63 9七角(88)
64 2三銀(34)
65 3八銀(49)
66 2五歩(24)
67 8六歩(87)
68 4二銀(53)
69 8五歩(86)
70 5二飛(72)
71 7四歩(75)
72 同 歩(73)
73 同 飛(76)
74 5六飛(52)
75 4二角成(97)
76 同 金(32)
77 7二飛成(74)
78 5七歩打
79 5九歩打
80 3二金(42)
81 7八歩打
82 8七角打
83 3六歩(37)
84 同 歩(35)
85 8四歩(85)
86 7八角成(87)
87 3四歩打
88 同 銀(23)
89 8一龍(72)
90 7一歩打
91 8五桂(77)
92 9六馬(78)
93 7三桂成(85)
94 2三香打
95 9一龍(81)
96 8六馬(96)
97 9二龍(91)
98 3一馬(86)
99 6三成桂(73)
100 2六歩(25)
101 同 歩(27)
102 2五歩打
103 3五歩打
104 同 銀(34)
105 3四歩打
106 2六歩(25)
107 3三歩成(34)
108 同 金(43)
109 4六歩(47)
110 同 飛(56)
111 5七金(48)
112 6二歩打
113 同 成桂(63)
114 2七歩成(26)
115 同 銀(38)
116 同 香成(23)
117 同 銀(28)
118 4八銀打
119 3四歩打
120 3九銀(48)
121 3三歩成(34)
122 同 金(32)
123 6三成桂(62)
124 6二歩打
125 3八金打
126 2八金打
127 同 金(38)
128 同 銀成(39)
129 同 玉(19)
130 4八飛成(46)
131 3八歩打
132 3七金打
133 投了
まで132手で後手の勝ち
20161011今日の一手
9月24日の名南将棋大会から、SさんとAさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
先手が3歩損で馬を作っています。持ち歩があるので歩はカウントせず、先手が少し駒得です。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は34馬と持ち駒桂で2枚、37飛も入れてよさそうなので3枚です。
後手の攻め駒は持ち駒桂1枚。
総合すれば先手が有利です。
大局観として
形勢判断の3つの要素すべてで先手が上回っていますが、どれも少しだけのリードです。形勢がよいので自然な手を重ねていけばよいです。
持ち歩が1つしかないのですが、3,4,5,7筋に使えるので攻め筋は豊富ですから攻めることを考えます。逆に受け中心では76歩に傷がありますし、後手の攻め駒が働いてきそうです。
今は駒がぶつかっていますから馬の処理を考えるわけですが、駒損になるからと逃げるだけはなく、攻めにつなげる手を選びましょう。馬を捨てても攻めが続けばよいわけです。
○ まずは馬を逃げる手。2か所ですが56のほうが良さそうです。
83馬と24歩の両にらみです。76歩68銀13銀83馬に73銀くらい。
こういう時にノータイムで飛車を取って21飛と思ってはいけません。(それでも悪くはないのですが)75桂が痛打ですね。62飛63桂成同金72歩61飛56馬
駒得が広がりましたから決めるだけ決めて馬を引いておきます。歩切れですがこれなら文句はないです。
後手が76歩68銀を決めなければ75桂はありませんが、74歩は打てます。
74同銀に72馬同角71飛61角打84桂
と打てばこれも楽勝です。
74歩に82銀が最善で、これが難しい。飛車を取って21飛かもしれませんが角を渡すと28角があるので、84馬74角56桂53金75銀
というほうを勧めます。角を引けば74歩から85馬という要領、83銀には73歩、73銀には同馬同飛62銀です。
× 実戦は24歩でした。
34歩に61銀82飛52銀成同玉
敵玉が広くなって、馬を失っては攻めにくいです。飛車が働くならまだよいのですが。23歩成同金55歩76歩同銀86歩
後手の攻め駒が多すぎて受ける手段がありません。
工夫としては61銀ではなく53歩ですが42金右
で続きません。
33歩同金45桂は24金
これも歩切れでたいした攻めがありません。
○ 銀と交換するなら23馬のほうが手筋で
23同金24歩34金23歩成
これなら4枚目の攻め駒ができます。28角47飛19角成にも35歩44金33と
という調子です。これは飛車も使えそうです。
後手は と金を作らせないように22金と引くのですが、53歩とたたきます。
もう1歩あるのが心強く、53同金45桂となれば優勢、42金とかわして52銀同金同歩成同玉53歩
前の変化では(割打ちで1歩省略したとはいえ)ここに打つ歩がありませんでした。取れないので42玉(か62玉)に83金74飛84金同飛75銀
としてしまえばこれも優勢。後手の工夫は考えられますが、先手の攻めも相当に続きます。
○ 先に53歩とたたくのも有力で
馬を取れば金銀を取って2枚換えです。53同金は後で(23馬からの変化)45桂が利きます。42金右と逃げたら45馬
13銀に55桂75角54馬82飛63桂成51歩64馬
と攻められます。
後手は角にひもを付けておかなければいけないので62金です。
ここで23馬同金24歩34金には26桂
28角にも34桂が詰めろなので優勢でしょう。
やはり24歩には22金なのですが
すぐに23馬の変化で53歩に62金と限定させているのでより攻めやすいです。35桂28角47飛31桂23歩成
で決まっています。
× 42歩も指してみたいですが、42同玉
で後続がありません。
☆ まとめ
自然な手を心がけると56馬から83馬を思いつくでしょう。これで有利なのは間違いないですが、次に飛車を取ると駒得は消えます。21飛から香をとれても後手も28角から香をとれるので駒得にはなりません。飛車を取る前に75桂が打てれば75桂、打てなければ74歩を考えてみましょう。
馬で飛車を取ってもつまらない、とKさんは攻める手を考えて24歩と銀を取ったのですが、34歩23歩成同金の形に隙がありませんでした。銀の割打ちも玉を逃がして安全にさせるだけ、大駒を切ったら性能の良い駒が減るわけですから、上から攻める形にしたいのです。
23馬同金24歩と進めるほうが厳しく、その24歩が残ります。金を上にかわせば23歩成、22金には23銀とかぶせてもまあまあ指せますが、2歩と銀桂を持っているので53歩が厳しい寄せです。金を持ったら最悪83金があるので何とかなりそうです。
23馬の前に53歩とするのがさらに厳しそうです。63角にひもが無くなれば45馬があり、でも取れないので62金と利かせれば攻めやすくなります。
結局は馬を何と交換するかということになるわけですが
72飛と交換するだけではつまらないです。もっといじめることを考えましょう。
24銀と単純に交換するのでは損です。
銀と持ち歩と24歩の拠点、3つとの交換ならよいでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/bb/9c885736dfdf3ee6f8958be835d2218b.png)
大山先生の先手三間飛車に二上先生は急戦の構え
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/bf/7d99ed22af468e2688a7e3673bf5eae4.png)
それをみて大山先生は備えつつ中央に目を向けます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/d2/98d2756655910754c26fa202c52a43ec.png)
5筋の歩を交換します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/45/64d7a3576b8f91345d8e787d1de21645.png)
二上先生も少し主張しますが
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/05/00fc6d11704ad01e55c02c8b4383aabc.png)
位を取り返させても43金右の形、二上先生は好きですね。位のほうが大きいと思うのですが、こだわりがあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/01/7e9fdbad08f10a01147cbcb246369252.png)
じっとしていないで仕掛けます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/e2/9c9f5a5e1adadb60acea10568d859ea5.png)
しばらく互いに取りませんでしたが、二上先生から。でもこのタイミングがどうだったか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/ec/e9efaace6d92bccf83204d2b405bd078.png)
角を交換して馬を作ります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/56/3ca0427f9ad61738be298a92c45dea5f.png)
でも44歩の突き出しが取れません。そのために81飛と待ったのだと思うのですけれど、取れないなら失敗です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/80/f168f2448db9190eaf7e6b9a984a774f.png)
大山先生は自陣角も打って拠点を作り、桂馬をさばきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/43/47bd0ddd8dfa256001c3335d410539b7.png)
二上先生は何とか耐えようとするのですが
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/15/c6de838f46211025f661d0189b2fc41e.png)
大山先生は金を出て3,4筋を目指します。二上先生は と金つくりと馬の活用が間に合うか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/03/222ba4952ebc986475a7b24b4e95d91d.png)
ここからが大山先生の寄せです。歩の手筋で6,7筋を乱して
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/a5/feaf121b20364971dae4c0de316ffe22.png)
角を切って寄せを目指します。これを防ぐ手がありません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/69/126628daf6ff49a8379a1106714e153a.png)
4枚の攻めで拠点もあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/46/2abeda241c01a850d5e056cd379491d1.png)
飛車を切って63角でもよさそうですが、手堅く歩を打って
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/7e/60fb417b7a39025c5540dd22895fe636.png)
上から抑え込む寄せです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/ec/225d7cb4b1a49c736406e121cb593590.png)
投了図。
二上先生は大山先生相手だとどうしてこういう指し方になるのか不思議です。耐えているだけで一方的に終わりました。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山棋聖
後手:二上達也9段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八飛(28)
4 8五歩(84)
5 7七角(88)
6 3四歩(33)
7 6六歩(67)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 5二金(61)
15 2八玉(38)
16 5四歩(53)
17 3八銀(39)
18 7四歩(73)
19 5六歩(57)
20 9四歩(93)
21 5七銀(68)
22 4二銀(31)
23 5八金(69)
24 6四歩(63)
25 6七金(58)
26 5三銀(42)
27 4六銀(57)
28 4二金(41)
29 5八飛(78)
30 6三銀(62)
31 5五歩(56)
32 同 歩(54)
33 同 銀(46)
34 5四歩打
35 4六銀(55)
36 4四歩(43)
37 5七銀(46)
38 4五歩(44)
39 4六歩(47)
40 同 歩(45)
41 同 銀(57)
42 4三金(52)
43 4五歩打
44 1四歩(13)
45 1六歩(17)
46 7三桂(81)
47 3六歩(37)
48 8六歩(85)
49 同 歩(87)
50 6五歩(64)
51 4八飛(58)
52 8一飛(82)
53 2六歩(27)
54 6六歩(65)
55 同 金(67)
56 6五歩打
57 5六金(66)
58 7七角成(22)
59 同 桂(89)
60 6七角打
61 5七銀(46)
62 7六角成(67)
63 4四歩(45)
64 3三金(43)
65 3七角打
66 6二銀(53)
67 6四歩打
68 7二銀(63)
69 8五桂(77)
70 同 桂(73)
71 同 歩(86)
72 5二桂打
73 4五金(56)
74 6六歩(65)
75 7三歩打
76 6一銀(72)
77 6三歩成(64)
78 同 銀(62)
79 6四歩打
80 同 桂(52)
81 2五桂打
82 2四金(33)
83 4六角(37)
84 5五歩(54)
85 2四角(46)
86 同 歩(23)
87 3四金(45)
88 5四銀(63)
89 4三金打
90 同 銀(54)
91 同 歩成(44)
92 同 金(42)
93 同 金(34)
94 同 馬(76)
95 4四歩打
96 6五馬(43)
97 3四銀打
98 4七歩打
99 同 飛(48)
100 4二歩打
101 3三金打
102 4一玉(32)
103 4三歩成(44)
104 同 歩(42)
105 同 銀成(34)
106 5一玉(41)
107 5三成銀(43)
108 投了
まで107手で先手の勝ち
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/7a/c00316f8e754abb68dbfd6c04f542775.png)
大山先生の四間飛車に米長先生は玉頭位取りの予定
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/7b/67d24a515bfb861db3ae4185367f405d.png)
でしたが、位取りを拒否されました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/5b/410aa5895c0584dda92a692f0669aaa5.png)
米長先生は黙っている棋風ではなく、とがめようとします。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/ce/ea7b0f41ff9644aca822006da2185f0f.png)
74に拠点を作りました。でもこれは保てません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/cb/4c93f8b86a0b3a62af1ba86a5096d0f9.png)
これで拠点は消えて
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/69/c295486db3c5dc8ef2f7cb29312f5350.png)
5,6筋の位を取ったということになります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/70/223a0eed04fcc4f07727e14d3afb4ddc.png)
これで67銀とすればよい形。大山先生から動きます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/ec/507dc10314b541b90a84f86854595d7a.png)
85歩(84銀と出たい)同金93桂、金を引くと84銀から7筋を攻められます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/9c/87e175791081fe5269d0f494a9b2c8ac.png)
角をぶつければ軽くかわして、大山先生がうまく指している感じです。金取りが忙しいですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/7b/f7cc44422d60970132deb2397c9b374c.png)
54歩と突きだして飛車交換(52歩と謝ると歩がなくなるので77桂か)から角を成って
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/3a/de27861bc939aee9142ee729b419eddb.png)
銀を交換して互角のさばき合いです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/db/6581d48bc656b6216721908c67bba194.png)
銀を投入してみると、金銀の連携で大山先生のほうが堅いです。だから少しリードしているのでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/1d/22a7c09b9c2c84c15d185f7c59052333.png)
あとは駒のはがし合いで
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/ac/35edd8ebc554f507d772957d07df1af3.png)
互いに桂馬で金銀をはがします。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/52/d23f1fb9a73927cb794a125eeb2afde5.png)
馬が消えて、大山先生の有利が拡大しました。この時22飛の位置も悪く、王手飛車の筋があります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/7f/291d537ae8766ba2fb0d0b28d5b1b8ae.png)
そのため23飛成と一手緩めるのがつらいところ。大山先生は攻め駒が4枚ありますからどう寄せるかだけです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/c4/2755b3bf8da2b5afd1190dc7f05a4c22.png)
48の馬を57に引いて、格好いい寄せです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/01/f9981d397a583d92d20c7f79e6b16ab8.png)
米長先生も粘ろうとしますが、竜も馬も取れないのでは望みがなく
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/cd/06f7fa5473405d5cbfa3883de4789c10.png)
大山先生はきれいに寄せてしまいました。
大山先生の快勝譜、大優勢というわけではないけれど、小さな有利を保って、最後はきれいに寄せてしまいました。米長先生の敗因は難しいです。飛車の打ち場所一つで違いそうですし、玉頭の関係でどの形がよかったか。大山先生をほめておくほうが良いのでしょう。この時代の棋譜を並べるなら大山米長戦が一番面白いです。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:米長邦雄8段
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 6八玉(59)
8 4二飛(82)
9 7八玉(68)
10 6二玉(51)
11 5八金(49)
12 7二玉(62)
13 9六歩(97)
14 9四歩(93)
15 5六歩(57)
16 8二玉(72)
17 5七銀(48)
18 4三銀(32)
19 6八銀(79)
20 7二銀(71)
21 6六歩(67)
22 5四銀(43)
23 7七銀(68)
24 7四歩(73)
25 6七金(58)
26 5二金(41)
27 7五歩(76)
28 同 歩(74)
29 8六銀(77)
30 8四歩(83)
31 7五銀(86)
32 8三銀(72)
33 7四歩打
34 7二金(61)
35 2五歩(26)
36 3三角(22)
37 7六金(67)
38 6二金(52)
39 6五歩(66)
40 7三歩打
41 同 歩成(74)
42 同 金(62)
43 5五歩(56)
44 4三銀(54)
45 6六銀(75)
46 7四歩打
47 7七角(88)
48 3二飛(42)
49 8八玉(78)
50 3五歩(34)
51 1六歩(17)
52 4二角(33)
53 2六飛(28)
54 5四歩(53)
55 同 歩(55)
56 同 銀(43)
57 5五歩打
58 4三銀(54)
59 5六飛(26)
60 3一飛(32)
61 7八金(69)
62 5一飛(31)
63 6八銀(57)
64 8五歩(84)
65 同 金(76)
66 9三桂(81)
67 8六角(77)
68 3三角(42)
69 5四歩(55)
70 同 飛(51)
71 同 飛(56)
72 同 銀(43)
73 5三角成(86)
74 4五歩(44)
75 5四馬(53)
76 6六角(33)
77 7七銀打
78 4八角成(66)
79 8六金(85)
80 2八飛打
81 6四歩(65)
82 同 歩(63)
83 2二飛打
84 6三銀打
85 2一馬(54)
86 8五歩打
87 7六金(86)
88 2九飛成(28)
89 5五桂打
90 7五歩(74)
91 6三桂成(55)
92 同 金(73)
93 6六金(76)
94 7六桂打
95 同 金(66)
96 同 歩(75)
97 同 馬(21)
98 6五金打
99 同 馬(76)
100 同 歩(64)
101 6四歩打
102 7三金(63)
103 2三飛成(22)
104 6六桂打
105 7九金(78)
106 7六歩打
107 同 銀(77)
108 5七馬(48)
109 5九歩打
110 同 龍(29)
111 6九金打
112 7八歩打
113 5九銀(68)
114 7九歩成(78)
115 5一飛打
116 7八桂成(66)
117 投了
まで116手で後手の勝ち
20161009今日の一手
9月24日の名南将棋大会から、KさんとYさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
少し前から。
もとは四間飛車に64銀の急戦で(なぜかこの日は流行していました)、後手は右銀で46の歩を取った分だけ攻めが遅れて桂頭を攻められてピンチ、とりあえず57に歩を成り捨てて桂を逃げた、という局面です。
ここで73歩成57桂成同角93飛と進んで問題図
なんですが、いじめるつもりだった桂馬と守りの金を交換するというのがつまらないと思いませんか?58金は57歩が嫌ですが、66か56に金をかわせばよいものだと思うのですが。
まあそれはともかく、問題図です。
☆形勢判断をします。
金と桂歩の交換で先手が と金を作っています。持ち歩があるので歩はカウントしませんが、やや先手の駒得です。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は57角73と と持ち駒桂で3枚。76の飛車も働きそうではあります。
後手の攻め駒は持ち駒金1枚。
総合すればやや先手が指しやすいです。
大局観として
先手が劣っているのは玉の堅さだけです。でも現状は後手の攻め駒が少ないですから問題はないです。方針は二つで
玉を固めつつ待つか
攻め駒4枚で後手玉に迫るか(後手玉を薄くする)
ということを考えます。もっと駒得にするというのは逆転される元になります。方針に沿って考えましょう。
攻める方から考えてみます。
× 実戦では93角成だったのですが
攻め駒ではなかった飛車を攻め駒の角と交換することになります。後手の攻め駒が増えるだけですから、好んでやりたい手ではないです。
93同香82飛51金寄62と同金寄54桂
両取りですがこれでも駒得にはなりません。53銀62桂成同銀72飛行成45角
この図では後手玉が少し薄くなりましたが、駒の損得はほぼなくなり、先手の攻め駒は3枚です。後手の攻め駒は22角を除いて3枚あります。ですからこの局面での形勢判断はほぼ互角です。
少し進んでこの図
53に銀を打った局面だと思うのですがこれでは攻めが遅く、55角46金66角52歩49角成
であっさり寄せられてしまいました。
73の と金と持ち駒の桂を使って金1枚とっただけ、飛車を成っても3枚の攻めにしかならなかったというのが問題でした。寄せられないのなら遊んでいる飛車を取って相手の攻め駒を増やしてはいけません。
× 26桂は手筋ですが45銀
で効果はありません。端攻めもないですし、45銀がなくても33角という受けもあります。ほかの変化にプラスして出てきそうなので先に書いておきます。
△ 62とと捨てる手は
62同金71飛成61歩
ここで54桂として、93飛を取っていない分だけ実戦より良いのですが、ぱっとしません。まあ互角ですね。
ところで問題図をひっくり返して
この図で居飛車側を持てば48と同金39飛成というのは気になる手なのです。でも底歩を打って頑張れそう、金も持っているし安心、と確認しておく手なのでしょう。(感想戦を見ていて居飛車側から見ると気になる手なので、私が指摘したのですが杞憂でした。)
○ 63歩成として
63同歩64歩同歩63歩
とすれば攻め駒は増えそうです。歩切れなのが難点ですが、確実な攻めなので後手の反撃をいなしつつゆっくり攻めます。と金が後手の金と交換になって飛車が成り込めば4枚の攻めです。
ではゆっくりしたほうを考えてみましょう。
○ 一目77桂ですね。
これは85桂92飛83と とすれば後手の飛車は取れます。でもそれは含みとしておいて、22角から99の香を守ったという意味合いです。いざとなれば65桂から攻め駒に使えるし、問題図ならこの一手という感じです。(これが居飛車のほうから見ると候補として見えないのが不思議なところです。)振り飛車は左桂のさばきが大事、と多くの先生が言いますね。元は大野源一先生あたりでしょうか。
後手は角筋を通して45銀でしょう。これに85桂56歩39角99角成93桂成
としても十分指せますが、後手玉が堅くて攻め駒4枚に近いですからやや危険です。
確実に飛車を取れそうなのでもっとゆっくり指しましょう。45銀に46歩として、56歩と返されたら
84角46銀62と
という と金の使い方だってあるのです。これは十分ですね。
戻って45銀46歩に54銀なら
56銀55歩47銀引56金84角
という調子で、左銀も守りに使いながら、手に乗って反撃する感じです。99角成とできなくなった時に85桂から飛車を取りに行きます。
△ 58銀は玉を固めた手で
指したくはあるのですが、45銀77桂56歩93角成同香62と同金71飛成61歩
以下63歩成同金61竜・・・という戦いで、どこかで65桂と使って勝負です。でも後手の56歩の拠点も大きいので互角なのでしょう。
93角成がつまらないので、途中飛車を取らないで84角とかわしておくほうがよく
これなら指せるのでしょう。ただ、56歩58銀の関係が少し嫌なので、(前の変化)先に77桂として左銀を47までもっていくほうが良いと思います。
つまり、ここで53銀85桂99角成93桂成54香
というのがあまり思わしくないということです。
× 84角として62とを狙うと
53銀引54歩64銀
64の歩を払われるのがしゃくです。
△ 56銀は
55歩65銀45銀77桂56歩
銀が前に出ましたが攻め駒にまではならず、ややつまりません。でも84角51金寄46歩同銀56銀という感じで中央の嫌味が消えたら85桂を狙えばよいのでしょう。
☆ まとめ
振り飛車党なら77桂が一目、ではないのでしょうか。でもOさんが逃したのですからそうでもないのですかね。
形からは77桂としておくものだ、という反省をしておけばよいです。さらには左銀も中途半端ですから守りに使うことを考えましょう。
飛車を取りたくなる心理というのは、特に級位者のころはあるのですが、飛角交換は得でない場合も多いです。取った飛車を使って有効な攻め筋がある場合は取っても良いのですが、この場合は舟囲いも金銀4枚、持ち駒の金も使えますから横からの攻めには堅いです。
飛車を取るなら小さな駒で取るのがよく、ここでは桂馬で取れます。ただし後手からの99角成は(何度か書きましたが)思っているより大きな手ですから、その対策をしてからです。遊んでいる飛車を3手かけて取るのですから、局面を落ち着けてからのことです。駒得を急ぐと逆転されやすいものなのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/6d/97b9652a7298a7d640f344df938f2431.png)
大山先生の四間飛車に青野先生は急戦です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/d9/299019465cbb8367d1e8848b80e841bd.png)
52金左なら鷺ノ宮定跡、はこの頃はまだなかったと思うのですが、68金直を先にしているので研究を始めていたのでしょうか。大山先生は32飛だったので
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/08/2e9d31df3056e307a1582c0f79ba4d8f.png)
棒銀になりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/1d/ce9ae799bfb9d90f93c50330c45244c7.png)
大山先生は角を引く対策。でも14歩と受けていないので
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/7d/53d58b04992eab3cc84b831094ec2d19.png)
青野先生は15銀から28飛で22飛と受けさせ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/c2/ea747c0e412e4a3a8a7f285e25b76359.png)
いつの間にか35銀と抑えることになり十分な態勢です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/04/82be08d39d76d7fd33afcaf07f9d9f71.png)
35銀は好位置だというのは、そのあと36飛から37桂と使えることにあるのですが、38歩は嫌味です。こんなことなら桂を跳ねずに戦うのだったか。
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角を成ったのですが空成りで
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/28/ed8705586cf66705850755e28a6698a5.png)
大山先生にさばかれました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/ae/826fc6ae21fa4d2e0c0bd26ba44a2c94.png)
手順に12香をとれたので、ここまではいいでしょう。でも次に21馬では緩そうです。受けるなら49香36銀38銀46歩48歩か。あるいは45桂33桂46歩とか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/9c/1c2517dd47e311460ed4fa704c625ce3.png)
21馬から33銀では馬が遊んでいる感じです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/39/6fb0d8c6aaf60a69f1be8bb33970dece.png)
飛車は逃げてもらえず、大山先生が4筋の歩を伸ばし成り捨てて合わせるのがよい手順でした。これで飛車を取らせて
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44同角に66桂では振り飛車が十分です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/08/27e30c1e4c940ca2dc9af04e8feded8f.png)
飛角を交換して47歩成が大きな手です。
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で、その と金をあっさり捨てて桂を跳ねるのがまた好手順。この場合73の桂がいないほうが後手玉が広いのです。攻防の手順なんですね。
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桂馬を足せば受ける駒がなく
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/73/0d671ebf49bf42f5a5f5ee3c409abeb0.png)
投了図。
青野先生がうまく棒銀を進出させたのですが、それを軽くいなしてしまう大山先生の貫禄勝ちです。まだ青野先生は中終盤の力不足の時代でした。後手をもって、振り飛車のさばきを勉強するのによい題材です。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:青野照市5段
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5八金(49)
8 4二飛(82)
9 6八玉(59)
10 6二玉(51)
11 7八玉(68)
12 7二玉(62)
13 5六歩(57)
14 8二玉(72)
15 6八銀(79)
16 4三銀(32)
17 3六歩(37)
18 7二銀(71)
19 9六歩(97)
20 9四歩(93)
21 5七銀(68)
22 6四歩(63)
23 6八金(69)
24 7四歩(73)
25 2五歩(26)
26 3三角(22)
27 3八飛(28)
28 3二飛(42)
29 3七銀(48)
30 5二金(41)
31 2六銀(37)
32 6三金(52)
33 1六歩(17)
34 7三桂(81)
35 3五歩(36)
36 2二角(33)
37 1五銀(26)
38 3三角(22)
39 2八飛(38)
40 2二飛(32)
41 3四歩(35)
42 同 銀(43)
43 3八飛(28)
44 4三銀(34)
45 2六銀(15)
46 3二飛(22)
47 3四歩打
48 5一角(33)
49 3五銀(26)
50 5四歩(53)
51 4六歩(47)
52 6二角(51)
53 3六飛(38)
54 1二香(11)
55 3七桂(29)
56 3八歩打
57 4八銀(57)
58 8四歩(83)
59 4五歩(46)
60 同 歩(44)
61 2四歩(25)
62 同 歩(23)
63 1一角成(88)
64 3九歩成(38)
65 同 銀(48)
66 3四銀(43)
67 同 銀(35)
68 3五歩打
69 2六飛(36)
70 3四飛(32)
71 1二馬(11)
72 4四飛(34)
73 2一馬(12)
74 3六銀打
75 3三銀打
76 4六歩(45)
77 4八歩打
78 4七歩成(46)
79 同 歩(48)
80 4六歩打
81 4四銀成(33)
82 同 角(62)
83 6六桂打
84 2五歩(24)
85 4三馬(21)
86 2六歩(25)
87 4四馬(43)
88 4七歩成(46)
89 5九金(58)
90 5七と(47)
91 同 金(68)
92 6五桂(73)
93 5八金(57)
94 3七銀成(36)
95 3一飛打
96 8五桂打
97 7九香打
98 7七銀打
99 6九玉(78)
100 8八飛打
101 7四桂(66)
102 同 金(63)
103 投了
まで102手で後手の勝ち
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/ea/b18c4c5e95e79fcba1d792c191d12060.png)
大山先生の中飛車に板谷先生は右四間で対抗
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/1a/e0151718ccbe4c7cc9f10043bae1b9ef.png)
それでも32金とするのは大山先生らしいですが、さらに35歩は欲張った感じです。今の目で見ると36歩同歩38飛か、穴熊に組むところです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/a2/8640711ebc6f452adbd622fb1cc85f9f.png)
板谷先生は45歩と仕掛けたまま、どちらも取らずに駒組みが進みます。先手から見ると44歩と取り込んでから駒組みを進めるのが有力です。55歩には45歩があるのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/47/ecb469c5bfe17e51db63e78c09dae78a.png)
結局ぶつかったまま、角の転回で見たこともない形になりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/75/2b204f164f2490b498b942d57bf49cdc.png)
大山先生は銀の位置をずらして受け
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/7c/a8fc4bef196a0155920ebd7a393917cd.png)
板谷先生は端に手を付けてから歩を入手しに行きますが、一目指しすぎです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/20/971fb484cd0fb7fa9d8e23b783e0d5d7.png)
桂を捨てる手がありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/e8/bdaa2d643596ca7358160dc2db7e4cf9.png)
これは完全にとがめられ、大差です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/91/d8af80b81932c528eb25981c5cac8232.png)
大山先生は味よく飛車を回り
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/01/b1ac577658d1945ad790b208b812f84e.png)
板谷先生は眉間で受けます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/28/0bc0857e976c987ad49fbb075ba8c13a.png)
アマチュアレベルではこういうのが逆転することもあるのですが、駒得を目指すのが切れない指し方で
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/05/a4e6ee51cc4bbbaa3c8014274e2ae0bd.png)
筋の悪い手ですが、玉の遁走を阻止した手で
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/df/86156289676a96fae8d349baaf81b17b.png)
危険なところに呼び込んで駒を取ります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/69/3e6e53b81bc8076983f34a7ac1da1e70.png)
板谷先生の玉に安住の地はなく
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/a2/23b6adeceac776003d993ecea3592c91.png)
駒取りの催促で投了です。
板谷先生がかなり凝った指し方でしたが、指し過ぎをしっかりとがめる大山先生は抜け目ないです。
これで300局並べました。皆さんはどれだけ並べましたか?面白そうなものだけでも並べてみるとだんだんに強くなるものです。
本筋の手が見えやすくなります(これは手早く何度も並べるのがおすすめ)し、手を読んで並べていれば(時間をかけて細かいところも検討します)良い読みの訓練になります。
プロは終盤でどう寄せにもっていくかというのが身につくので、知らない間に終盤力が向上しますよ。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:板谷進8段
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 4二銀(31)
7 5八金(49)
8 5二飛(82)
9 6八玉(59)
10 6二玉(51)
11 7八玉(68)
12 7二玉(62)
13 4六歩(47)
14 4三銀(42)
15 4七銀(48)
16 5四歩(53)
17 5六銀(47)
18 3二金(41)
19 4八飛(28)
20 3五歩(34)
21 4五歩(46)
22 4二飛(52)
23 9六歩(97)
24 6二銀(71)
25 9五歩(96)
26 3三角(22)
27 6八銀(79)
28 4一飛(42)
29 7七角(88)
30 5三銀(62)
31 8六角(77)
32 5二銀(43)
33 7七桂(89)
34 5五歩(54)
35 同 銀(56)
36 4五歩(44)
37 5六歩(57)
38 6二金(61)
39 5七金(58)
40 5四歩打
41 6六銀(55)
42 6四歩(63)
43 3八飛(48)
44 7四歩(73)
45 9四歩(95)
46 同 歩(93)
47 9三歩打
48 同 桂(81)
49 3六歩(37)
50 8五桂(93)
51 同 桂(77)
52 8四歩(83)
53 3五歩(36)
54 8五歩(84)
55 9七角(86)
56 4六歩(45)
57 4五歩打
58 9五歩(94)
59 4六金(57)
60 9六歩(95)
61 7九角(97)
62 8一飛(41)
63 4四桂打
64 同 銀(53)
65 同 歩(45)
66 8六桂打
67 7七玉(78)
68 6三銀(52)
69 4五金(46)
70 9七歩成(96)
71 5九銀(68)
72 6五歩(64)
73 同 銀(66)
74 5三桂打
75 5四銀(65)
76 4五桂(53)
77 同 銀(54)
78 4六歩打
79 4八飛(38)
80 4七金打
81 2八飛(48)
82 9八桂成(86)
83 同 香(99)
84 8七と(97)
85 6六玉(77)
86 6五歩打
87 同 玉(66)
88 9八香成(91)
89 5五歩(56)
90 8八成香(98)
91 6八角(79)
92 7八成香(88)
93 9五角(68)
94 6四歩打
95 5六玉(65)
96 6九成香(78)
97 3四銀(45)
98 4四角(33)
99 4五玉(56)
100 3三桂(21)
101 3六玉(45)
102 2四金打
103 5六桂打
104 3五金(24)
105 2七玉(36)
106 5三角(44)
107 5四歩(55)
108 同 銀(63)
109 6六桂打
110 9四歩打
111 投了
まで110手で後手の勝ち