名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(312); 石田流穴熊に位取り

2016-10-19 | 大山将棋研究
昭和51年11月、毎日特別棋戦とあります。大内延介棋王との対戦、大内先生は初のタイトル(結局1回だけでしたが)だったので企画されたのでしょう。毎日新聞は棋王も棋聖も関係ないのですが。


乱戦かもという出だしでしたが

結局は石田流と位取りになりそうです。

大山先生は4筋の位を取り、大内先生は穴熊に。

大山先生はいつものように7筋の歩交換を許します。

なんだかきれいな駒組みで、大山先生らしくないです。こうなると7筋の歩交換は大きいので大内先生がやや作戦勝ち。

48金左を見て大山先生は角をのぞきますが、成ると53角成同金65桂です。

1手損しただけに終わり、角交換で作戦負けが解消されるかどうか。

1回角を打ちあって35歩の形にするのが大内先生の鋭い感覚です。

歩をたらして

じっと歩を突きだしました。

狙いは44歩から角で割打ち。その間に桂馬を損しているのですが、後手陣が乱れています。

大山先生は反撃にいくのですがこれが悪く、じっと我慢しておくところでした。

大内先生は飛車を取って打ち込み

じっと成っておく。これが受けにくいです。

42歩と打つために成り捨てれば、無視して桂を取る。これが強手でした。前に35歩の形にしたのが利いてきて、34桂があります。

あっという間に寄ってしまいました。

投了図。

大内先生の快勝です。大山先生は手を抜いたというわけでもないのですが、少し前に右翼を厚くしてうまくいかなかったので玉を固めてみようと思ったのでしょう。しかしいいようにやられてしまいました。
石田流穴熊としては理想通りの展開で、いつもこんなにうまくいくのならよいのですが。大内先生が一番強かったころの将棋です。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大内延介棋王
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 5六歩(57)
4 5四歩(53)
5 6六歩(67)
6 6二銀(71)
7 6八銀(79)
8 4二銀(31)
9 6七銀(68)
10 5三銀(62)
11 7五歩(76)
12 4四歩(43)
13 7八飛(28)
14 4三銀(42)
15 4八玉(59)
16 4二玉(51)
17 3八玉(48)
18 3二玉(42)
19 2八玉(38)
20 4五歩(44)
21 1八香(19)
22 4四角(22)
23 1九玉(28)
24 2二玉(32)
25 2八銀(39)
26 3二金(41)
27 3九金(49)
28 1四歩(13)
29 5八金(69)
30 8四歩(83)
31 9六歩(97)
32 1五歩(14)
33 7四歩(75)
34 同 歩(73)
35 同 飛(78)
36 7三歩打
37 7六飛(74)
38 5二金(61)
39 9七角(88)
40 3三桂(21)
41 7七桂(89)
42 9四歩(93)
43 4八金(58)
44 3五角(44)
45 5八銀(67)
46 6二銀(53)
47 5七銀(58)
48 5三角(35)
49 同 角成(97)
50 同 金(52)
51 6五桂(77)
52 5二金(53)
53 2六角打
54 3五角打
55 同 角(26)
56 同 歩(34)
57 9五歩(96)
58 同 歩(94)
59 7二歩打
60 同 飛(82)
61 4六歩(47)
62 6四歩(63)
63 4五歩(46)
64 6五歩(64)
65 4四歩(45)
66 同 銀(43)
67 6一角打
68 6三銀(62)
69 7四歩打
70 4七歩打
71 3八金(48)
72 4五桂(33)
73 4六銀(57)
74 6七角打
75 7三歩成(74)
76 同 桂(81)
77 7二角成(61)
78 同 銀(63)
79 7一飛打
80 6二金(52)
81 4一飛成(71)
82 4八歩成(47)
83 7三飛成(76)
84 同 銀(72)
85 3四桂打
86 3三玉(22)
87 4五銀(46)
88 同 銀(44)
89 2五桂打
90 2四玉(33)
91 3二龍(41)
92 3四銀(45)
93 3三龍(32)
94 1四玉(24)
95 1六歩(17)
96 投了
まで95手で先手の勝ち



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20161019今日の一手<その404>; 受ける

2016-10-19 | 今日の一手

20161019今日の一手

9月24日の名南将棋大会から、KさんとMさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答
仕掛けから見てみると

角交換振り飛車に筋違い角を打ちました。25歩34角26歩23歩21飛26飛25歩28飛に12角

居飛車から見るとちょっとうっかりしそうな角ですが、これで少し困りました。35歩23角同角成同飛34歩45桂

桂馬に逃げられてしまいました。32角24飛33歩成同銀35銀54飛23角成

馬を作れば何とかなりそうに思えました。でも12角と合わせられて57桂成があるので馬が逃げられません。12角同馬同香で問題図。

☆ 形勢判断をします。
先手の1歩損ですが、持ち歩があるので損得なしとします。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。5筋を狙われているので78玉は戦場に近いということです。
先手の攻め駒は28飛と持ち駒角で2枚。
後手の攻め駒は54飛45桂と持ち駒角で3枚。

総合すれば後手が指しやすいです。

☆ 大局観として
先手の攻め駒は2枚ですが、28飛の利きはまだ敵陣に届いていません。25飛と取って成り込んで、と考えるのが普通なのですが、25飛の後23飛成がどれだけの手か、王手飛車のラインにも入りますからいかにも危険です。
後手のほうが攻め駒が多いし玉も堅いという状態では攻め合いは難しく、先に守っておくのでしょう。57の地点をどう守るか、という問題です。


× 25飛を見ておきます。

44銀46銀なら57桂成

で34角の王手飛車。これはだめです。

44銀とぶつけられて、取るわけにもいきませんし(後手の攻め駒が4枚になる)34銀とかわすのですが24歩と打たれて

取れば35角から57桂成です。26飛も35角、28飛は39角、27飛は49角から58角成同金57桂成です。45銀25歩54銀同歩も駒損で飛車交換はだめでしょう。ということで一番自然な手がうまくいかない、というのは形勢が良くないということです。


× 実戦は23角でしたが

39角38飛57桂成

57の地点を破られてしまいます。角の利きを生かして56歩と耐えたのですが、58成桂同金28金

と筋悪く攻められ、以下は36飛に34歩同銀同銀同角成・・・と進むのですが、一応駒得で玉の堅い後手が有利です。


× 57を受けます。後の王手飛車を消して67金右が一石二鳥のようですが

39角には58飛ですね。でも36歩46銀37歩成同桂同桂成同銀55桂

受けているのに駒損ではまずいです。


△ 受けるなら46銀と使うのが本筋でしょう。

ただし34飛とまわられると歩を打つしかありません。35歩24飛

の時に歩切れで27歩が打てないです。45銀26歩15角23飛

ここで少し困ります。33角成同飛25飛35飛ではまずいですし、33角成同飛34銀では27歩成からの王手飛車の筋があります。
味が悪いのですが34歩24銀26角として、35銀に37角でどうか。(途中で27歩には38飛)

64角から74桂という反撃筋があるので、どうにか形勢を保っていて、難しい戦いです。どこかにほころびがありそうで、後手有利になってもおかしくはないところですが。


× 46歩では

34歩でも少し困りますが、39角27飛57桂成同金左同角成同金36金

でつぶれています。飛車交換もできませんし。


△ 角を打つ手しかなく、18角

とすれば桂と飛をにらんでいます。39角38飛57桂成には54角と取れます。

54同歩39飛56角67角同成桂同金直

これは少し駒得ですし、何とかなりそうです。

後手は57桂成の前に57角成とするのでしょう。(57飛成は45角)

57同金左同飛成には45角


なので、57同桂成に54角

のほうが難しく、54同歩57金27角37飛45角成

これが王手で、36歩から35馬もあります。駒損を避けるなら67角36歩45角ですが、37歩成同桂38飛

桂馬を取り返されますし、玉の堅さも違うので後手のほうが勝ちやすいです。

ということで35の銀はあきらめて58飛として

45角成67角35馬に12角成は49銀

飛車を取られるのでは勝ちにくいです。

12角成の前に46金として34馬

これで34角同銀32飛23銀39飛成・・・という戦い方にするのが最善か。金銀と角桂の交換で少し落ち着きます。
後手もいろいろ手が続きますが、互角の戦いです。


△ 18角でなくても36角でも同じですし、76角でも39角

と打てば同じことになりそうです。
39角ではなくて55飛46銀75飛67角・・・ということになる可能性はあるのですけれど。


△ 56角はひねった手ですが

39角38飛57桂成同金左同角成同金56飛

と強襲されても、56同金49角68飛58金67飛

ここで48金57飛58金は千日手、といって58角成は46銀と引いて

これは駒得な分だけ先手有望です。


× 角を打つなら筋違い角のほうが働いていて、48角では

24銀46銀44飛56歩36歩

かなりゆっくりにできるのですが角が攻めに使えません。後手にだけ打開の権利があるという状況です。


☆ まとめ

元があまりよくない局面でしたので、先手有利にはなりません。受けてつぶれないように、駒損しないように、という変化を選びます。

角を使わずに57を受けるなら46銀しかなさそうです。

角を打つなら18角か56角か。
18角は39角以下の攻めをぎりぎりしのいでいるという感じです。

56角は質駒になるので怖いけれど、それ以外の怖い手が無くなっています。44銀とか44歩とか桂取りを受ければ25飛が可能になるので、飛車きりの筋で攻めるのでしょう。変化で書いた39角はかなり強引な手ですが、怖いのはそれくらいです。

どれを選びましたか?
ただ57の地点を受けようというだけでなく、攻めを呼び込む手のほうが強いです。45の桂取りになっているほうが催促できるわけです。


*間違いを修正しました。20171019

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大山将棋研究(311); 中飛車に袖飛車急戦

2016-10-18 | 大山将棋研究
昭和51年11月、加藤一二三先生と第2期棋王戦です。


加藤先生は急戦で、大山先生は中飛車に。

いわゆる加藤流袖飛車です。3筋の歩を交換して36飛~37桂~45歩という攻め筋。これはとても優秀なのです。大山先生は腰掛銀で変化球。

2筋の歩を交換して55歩と突けば65銀とは指しにくく(後に36飛~45歩が銀に当たる)

大山先生は63銀と引いてから飛車で歩交換です。

55歩からゆっくりかと思いましたが、加藤先生は銀を出て攻めつぶそうとしています。

44歩が入り歩を取れれば十分指せそうです。

55銀が死ぬかどうかが問題ですが、一つ飛車を引いておく。54歩には33角を歩で追うと43歩成から44銀とできるのです。

角の退路を作る12香に45飛とできて一安心。

盤面を制圧して、動いてきなさいと歩を合わせます。大山先生が53歩から反応するのは仕方ないのでしょう。

けれど43歩成から53歩成で技ありです。

72の銀を取る2枚換えにしないで、32銀と打てば

51飛に52歩から金を取れました。

さらに金銀の取り合いで2枚換え。飛車を取る前に金で張り付いて工作です。

銀打の強打、取れば55角から53飛で、これが取れないなら加藤先生が優勢です。

飛車を取って銀で受けておきます。これで攻め駒4枚、後手玉は薄いので大山先生でも受からないです。

角を離して打ってから金合い、まだ難しそうにも見えますが

飛車しかないので受けが無くなって投了です。

加藤先生の快勝譜、この袖飛車急戦は優秀すぎて、でも流行らなかったのが不思議です。軽い攻めに見えてしまうのでしょうか。
居飛車の舟囲いは金銀4枚で、ツノ銀中飛車よりも格段に固く、それでいて攻め筋が多いのです。勝ちやすいのも当然です。
読みに自信のある方なら中盤の55銀以下、いろいろな変化を読み切る訓練をするのに向いています。少し有利なのでどの応手にも対応できるかどうか読んでみましょう。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:加藤一二三9段
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 2六歩(27)
2 3四歩(33)
3 7六歩(77)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4三銀(32)
9 3六歩(37)
10 5二飛(82)
11 6八玉(59)
12 6二玉(51)
13 7八玉(68)
14 7二玉(62)
15 5八金(49)
16 8二玉(72)
17 6八銀(79)
18 7二銀(71)
19 2五歩(26)
20 3三角(22)
21 4六歩(47)
22 3二金(41)
23 5七銀(48)
24 6四歩(63)
25 3八飛(28)
26 5四銀(43)
27 3五歩(36)
28 同 歩(34)
29 同 飛(38)
30 4三金(32)
31 5五歩(56)
32 6三銀(54)
33 5六銀(57)
34 5四歩(53)
35 同 歩(55)
36 3四歩打
37 3六飛(35)
38 5四飛(52)
39 5五銀(56)
40 5一飛(54)
41 4五歩(46)
42 同 歩(44)
43 4四歩打
44 4二金(43)
45 3四飛(36)
46 6五歩(64)
47 2四歩(25)
48 同 歩(23)
49 3五飛(34)
50 1二香(11)
51 4五飛(35)
52 4一飛(51)
53 5四歩打
54 5二歩打
55 3四歩打
56 1一角(33)
57 2五歩打
58 5三歩(52)
59 4三歩成(44)
60 同 金(42)
61 5三歩成(54)
62 4四歩打
63 6三と(53)
64 4五歩(44)
65 3二銀打
66 5一飛(41)
67 5二歩打
68 同 金(61)
69 同 と(63)
70 同 飛(51)
71 4三銀成(32)
72 5五飛(52)
73 6二金打
74 6一銀打
75 7二金(62)
76 同 玉(82)
77 6三銀打
78 8二玉(72)
79 5五角(88)
80 同 角(11)
81 7七銀(68)
82 3五角打
83 3二飛打
84 7二金打
85 同 銀成(63)
86 同 銀(61)
87 6三金打
88 7一銀打
89 6一金打
90 投了
まで89手で先手の勝ち
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大山将棋研究(310); 四間飛車穴熊に中央位取り

2016-10-17 | 大山将棋研究
昭和51年10月、山口千嶺(ちみね)先生と第18期王位戦です。


山口先生は四間飛車の名手、と子供のころNHK杯を見ていて紹介された記憶があります。

大山先生は端の位を取り、石田流への組換えの対策に、もう何度もみましたが46歩と突きます。

山口先生はそれを見て34銀型に。大山先生は中央位取りにスイッチ。

穴熊と中央位取りの対抗になりました。

山口先生は桂馬の裏跳ね。これはたまに出てきます。近年では森雞二先生が後手番で採用していました。(先手番ではひねり飛車というマニアックな選択でした。)

37桂成を受ける26飛に15歩と攻めるのは指し過ぎです。26飛が端の受けにもなっているのでうまくいきません。24歩として待つところ。

端攻めよりも4筋を攻めるほうが厳しいのです。ここでは仕方ないので45同歩だったと思いますが

15角から36歩に対して、角を使うのが当然の対応。11角成とできれば15角が浮いてしまうので二重に気びいしいです。

山口先生は36歩と突いたのに取られて謝るようではどうしようもなく

銀をさばきましたが角は交換してもらえません。

ならばと66銀から角は取れましたが

角を取られて銀損です。さらに53歩成から金も取られます。

大山先生は駒得になったので自玉を固め

桂を取ってから飛車交換、桂打ちで終わりです。


穴熊だからってむやみに戦いを起こしてはいけないという例でした。悪くなってからの山口先生は淡白な指し方でした。性格なのでしょうけれど、振り飛車党は粘り強くないと大成しません。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山棋聖
後手:山口千嶺6段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4二飛(82)
9 6八玉(59)
10 6二玉(51)
11 7八玉(68)
12 7二玉(62)
13 5八金(49)
14 8二玉(72)
15 9六歩(97)
16 5二金(41)
17 5七銀(48)
18 4三銀(32)
19 9五歩(96)
20 3五歩(34)
21 2五歩(26)
22 3三角(22)
23 6八銀(79)
24 3二飛(42)
25 4六歩(47)
26 3四銀(43)
27 5五歩(56)
28 9二香(91)
29 5六銀(57)
30 9一玉(82)
31 7七角(88)
32 8二銀(71)
33 8八玉(78)
34 7一金(61)
35 7八金(69)
36 6二金(52)
37 6六歩(67)
38 1四歩(13)
39 6五歩(66)
40 1三桂(21)
41 1六歩(17)
42 2五桂(13)
43 2六飛(28)
44 1五歩(14)
45 同 歩(16)
46 1七歩打
47 4五歩(46)
48 1五角(33)
49 1六飛(26)
50 3六歩(35)
51 5四歩(55)
52 3三角(15)
53 3六飛(16)
54 3五歩打
55 4六飛(36)
56 4五銀(34)
57 同 銀(56)
58 同 歩(44)
59 同 飛(46)
60 6六銀打
61 4三飛成(45)
62 7七銀成(66)
63 同 桂(89)
64 4二飛(32)
65 3三龍(43)
66 4九飛成(42)
67 5三歩成(54)
68 5五角打
69 3五龍(33)
70 5八龍(49)
71 6二と(53)
72 同 金(71)
73 6七銀打
74 3四歩打
75 2五龍(35)
76 2四歩(23)
77 4五龍(25)
78 4四歩打
79 5八銀(67)
80 4五歩(44)
81 5四桂打
82 投了
まで81手で先手の勝ち

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20161017今日の一手<その403>; 攻防の手

2016-10-17 | 今日の一手

20161017今日の一手

9月24日の名南将棋大会から、KさんとSさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
先手の桂得です。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。囲いとも言えませんが、比較すればかなり違います。
先手の攻め駒は持ち駒角桂で2枚。
後手の攻め駒は69飛81飛で2枚。

総合すれば互角です。

☆ 大局観として

駒得なので長期戦にしたいのですが、後手に89の桂を取られそうです。うまく守れるかどうか。
パッと見ると53桂で駒得を拡大したいと思うところですが、少なくとも桂馬を渡すことになりますからそれでよいか。桂馬2枚と交換で、トータル桂金の交換にされるかもしれません。駒得を拡大しようと思うことは危険なものなのです。
89桂を守らないと、87歩成もありますし、だんだんに駒を損していきます。それ以上の攻めを用意しておかねばなりません。
形勢は互角ですが、後手は駒損を回復しながら先手玉を攻めることを考えるだけなのでわかりやすく、先手は薄い玉を気にしながら受けるあるいは反撃も考える必要があります。見た目よりも先手が指しにくいのかもしれません。


× 普通の指し手は53桂です。

51金右41桂成同金と相手をしてもらえるなら78角79飛成69金

と自玉を固めて駒得ですから先手が指せます。

53桂には89飛成で

41桂成同玉45角

となればずいぶんよい気がしますが、32玉63角成71飛

これでうまい攻め方がありません。自玉は57桂と打ち込まれる傷があり、87歩成も防げないのでこの図は後手が良いのでしょう。


× 74歩と打てばもう少し厳しそうで

64銀同金同歩53桂89飛成41桂成同玉63角

は王手飛車です。

後手は53桂に42金と逃げるのでしょう。

61桂成同飛78銀で飛車の捕獲と思ったら57金

で結局飛車に逃げられてしまいます。駒を渡しすぎました。


△ 実戦は54金で

89飛成には98角の予定だったのでしょう。79竜43金22玉53桂51金右41桂成同金86角75歩

これならそんなに悪くない気もします。

実戦では54金に52金右と受けて、65歩89飛成55角62銀67角78歩56角

と進みました。駒得ではなくなり、角2枚が良い位置のようですがこの後の攻め筋が見えなくていつの間にかじり貧になってしまいました。ほかの指し方もあるのですが、検討してもうまく後手玉に迫る順が見つけられませんでした。


× 通常の振り飛車なら86角と さばくものですが

89飛成53角成52金右35馬99竜

馬で先手玉の薄さをカバーしているものの駒損でだんだん悪くなるのでしょう。


× 89桂を守るなら98角です。

62金54金42銀55桂52金上86角57歩成同歩53歩

そのあと54金から後手玉を狙ってみましたが、攻め切れません。


× 79歩も手筋ですが

堂々と79同飛成46角89竜73角成57桂

これを取れなくて59金87歩成は後手の勝ち筋です。
46角を先にしても89飛成で同じことです。


○ 角を打つところを工夫して45角が良さそうで

89飛成には35桂22銀を決めて63角成

71飛に43桂成同玉41馬

となればまだ後手玉を寄せ切るまではいきませんが、かなり迫れます。

45角には52金右と受けるしかないところでしょう。

56角と拠点の歩を払い、79飛成くらいに74歩、64銀同金同歩なら68銀

として飛車を捕獲できます。

74歩に62銀なら35桂

22銀86角88竜95角72歩54金

壁銀にしたので後手も受けにくくなってきます。42金直に62角成同金65角52金右43桂成同金右同金同金53金

3枚の攻めですが壁銀のせいで受けにくくなっていて、43の地点で金銀を入れ替えていけば角を切って42金の筋で寄りです。(42金打44銀53金上同成銀42金打43成銀同金53金42銀43角成同銀42金)
というのが一例ですが、45角+35桂は22銀を強制できるので有力です。



結局受けているだけでは駒損を避けきれません。後手は竜を作れば87歩成~88歩という筋だってあるので桂馬は取れ、場合によっては57桂と打ち込んですぐに寄せられます。先手玉が薄すぎてなかなか互角以上になりません。

どうにかなるのは45角で、35桂22銀と受けさせれば後手玉が弱体化するので玉の堅さが同じくらいになります。
63角成を受けさせて手順に56の歩を払い、77の角も活用できれば勝ち筋が見えてきます。いかにも味の良い手順でした。
形勢が良くないときでも、ただ受けるだけではない攻防の手が指せれば少しずつ指しやすくなってきます。


* 間違いを修正しました。20171017





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大山将棋研究(309); 三間飛車穴熊に位取り

2016-10-16 | 大山将棋研究
昭和51年10月、米長邦雄先生と第26期王将戦です。


どちらが振るかという出だしから、米長先生が三間飛車に

さらに穴熊を見て大山先生は4筋の位取りです。

端攻めがあるので44角は好位置。あとは歩を持ちたいところですが

やはり大山先生は変わった組み方をします。44角とバランスが悪い気がするのですが、右金を前線に出します。

米長先生はそれを見て石田流をあきらめ、銀を繰り出しました。

手厚いところからですが、銀を使うには動かねばなりません。

大山先生は迎撃態勢。振り飛車が困っている形に見えます。

77桂を見て、角の筋を変えて飛車先を止めました。

2枚換えにはなりましたが、米長先生が飛車を浮くと66飛の筋は避けにくいです。大山先生の玉は飛車交換には向きません。持ち歩がないので端攻めもできず、米長先生がうまく体をかわしたという図です。

飛車交換になって、大山先生の44桂は攻防の手ですが

51飛に41銀と入れなくてはならず、金銀の連携が悪いです。63金と打たれて部分的には受けにくい形。

飛車を打てばどうにかバランスが取れそうか。角を逃げにくいです。

角と銀の取り合いから、(銀をはがす前に)21銀と捨てるのが手筋ですが

大山先生は竜を引いてどうにか受かっているようです。

大駒の利きで守り、金を入れます。でも米長先生の攻め駒が十分なので、見通しは悪いです。

一回39金左も穴熊らしい手で、26桂が急所、36香の筋もあり桂跳ねは受けにくいです。

桂を跳ねて米長先生が優勢になりました。

あとはどう寄せるかなのですが、銀を打つのが攻防で、負けませんよ、という手です。

気がつかないところに金を打ちました。かなり打ちにくいと思うのですけれど、直接51金を受ける手はありません。

大山先生はまだまだ粘ります。

受ける駒がないので、72にいた馬をぶつけるのは仕方ないのですが

これしかないという角打ちです。42同竜には22銀同金42桂成の筋。

金で取れば22銀12玉31銀不成。

51竜に42桂成でないのが少し不思議ですが(42同竜同銀成21銀を寄せにくいとみたか)全部清算して

王手馬取り。

56の桂馬も狙っています。ひもを付けても

角を打って取ってしまいました。駒得で攻めれば逆転しないという指し方ですが、少し意地悪。

投了図。

やはり大山米長戦は面白いです。大山先生らしい駒組みから、大駒を使った受けの数々、実りませんでしたが流石です。米長先生は押したり引いたりでしたが、逆転を許さない指し方で勝ち切りました。
穴熊党なら先手をもって、アンチ穴熊党には後手をもっての棋譜並べをお勧めします。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:米長邦雄8段
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 6六歩(67)
4 4四歩(43)
5 6八銀(79)
6 4二銀(31)
7 6七銀(68)
8 4三銀(42)
9 7八飛(28)
10 6二銀(71)
11 4八玉(59)
12 4二玉(51)
13 3八玉(48)
14 3二玉(42)
15 7五歩(76)
16 8四歩(83)
17 9六歩(97)
18 1四歩(13)
19 2八玉(38)
20 5二金(61)
21 1八香(19)
22 5四歩(53)
23 1九玉(28)
24 4五歩(44)
25 2八銀(39)
26 4四角(22)
27 3九金(49)
28 3三桂(21)
29 5八金(69)
30 1五歩(14)
31 4八金(58)
32 6四歩(63)
33 7六飛(78)
34 9四歩(93)
35 3八金(48)
36 6三金(52)
37 9八香(99)
38 5三銀(62)
39 7九飛(76)
40 4二金(41)
41 7六銀(67)
42 5五歩(54)
43 6九飛(79)
44 5四金(63)
45 6五歩(66)
46 同 歩(64)
47 同 銀(76)
48 6二飛(82)
49 7七桂(89)
50 3五角(44)
51 4八金(39)
52 5六歩(55)
53 同 歩(57)
54 6八歩打
55 7九飛(69)
56 6五金(54)
57 同 桂(77)
58 同 飛(62)
59 7六飛(79)
60 6九歩成(68)
61 6六飛(76)
62 同 飛(65)
63 同 角(88)
64 4四桂打
65 5一飛打
66 4一銀打
67 6三金打
68 5四銀(53)
69 6四金(63)
70 6八飛打
71 5四金(64)
72 6六飛成(68)
73 2一銀打
74 同 玉(32)
75 4三金(54)
76 6二龍(66)
77 8一飛成(51)
78 5四角打
79 4二金(43)
80 同 龍(62)
81 9一龍(81)
82 5六桂(44)
83 4九金(48)
84 3一金打
85 3九金(49)
86 8七角成(54)
87 2六桂打
88 5一歩打
89 5五香打
90 5四銀打
91 同 香(55)
92 同 馬(87)
93 3四桂(26)
94 5二龍(42)
95 3六歩(37)
96 5七角成(35)
97 3五銀打
98 4六歩(45)
99 同 銀(35)
100 6七馬(57)
101 5三歩打
102 同 龍(52)
103 6一金打
104 3二銀(41)
105 5一金(61)
106 8一香打
107 5五歩打
108 7二馬(54)
109 9二龍(91)
110 8二馬(72)
111 同 龍(92)
112 同 香(81)
113 4二角打
114 同 金(31)
115 2二銀打
116 1二玉(21)
117 3一銀(22)
118 5一龍(53)
119 4二銀成(31)
120 2一龍(51)
121 2二金打
122 同 龍(21)
123 同 桂成(34)
124 同 玉(12)
125 3二成銀(42)
126 同 玉(22)
127 6二飛打
128 4二銀打
129 6七飛成(62)
130 1六歩(15)
131 同 歩(17)
132 1七歩打
133 同 銀(28)
134 5九飛打
135 6五角打
136 4三銀(42)
137 5六龍(67)
138 同 飛成(59)
139 同 角(65)
140 5八飛打
141 6五角(56)
142 2五桂(33)
143 4四桂打
144 3三玉(32)
145 4三角成(65)
146 投了
まで145手で先手の勝ち



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大山将棋研究(308); 四間飛車に力戦

2016-10-15 | 大山将棋研究
昭和51年10月、富沢幹雄先生と第18期王位戦です。


大山先生の四間飛車に富沢先生は中央位取りですが、かなり早いです。

さらに左銀を動かして大模様を張ろうとしたのですが、大山先生が動きました。

位を解消して振り飛車十分です。

富沢先生は何を目指していたのでしょう?左右に手をかけて中飛車に。

玉は右に囲いました。どう見ても予定変更です。

角頭を攻めて角を使います。

6筋の歩を交換して1歩持ちましたが、じっと歩を突きだすのも大きな手です。

大山先生は拠点ができたので駒を持とうと銀を繰り出します。

富沢先生は飛車を中段に使います。これで8筋方面が破れるならよいのですが

84歩は消えたものの、破れるというわけにはいきません。

角は成り込めたものの、形作りに近いです。

大山先生はゆっくり確実に と金作り。

飛車を打ち込まれても怖いことはありません。

角打ちが決め手で

投了図。


並みの振り飛車党には大模様が有効になることもありますが、若いころから力戦が好きな大山先生には効果がありませんでした。力の差もありますが、富沢先生には相性の悪い相手でしょう。序盤構想で何を考えていたか知りたいです。
大山先生がどう寄せに行ったかということだけ見ておけばいいです。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山棋聖
後手:富沢幹雄8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 6六歩(67)
4 8四歩(83)
5 7八銀(79)
6 8五歩(84)
7 7七角(88)
8 6二銀(71)
9 6八飛(28)
10 5四歩(53)
11 4八玉(59)
12 5五歩(54)
13 3八玉(48)
14 5三銀(62)
15 6七銀(78)
16 4二銀(31)
17 6五歩(66)
18 5四銀(53)
19 5六歩(57)
20 5三銀(42)
21 5五歩(56)
22 同 銀(54)
23 4八銀(39)
24 5四銀(53)
25 5六歩打
26 4四銀(55)
27 6六銀(67)
28 2四歩(23)
29 4六歩(47)
30 2五歩(24)
31 4七銀(48)
32 3五歩(34)
33 4八金(49)
34 7四歩(73)
35 5八金(69)
36 9四歩(93)
37 2八玉(38)
38 1四歩(13)
39 1六歩(17)
40 5二飛(82)
41 3八金(48)
42 7二金(61)
43 3六歩(37)
44 同 歩(35)
45 同 銀(47)
46 6一玉(51)
47 4七金(58)
48 7一玉(61)
49 7五歩(76)
50 5一金(41)
51 7四歩(75)
52 7六歩打
53 8八角(77)
54 8六歩(85)
55 同 歩(87)
56 8七歩打
57 7九角(88)
58 6二金(51)
59 8五歩(86)
60 1五歩(14)
61 同 歩(16)
62 3一角(22)
63 9六歩(97)
64 8六角(31)
65 5八飛(68)
66 6四歩(63)
67 同 歩(65)
68 同 角(86)
69 6五歩打
70 8六角(64)
71 8四歩(85)
72 3五歩打
73 2五銀(36)
74 6三銀(54)
75 3四銀(25)
76 5四飛(52)
77 4五歩(46)
78 3三銀(44)
79 4三銀成(34)
80 7四飛(54)
81 4六角(79)
82 7三桂(81)
83 8三歩成(84)
84 同 金(72)
85 7五歩打
86 3四飛(74)
87 6四歩(65)
88 7二銀(63)
89 5五歩(56)
90 5七歩打
91 同 飛(58)
92 6八角成(86)
93 8四歩打
94 同 金(83)
95 5四歩(55)
96 5二歩打
97 5三歩成(54)
98 同 歩(52)
99 5二歩打
100 2六歩打
101 5一歩成(52)
102 2七歩成(26)
103 同 金(38)
104 5七馬(68)
105 同 銀(66)
106 4九飛打
107 4八銀(57)
108 8九飛成(49)
109 5二と(51)
110 6一歩打
111 6二と(52)
112 同 歩(61)
113 7四歩(75)
114 2六歩打
115 同 金(27)
116 7四金(84)
117 5六角打
118 3六桂打
119 同 金(26)
120 2七歩打
121 3八玉(28)
122 9九龍(89)
123 2六金(36)
124 2八歩成(27)
125 同 角(46)
126 2五歩打
127 1六金(26)
128 1五香(11)
129 7四角(56)
130 1六香(15)
131 8三歩打
132 8一香打
133 7五桂打
134 投了
まで133手で先手の勝ち
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20161015今日の一手<その402>; 作戦負けの時

2016-10-15 | 今日の一手

20161015今日の一手<その401>

9月24日の名南将棋大会から、MさんとAさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答
問題図の少し前から。

15歩の仕掛けに同歩17歩同香(桂を渡すと64桂がある、銀は角を切る筋がある)25桂16香36歩同歩34飛

で問題図です。
☆ 形勢判断をします。
後手の3歩損です。持ち歩がないので駒損です。
玉の堅さは同程度ですが香の位置が違うだけです。端が弱くなっているので先手玉のほうが守りが弱いとみておくほうが良さそうです。
先手の攻め駒は76飛86角で2枚。
後手の攻め駒は34飛44角25桂11香で4枚。十分にあります。

総合すれば後手が指せそうな局面です。

大局観として

仕掛けの前の局面、互角に見えるかもしれませんが、後手の作戦勝ちです。これは角の位置の違いで、前にもやりましたが四手角の働きは対角線のラインの角よりも弱いのです。さらに言えば両にらみの位置ならば(追われやすくなりますが)もっと良いです。その左右対称バージョンで、86角は四手角の位置ですね、44角より数段劣るのです。6筋の攻めが十分早ければ別ですが、それをけん制しているだけでも44角の方が価値があります。後手がもう1歩ある(35歩を交換している)とか、34飛の形でこの仕掛けをやった(問題図で後手の手番)とか、もう少し条件が良ければそのまま後手が攻めつぶせます。

では問題図はどうかといえば、後手の攻めがうまくいくかどうかぎりぎりの局面です。4枚の攻めですが、上から攻めているのに持ち歩がないと攻め筋が減るので大変です。
では先手が受けきりの体制を目指せるかというのは難しいところで、後手に疑問手がない限りは駄目でしょう。幸い後手玉はあまり堅くないのですから(金無双が堅いとは思えません)攻め合いができる変化を選ぶべきです。
と言っても現状で攻め合いは間に合いませんから、受けつつ駒の入手を待って反撃するのです。形勢は後手のほうが良さそうですから、簡単ではありません。


× 64歩と攻め合いを目指しても
64同歩65歩36飛37歩16飛64歩18飛成

歩の裏の飛車は好形で、19歩と打てませんから18竜は大威張りです。26歩同歩27歩と攻められますから後手が優勢です。


× 36歩を守るのに37銀では17桂成

ですから受けになっていません。


× 37金なら

37同桂成同銀25金28桂

受けているのに駒損ではだめなものですが、後手は歩切れですから17歩や18歩とできません。15香同香同金ならまあまあ。
けれど16金同桂15香17歩16香同歩と桂香を入手して、64桂75飛74香

とB面攻撃されたらやはり悪いのでしょう。悪いなりに戦えますが、やはり今一つです。


○ 26歩は有力で、大駒を近づける手筋です。

36飛37歩26飛27銀

とすれば飛車は捕獲できそうです。27同飛成同玉26歩38玉27銀49玉16銀成21飛15成銀28歩

長い手順で進めてしまいましたが、銀香と飛の2枚換え、でも後手の攻めが遅くなったので先手も指せるでしょう。

後手が26歩36飛の後34飛と引き上げたら25歩36歩66桂

と反撃です。銀を取るよりは74歩同歩同桂のほうを狙います。これもまあまあ。

後手が26歩に同角とすれば

(35歩も考えましたが同角37歩26歩は悪そうです。)27玉44角26歩

と受けます。この後は17歩の垂らしに清算すると64桂を食らいます。17歩には67銀、24飛にはやはり67銀か。後手が攻め切るのも難しいですが、まだ受けきりでもないという状況です。


× 次の候補は35歩

これも大駒を近づける手筋です。35同角には37歩として

36歩同歩44角は元に戻るので千日手。しかし17歩19銀18歩成同銀15香というどこかで見た手筋があって

15同香17歩19歩18歩成同歩24角

となって、37桂成からの殺到と15角を見られて受けきれません。

また、35同飛とされたら

37歩36歩67銀

37歩成同桂同桂成同銀25桂36歩37桂成同金31飛

これで64歩同歩56桂とか74歩同歩66桂とかの攻め合いです。でも17角成とされるのであまり自信はありません。


× 実戦は67銀でした。

銀を引くのは癪ですが、自然な感じです。でも46歩同飛55角

とされて、76飛45銀



あるいは56飛28角成同玉45銀

どちらでも飛車をぶつける筋で自信なしです。
例えばこの図なら76飛36飛同飛同銀37歩19銀39玉89飛

という調子。後手玉に手がついていないので攻め合いになりません。(45銀の時に23角が有力かも。でも36飛37歩56銀37歩67銀成同角成17歩という調子で後手のペース。)

残りは41飛成で

28角成同玉36飛37歩16飛

19銀から18飛成を防げず、詰めろが続く形なので後手が勝ちでしょう。

実戦は46歩ではなく55銀

と一手緩められたのでチャンスが来たのですが、26歩46歩に25歩が悪手。36飛

から16飛で終わってしまいました。

25歩では27銀

が有力ですが、47歩成同金直46歩48金引26角同銀36飛の強攻

は案外大変です。

ということはここでも27玉のほうですね。

これならどうにか受けきれたか。


☆ まとめ

形勢がよくない時には対応が難しくなります。だからこその序盤研究です。でも少しだけ悪いうちに気が付けばまだ修正が利きます。適宜に形勢判断をして、悪いのかな?と思ったら腰を据えて考えねばなりません。

攻め合いにはならない形だと判断したら受けるしかなく、相手の攻め駒が4枚なら受けきりは難しいです。ある程度受けて反撃しようと考えます。桂馬をもらえば64歩同歩65歩同歩64桂とか、74歩同歩66桂とか、楽しみはあるのでまだそんなにひどい状態でもないと言えます。

どうやってもつぶれそうだと思ったら37金として、間違えてくれ、と祈るしかないかもしれません。桂馬をもらうので反撃で勝負になるかもしれませんから。

まだ頑張れると思えば、26歩同角27玉という受け方。どうも27銀の形を目指すのは後で26歩同銀36飛の筋が付きまとうので受けきれません。そこに気が付いたら出口が見えてきます。
26歩に36飛は37歩26飛27銀、それで自玉がもつかどうかの確認をして、26歩の決行です。
玉というのは結構強い駒なので、駒落ちのような感じで受けてみます。

26歩以外の候補は35歩ですが、歩を渡すのが気がかり。35同角37歩の時に17歩の手筋がさく裂します。これは杉本先生の相振り飛車の本に出ていたはずです。相振り飛車を指すならこのシリーズは全部読んでおいたほうがよいでしょう。1歩渡しても歩の位置を下げる受けの手筋自体は時々出てくるのですけどね。

実戦の67銀は、形勢がよい時にやる受け方(何もさせない)という気がします。銀の動きで2手損することになるので、形勢が悪い時にはうまくいく感じがしません。互角なら銀が出て攻防の手になるというものです。

*間違いを直しました。20171015

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大山将棋研究(307); 石田流に持久戦

2016-10-14 | 大山将棋研究
昭和51年10月、森雞二先生と第3回名将戦です。


森先生の三間飛車で

位取りの拒否です。

さらに3筋の歩を交換すればずいぶん得をした気分かもしれませんが

3,4筋を手厚くしていくのも大山流。突きこされていた1筋から逆襲です。

香交換になりそうで、森先生も黙っているわけにはいきません。

ここでは25歩に同桂が利くのですね。26飛には37桂成24飛23歩。結局2枚換えになるので指しにくいです。

そこで桂交換から36金と出れば24桂で飛車交換。

どちらが得をしているのかわかりにくいのですが、こんなところに桂を打つ手があって、どうやら大山先生のほうが良いようです。

先手で飛車を打ち込んだ後、歩を補充して

また金を出ておく。いかにも大山先生らしい手が続きます。これで13の角を取ろうということなんです。

森先生も反撃します。

綱渡りのような受けがありました。2枚換えなら3枚持って先手玉を寄せようとしています。

大山先生は踏み込まずゆっくり寄せます。71竜同玉61歩成という手筋がありますが、まだここでは決まりませんから

角を取りに行きました。角を持てば71竜以下が決まります。

森先生は角を捨てて粘りに出ますが

大山先生は少しゆっくりした攻め方。次に93歩成から91角の寄せがあります。

厳しい寄せ筋が続き

投了図。

大山先生の快勝でしたが、見ているほど簡単ではありません。森先生の将棋は悪くなると特徴が出て、少し悪いところで耐えたり逆転を狙ったり、精神的にも強いのです。「終盤の魔術師」と呼ばれました。
本局は大山先生が焦らず少し安全に攻めたという流れです。それにしても、中盤で普通に指して居飛車よしとは思えませんでしたが、大山先生はどこから有利だとわかっていたのでしょう?

#KIF version=2.0 encoding=UTF-8
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山棋聖
後手:森雞二8段
後手省略名:森
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 6六歩(67)
4 3二飛(82)
5 5六歩(57)
6 3五歩(34)
7 4八銀(39)
8 5二金(41)
9 6八玉(59)
10 6二玉(51)
11 7八玉(68)
12 6四歩(63)
13 6八銀(79)
14 7四歩(73)
15 2六歩(27)
16 7二銀(71)
17 5七銀(48)
18 1四歩(13)
19 9六歩(97)
20 7一玉(62)
21 5八金(49)
22 1五歩(14)
23 6七銀(68)
24 6三金(52)
25 2五歩(26)
26 3六歩(35)
27 同 歩(37)
28 同 飛(32)
29 3七歩打
30 3四飛(36)
31 4六歩(47)
32 5四歩(53)
33 4七金(58)
34 3三桂(21)
35 3六歩(37)
36 8二玉(71)
37 3七桂(29)
38 4四歩(43)
39 6八金(69)
40 9四歩(93)
41 2六飛(28)
42 3二銀(31)
43 1六歩(17)
44 同 歩(15)
45 同 香(19)
46 1五歩打
47 同 香(16)
48 同 香(11)
49 1六歩打
50 2四歩(23)
51 1五歩(16)
52 2五歩(24)
53 1六飛(26)
54 2四飛(34)
55 3五歩(36)
56 2六歩(25)
57 2五歩打
58 同 桂(33)
59 同 桂(37)
60 同 飛(24)
61 3六金(47)
62 2四桂打
63 2五金(36)
64 1六桂(24)
65 2四桂打
66 2一銀(32)
67 4一飛打
68 3一歩打
69 2六金(25)
70 2八桂成(16)
71 2三歩打
72 1三角(22)
73 2五金(26)
74 3八成桂(28)
75 6五歩(66)
76 同 歩(64)
77 4四角(88)
78 6六香打
79 6四歩打
80 6七香成(66)
81 同 金(68)
82 4三歩打
83 同 飛成(41)
84 6四金(63)
85 6二歩打
86 7一金(61)
87 4一龍(43)
88 2九飛打
89 1四金(25)
90 6三金(64)
91 1三金(14)
92 5三銀打
93 3三角成(44)
94 4七歩打
95 9五歩(96)
96 4八歩成(47)
97 9四歩(95)
98 6二銀(53)
99 6四歩打
100 同 金(63)
101 4四馬(33)
102 6一銀(72)
103 3四角打
104 7二銀(61)
105 5二角成(34)
106 6三金(64)
107 6四香打
108 6六歩(65)
109 7一龍(41)
110 投了
まで109手で先手の勝ち
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大山将棋研究(306); 四間飛車に腰掛銀位取り

2016-10-13 | 大山将棋研究
昭和51年10月、内藤国雄先生と第15期十段戦です。


大山先生の四間飛車に内藤先生は右四間飛車の予定だったのでしょう、

大山先生は35歩と早く突いたので

65の位を取ることにしました。

大山先生は6筋の歩を交換して高美濃に。

ここから戦いの始まりです。突かないで86角というのもありました。

内藤先生は86角と変化球で64歩を決めて

角を戻します。55歩に

左の銀も繰り出して中央の勢力争いです。大山先生も桂を跳ねて銀を出て支えます。

ここで焦点の歩の手筋。

飛車で取らせて銀をさばきました。これに対して46歩が強手で、なかなかの手です。後に王手飛車の筋がちらつくのです。
位取りだったのにさばき合いになっては、内藤先生の予定が狂ってきた感じがします。

67金右と逃げておいてから飛車を取ります。でも と金が大きいですね。

普通は飛車を打ってから銀を打つとか歩を成るとか考えるものなのですが、後で66歩から67の金をどかして王手飛車という筋があるので打ち場所が難しい、だから清算して

飛車を打てば角を使わせて王手飛車が消える、ということでした。

でもこうなると大山先生の美濃囲いは堅いのです。

これで底歩が利くので2枚飛車は怖くありません。

内藤先生は93金から玉を追いますが

飛車の横利きを止められると後手玉が広くて捕まえられません。

詰めろはかけましたが

大山先生は香を食いちぎって迫れば寄り筋です。

投了図。

内藤先生はきれいな手を好むので位取りは向いていない気がします。44歩が焦点の歩でしたが、さばき合いは先手玉が薄く、失敗しました。でも44歩としないと4筋の歩を突きだされます。仕掛けが思わしくなかったということでしょう。右桂が参加できない状態で45歩は方向が違うのかと思うのです。
後手をもって、美濃囲いの堅さ広さというのを感じ取るのによい題材です。大山先生の美濃囲いは穴熊よりも堅く感じます。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:内藤国雄9段
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 6八玉(59)
8 4二飛(82)
9 7八玉(68)
10 6二玉(51)
11 4六歩(47)
12 4三銀(32)
13 4七銀(48)
14 3三角(22)
15 5六銀(47)
16 3五歩(34)
17 5八金(49)
18 7二玉(62)
19 2五歩(26)
20 8二玉(72)
21 9六歩(97)
22 9四歩(93)
23 6六歩(67)
24 7二銀(71)
25 6五歩(66)
26 5二金(41)
27 6八銀(79)
28 5四歩(53)
29 6七銀(68)
30 5三金(52)
31 6八金(69)
32 3二飛(42)
33 1六歩(17)
34 6四歩(63)
35 同 歩(65)
36 同 金(53)
37 6五歩打
38 6三金(64)
39 2六飛(28)
40 1四歩(13)
41 7七角(88)
42 7四歩(73)
43 4五歩(46)
44 4二飛(32)
45 8六角(77)
46 4一飛(42)
47 6四歩(65)
48 6二金(63)
49 6五銀(56)
50 4五歩(44)
51 7七角(86)
52 5五歩(54)
53 6六銀(67)
54 7三桂(81)
55 7四銀(65)
56 5四銀(43)
57 2四歩(25)
58 同 歩(23)
59 4四歩打
60 同 飛(41)
61 5五銀(66)
62 同 銀(54)
63 同 角(77)
64 4六歩(45)
65 6七金(58)
66 4七歩成(46)
67 4四角(55)
68 同 角(33)
69 6三歩成(64)
70 同 銀(72)
71 同 銀成(74)
72 同 金(62)
73 4二飛打
74 6二角打
75 5二銀打
76 同 金(61)
77 同 飛成(42)
78 7二銀打
79 6一銀打
80 7一銀打
81 7二銀成(61)
82 同 銀(71)
83 6一銀打
84 7一銀打
85 6四歩打
86 同 金(63)
87 2四飛(26)
88 6三銀打
89 7二銀成(61)
90 同 銀(71)
91 4一龍(52)
92 9九角成(44)
93 9三金打
94 同 玉(82)
95 9一龍(41)
96 9二香打
97 8二銀打
98 8四玉(93)
99 9二龍(91)
100 4四歩打
101 7七桂(89)
102 6五桂(73)
103 7五香打
104 同 金(64)
105 同 歩(76)
106 8九銀打
107 6九玉(78)
108 7七桂(65)
109 同 金(67)
110 5八金打
111 同 金(68)
112 7七馬(99)
113 投了
まで112手で後手の勝ち
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