大阪では連続猛暑日の新記録となった今年の夏、ようやく秋の風が感じられるようになった9月の最終週にようやく夏休みをいただくことができました。駆け込み消化です。折角のまとまったお休みなので、例によってバスde温泉を実行してみることにします。
仕事を終えていったん家に帰り、急いで着替えて旅の支度を整えます。はい、今回は夜の出発です。これだと少ない日程を有効に消化できるからね。旅のスタートは大阪あべの橋駅の高速バス乗り場。普段、通勤の時に羨ましく見ていた「しまんとブルーライナー」にのって、高知県の西部、中村を目指します。
この路線は高知西南交通と近鉄バスの共同運航。21:00に京都駅を出発、大阪のあべの橋を22:15、その後、難波・梅田・神戸三宮を経由して、朝の7時代に高知県の中村・宿毛を結ぶ、昼行1便、夜行1便の高速バスです。車両は日野の新型セレガ、もう高速バスではスタンダードと言ってもいいほど普及しているタイプですね。
あべの橋で乗ったときはチラホラ程度だった乗客も、梅田と三宮で空席も埋まり、ほぼ満席状態で三宮を出発、明石海峡大橋を渡り、淡路サービスエリアで深夜の休憩を済ますと、その後すぐに消灯、外は暗くてよく分からないが高速道路をひた走っているようです。
ぐっすり眠った翌朝、日も明けきった7:05に中村駅に到着し、ここで下車。この先、宿毛に向かうバスを見送ります。土佐くろしお鉄道の本社もある中村駅には新しい待合室もあって、ここで8時まで時間をつぶします。
駅前のレンタサイクル屋さんが開くと同時に自転車を借りることに。「バスde温泉」の旅では初の試み、レンタサイクルを使って中村市内から四万十川を散策することにします。平成の大合併によって四万十市となった中村は、高知県西部の中心都市で、戦国時代には土佐一条氏の城下町。駅から少し離れている市街地は、碁盤目状に区画されており、「土佐の小京都」として知られているが、1946年の南海地震で被災したので、古い町並はほとんど残っていません。
この地方都市に多くの観光客が集まる理由は、なんといっても四万十川に尽きる。レンタサイクルで借りた自転車は電動アシスト付き。上流に遡っていくにもかかわらず楽ちん楽ちん!
川べりのさわやかな風を浴びながらのサイクリングは快調!30分ほどで佐田の沈下橋に着きました。潜水橋とも呼ばれる沈下橋は、普段の水位では橋として使えるものの、増水時には水面下に沈んでしまう橋のことで、橋桁を低くできること、橋の長さを短くできることで設置費用が安いため、特に山村で多くみられました。反面、増水時には橋として機能しなくなるし、構造上、欄干を設置できないため、転落事故が絶えず、現在では少なくなりつつあります。
この佐田の沈下橋も欄干は無く、ここを自転車で渡るのは少なからず恐怖を感じます。しかし、橋から川面が近いので、日本有数の清流を間近に見ることができる。川の中に塩ビ管が沈められているのを発見!これは天然鰻の罠ですね。鰻さんがこのパイプに棲みついたところを一気に引き上げる。まさに鰻の寝床!実にのどかな、なんだか日本の原風景みたいな風情にまったりしてしまいます。ひとしきり癒されたところで今日の早めの昼食を。はい、もちろん鰻です。
来た道を、今度は下流に向かって中村市街に戻ります。下りもやっぱり気持ちええ。ところが、行きはあれほど楽ちんだった電アシ自転車だが、バッテリーが切れて全くアシストしなくなりました。これならただの重いだけの自転車やん!スピードは極端に落ちるが次の列車の時刻は迫ってくる。田舎の路線のこと、これを逃すと次は恐ろしく先になるので、肩で息しながら、必死のパッチでペダルを漕ぐ…やっとこ中村駅に戻ってこれました。(よかった…)
中村駅から土佐くろしお鉄道のディーゼルカーに乗って宿毛へ。この鉄道は国鉄の末期、工事が凍結された宿毛線と阿佐西線と、廃止対象となった国鉄中村線を引きうけて、高知県と沿線自治体が主体となって設立された第三セクター鉄道会社です。中村から宿毛の間は工事凍結路線をこの鉄道が開業させたもので、全線立体交差の新しい路線です。
車両はこの鉄道の創成期に登場したディーゼルカーで、車体は両運転台式の17m級、座席は転換クロスシートとロングシートを組み合わせたセミクロスシートになっています。
高架になった路線を快調に飛ばし、約30分で宿毛駅に到着。端頭式のこの駅では、2005年に岡山発特急「南風17号」が止まり切れずに脱線、外壁を突き破り、車両は原形をとどめぬぐらいに大破。運転士が死亡、車掌と乗客9名がケガを負った大事故がありました。
そのため、事故前と後では駅舎の姿も変わっているんですね。
宿毛駅前から宇和島自動車のバスで宇和島を目指します。車両はふそう・エアロスターのノンステップです。宿毛からしばらくは山道の峠越え、この峠が県境になっていて、ここから愛媛県。このバス路線はバイパスを通らず旧道の宿毛街道をくねくねと縫っていく。なので、街道を歩くお遍路さんの姿もちょくちょく見ることに。四国を感じますね。
愛南町の城辺BSが宇和島自動車の営業所になっていて、ここで運転士が交替します。この辺りは少し賑わっているので漁港のようです。そしてしばらくすると宇和海が車窓に広がってきます。
宿毛駅から2時間弱の乗車で宇和島市内に入ります。バスは終点の宇和島駅前に到着し、ここで降りました。宇和島市は南予地方の中心都市で宇和島城を中心に発展した城下町です。闘牛でも知られているが、実は食の宝庫でもあるんですよ。
駅前のロータリーには闘牛の牛のブロンズ像と、それに並んで、宇和島鉄道の蒸気機関車が展示されています。この宇和島鉄道は軌間762mmの軽便鉄道だったのだが、これを国有化した後、改軌したのが現在の予土線です。
宇和島城は藤堂高虎によって築かれたお城。小高い丘の上てっぺんに天守と本丸、それを囲むように二ノ丸などを配置した平山城で、昔は西側半分が海に接しているとともに、東側に海水を引き込んでいた海城だったようです。時間もあるので登ってみることにします。不規則な石段は、バスに座りっぱなしだった足に結構堪える。それでもちょっとは運動しておかないと晩ご飯がおいしく食べれなくなるからね。
天守からは宇和島市内が一望。小規模な都市ながら大きい港や、近代的な病院があったりして、南予の中心地らしい矜持を感じます。
宇和島城のおひざ元、宇和島随一の商店街「きさいやロード」のアーケードを終点あたりにあるお店で宇和島の郷土料理をいただくことにします。
今夜の宿はJR四国の運営する「ホテルクレメント宇和島」です。宇和島駅に直結の便利さに惹かれました。ええ、珍しく温泉なし。四国は温泉が少ないので仕方ないですね。