REPORT

SHIMANO Racingの活動をブログで紹介します。

[Next Race]全日本選手権個人TT&全日本選手権ロードレース

2016年06月22日 | レース・イベント情報

【全日本自転車競技選手権大会 ロード・レース】
【全日本選手権個人タイム・トライアル・ロード・レース】

期日:2016 年6 月24 日(金)~6 月26 日(日)
【個人タイムトライアル】 サンセットパームライン(11.2 km/周)
【個人ロードレース】 大島西海岸コース(11.9 km/周)

6月24日(金)【個人タイムトライアル】
・10:00~ MU23 個人タイムトライアル・スタート11.2 km (11.2 km× 1 周)
 出走予定選手:小山貴大
・13:15~ ME 個人タイムトライアル・スタート33.6 km (11.2 km× 3 周)
 出走予定選手:木村圭祐・湊諒

6 月25 日(土) 【個人ロードレースU23】
・9:00~ U23 個人ロード・スタート 119.0 km (11.9 km× 10 周)
 出走予定選手:秋田拓磨 西村大輝 小橋勇利 横山航太 水谷翔 小山貴大

6 月26 日(日)【個人ロードレース 男子エリート】
・8:00~ ME 個人ロード・スタート154.7 km (11.9 km×13 周
 出走予定選手:入部正太朗・木村圭祐・秋丸湧哉・湊諒

国内選手権勝者を決する2つの大会『全日本選手権個人タイム・トライアル』『全日本選手権ロード・レース』が伊豆大島にて開催されます。

この2つのレースは日本籍のレーサーにより、その年の日本一を決める最重要レース。ここで勝利し日本チャンピオンの称号を手に入れた選手は、世界各国のチャンピオン同様、各カテゴリーにて1年間ナショナルチャンピオンジャージを纏い、国際レースを走る事が許されます。この特別なレースでシマノレーシングチームはタイト奪取に挑みます。

大会スケジュールは下記大会公式ホームページをご覧ください。

全日本選手権公式HP↓
http://nationalchampionships-road.com/

シマノレーシングライブブログ↓
http://blog.goo.ne.jp/liveshimano

 


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[Report]2016年ツアー・オブ・ジャパン総括 若きシマノレーシングのネバーギブアップ

2016年06月22日 | レースリポート

ツアー・オブ・ジャパン2016、シマノレーシングへ密着し取材を行った光石氏(OCN)による総括レポート。
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2016年ツアー・オブ・ジャパン総括 若きシマノレーシングのネバーギブアップ


国内最大のステージレース、ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)。史上初めて休息日なしの8ステージ制で開催された2016年大会(5月29~6月5日開催)は、新城幸也(ランプレ・メリダ)の復活勝利、チーム右京のオスカル・プジョルの総合優勝など日本勢の活躍で、大きな盛り上がりを見せた。

その中で、名門シマノレーシングは東京五輪をはじめとする国際舞台で戦える選手育成を視野に、このTOJも平均年齢23.2歳の若手メンバー中心で挑んだ。世界の強豪相手に挑戦を続けた若きシマノレーシングの8日間を振り返る。

■ターゲットは「総合25位」

今年のTOJで、ひとつのターゲットになったのが総合25位という順位だ。

TOJはUCI(国際自転車競技連合)アジアツアーの中で1クラス(HC=超級、1クラス、2クラスの3つの中で2番目)のステージレースにカテゴライズされる(UCI2.1と表記。2はステージレース、1はクラスを表す)。

昨年まで、このカテゴリーのレースに与えられていたUCIポイントは、各ステージの上位6人(1位16pt、2位11pt…6位2pt)、そして総合成績の上位12人(1位80pt、2位56pt…、12位3pt)までだった。しかし、今年からはポイント配分が各ステージ上位3人(1位14pt、2位5pt、3位3pt)となった代わりに、総合は25位(1位125pt、2位85pt…16~25位3pt)まで獲得できるようになった。

UCIポイントの詳細な仕組みはやや複雑だが、簡単に説明すると次のようなメリットがある。選手にとってポイントは、その選手の価値となる。五輪や世界選手権、アジア選手権などの国際大会の出場権を得るための審査基準のひとつとなり、他チームへ移籍するときにも有利に働く。

チームにとっては、所属選手の合計ポイントが多いほど大きなレースに招待されやすくなる(実際、昨年のシマノレーシングはわずか1ポイント差でジャパンカップ出場を逃している)。

また国別では、その国の上位8選手の合計ポイントによるランキングが高いほど五輪、世界選手権などの出場枠が増えるのだ。

さらに補足だが、昨年までツール・ド・フランスなどを含む最高峰のUCIワールドツアーと各大陸(アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニア)ツアーは別々のランキングだった。しかし、今年からそれらを統一したUCIワールドワンキングも新たに設立された。つまり、アジアツアーのTOJでポイントを獲得すれば、クリス・フルームやペーター・サガンといった世界のトップ選手と同じランキングに名前が載ることにもなるのだ。

昨年までTOJで総合12位のポイント圏内に入るには、終盤の富士山ステージなど難コースで上位に食い込む必要があった。しかし、総合25位以内であれば日々のタイム差を最小限に抑えれば、不可能な順位ではない。より多くの選手にチャンスが生まれたともいえる。

実際、TOJに出場するような選手たちでも1ポイントも獲得できないままシーズンを終えることも多く、わずか1ポイントでも獲得することは大きな意味を持つ。

レース前の合宿では重要ステージの試走を行い、準備を整えてきたシマノレーシング。若手をたばねる野寺秀徳監督も「ステージ優勝とともに、総合25位以内に複数の選手を送り込む」と意気込んで、TOJが幕が開けた。

シマノレーシングのTOJ出場メンバー。左から小橋勇利(21)、横山航太(20)、入部正太朗(26)、湊諒(24)、木村圭佑(24)、秋丸湧哉(24)。平均23.2歳の若い布陣で臨んだ。今年のシマノレーシングのジャージはブラックがベース ※カッコ内はTOJ開幕時の年齢


シマノレーシングを率いる野寺秀徳監督。現役時代は全日本ロード王者に2度輝き、ジロ・デ・イタリアにも2度出場した名選手。監督として采配を振るうとともに、選手たちがレースに集中できる環境づくりにも奔走する


2013年に2クラスから1クラスに昇格し、レースのレベルが上がったTOJ。ランプレ・メリダなど世界の強豪チームも参戦するようになり、さらに山岳コースも多いことからアジア屈指の厳しいレースに。その分、日本勢が好成績を残すことも難しくなっている


応援の子どもたちにボトルをプレゼントするNIPPOヴィーニファンティーニの選手。日本各地を回るTOJは、地元との交流も魅力のひとつ

■予期せぬ主役交代劇

しかし、シマノレーシングの目論見は、早くも第2ステージ京都でわずかに狂いを見せる。

今年から新設された京都のコースは、ゴール前こそ広いストレートだが、細く曲がりくねったアップダウンの区間も多く、路面が荒れているところも。この上り区間でキャプテンであり成績を狙うエースでもある入部正太郎が原因不明の不調で集団から遅れ、このステージだけで25分以上もの遅れをとる。

また上りを得意とし、総合25位以内を狙っていた秋丸湧哉は段差に車輪を落としてしまい、両輪ともパンク。こちらも15分以上のタイムロスを喫し、チーム期待の2人が早くも総合争いから脱落した。

しかし、野寺監督すらも予想しなかった展開で、今回のチームメンバー最年少20歳の横山航太が輝きを見せた。

初日の第1ステージ堺(個人TT)で14位とチームトップのタイムを残した横山は、京都ステージと美濃ステージはいずれもゴールスプリントにからみ、それぞれ13位と15位。3日連続で15位以内でフィニッシュし、総合でも11位につけた。新人賞のホワイトジャージ争いでも僅差の3位につけ、日本人選手でもっともジャージに近い存在としてメディアからの注目度も上がった。

昨年まではアシストとして走る機会が多かった横山だが、総合上位で走る経験は彼にとっても貴重だったようだ。「去年までは集団から遅れたら、明日頑張ろうと切り替えていたが、今年は遅れても遅れを最小限にしないといけない。プレッシャーはありますね」

残念ながら第4ステージいなべでタイムを失い、総合争いからは脱落した横山だったが、地元長野県の第5ステージ飯田では終盤に集団から飛び出すアタックを見せ、レースを沸かせた。TOJ全体を見ても、前半戦を盛り上げた若手のひとりだった。

横山に代わってチームの中では木村圭佑、湊諒の2人がUCIポイントを目指す立場となった。2人は第4ステージいなべが終わった段階で総合首位からタイム差2分強の40位前後と、まだまだ25位以内を狙える位置につけていた。

プロ3年目24歳の木村は「自分に向いている」という第5ステージ南信州で、序盤に2度に渡ってアタック。その後、メイン集団に吸収されてからも遅れることなく、最後はゴールスプリントで10位に飛び込んだ。

横山同様、去年まではアシストを務めていた木村は「去年まではいつも最後の方を走っていた」というように、自らの成長に手ごたえを感じていたようだ。

続く第6ステージ富士山で奮闘したのは、チーム右京から移籍してきたプロ2年目の湊諒。TOJ初出場の湊だが、ふじあざみラインの激坂でチームトップの45分22秒でフィニッシュする。

この時点で湊は総合36位、目標の総合25位とは約2分半差だ。「ステージレースで自分の総合を意識して走るのは初めてだけど、最後までチャレンジする」とジャンプアップを目指して、続く第7ステージ伊豆に挑んだ。

その伊豆では、1周目終盤のペースアップで早くも集団が2つに分かれる。湊はチームでただひとり20数名のメイン集団に残り、望みをつないだ。ハイペースの集団から遅れかけながらも追いつく粘りを見せたが、ついに3周目に力尽き、グルペット(完走目的の後方集団)に吸収される。

また、この伊豆では好調の木村もステージ上位を狙っていたが、1周目の集団ペースアップ時に後輪がパンクし、チャンスを失ってしまったのもチームにとってアンラッキーだった。

最終的に、湊の総合35位がチーム最上位と目標の総合25位には届かなかったシマノレーシング。優勝争いにはまだ手が届かないレベルの戦いだったが、日々それぞれの目標に向かって緊張感あるレースを繰り広げたことで、選手としての力強さを身に着けたのは間違いないだろう。


TOJメンバー最年少の横山航太。シクロクロスでU23全日本王者になったこともある期待の若手だ


第3ステージ美濃、秋丸に守られ集団内を走る横山(中央)。このステージでも15位に入る健闘を見せた


昨年は鈴鹿国際ロード、JPTおおいたサイクルロードで表彰台に上がるなど、着実な成長を見せるプロ3年目の木村圭佑。TOJ期間中も好調をキープしていた


第5ステージ南信州のゴールスプリント。優勝したダニエルアレクサンデル・ハラミリョ(ユナイテッドヘルスケア)の左後方に10位でゴールした木村


第6ステージ富士山、湊諒はチームトップの45分22秒でゴール。自身はこれ以上のタイムを目指していたが、連戦の疲れからかやや伸び悩んだ


TOJ初参戦ながら、最終的にチームトップの総合35位でフィニッシュした湊。UCIポイントには届かなかったが、将来に向けて可能性を感じさせた

■無線と車載カメラ

今年のTOJでの話題のひとつが、無線の再導入だ。一昔前までは下位カテゴリーを含めほとんどのロードレースで使用されていた無線だが、UCI競技規則の変更によりここ数年間はツール・ド・フランスなど世界最高峰のUCIワールドツアーでしか使用が許されていなかった。

しかし、今年再び規則が改正され、1クラス以上のレースで無線が解禁。TOJでも5、6年ぶりに使われることになった。

周回が短い堺ステージでは使用されなかったので、続く京都ステージからようやく出番となった。シマノレーシングの若い選手たちは無線を使うのはほぼ初めてとあって、まるで新しいおもちゃを手にしたよう。「どっちの耳に(イヤフォンを)するんですか?」と新鮮な表情を見せていた。

ちなみに、過去に無線の使用経験がある秋丸は「あまり使ってよかったことはなかったかな」とあまり好きじゃない様子。海外のレースでは、監督からの指示がうるさく感じたこともあるようだ。

無線をめぐっては、ちょっとしたハプニングもあった。ロードレースでは審判から各チームカーへ連絡するもうひとつの無線系統、いわゆる競技無線(ラジオツールとも呼ばれる)というものがある。第3ステージ美濃では、入部が手を挙げてチームカーを呼んでいると競技無線を通じてチームカーに連絡が入った。実は、入部は沿道のシマノ応援団に手を振っていたのだが、審判がそれを勘違いしてしまったのだ。

しかし、野寺監督は入部とチームの無線で直接やりとりできるので、補給やトラブルではないのは承知済み。チームカーを集団のところまで上げなかった。ところが、審判からの競技無線は一方通行なので、野寺監督から審判にそれを伝える手段がない。

審判にしてみればシマノレーシングのチームカーが上がってこなかったのが不思議で、何かトラブルでもあったのかと心配したようだが、後で野寺監督から事情を聴き、ようやく謎がとけたということだった。

もうひとつ注目のアイテムは、車載カメラだ。高性能軽量の小型カメラが普及し、選手目線の迫力ある映像が届けられるとあって、最近はヨーロッパのロードレース中継でも使われる車載カメラだが、TOJでも数年前から徐々に導入されるようになってきた。今年はテレビ番組用にシマノ製のスポーツカメラCM-1000が使用され、シマノレーシングの選手のバイクにも何度か装着された。

しかし、2~4時間に及ぶレースではバッテリーが最後まで持たないため、選手自ら残り2周などのタイミングで録画のスイッチを押さなければいけない。さらにカメラはハンドルの下に装着されるので、スイッチも下向き。しかもそのスイッチを長押ししないと録画がスタートしないとあって、選手にとってはちょっと難しい作業でもあった。ある選手はスイッチを押したつもりだったけど、結局、録画されていなかったりなんてこともあったりした。

国内最高峰のステージレースであるTOJでは様々な新しい試みが行われているが、万事順調にいくわけではない。ちょっとした失敗もつきものなのだ。


今年からTOJに復活した無線をチェックする秋丸。周りの選手たちもどこか楽しそう


無線機はビブパンツのポケットに収納するが、ポケットがないときはビニール袋と安全ピンを使用する応急処置も


美濃の沿道に詰めかけたシマノ応援団。入部が手を振って声援に応えたところ、審判がチームカーを呼んでいると勘違いしたようだ


今年のTOJでは、シマノ製のスポーツカメラCM-1000が車載カメラとして使用された


車載カメラの取り付けをチェックする小橋

■家族と完走したTOJ

今年からシマノレーシングに加入した21歳の小橋勇利。U23日本代表にも選ばれる注目の若手で、TOJではシマノレーシングのエーススプリンターに起用された。スプリント力はもちろん、上りもこなせるのが持ち味で「集団の人数が絞り込まれた状態で、勝利を狙える」と野寺監督も期待を寄せている。

TOJ前哨戦として第1ステージ直前に行われた堺国際クリテリウムでは、ラスト1周でシマノレーシングのトレインが位置取りをサポートし、小橋が日本人トップの6位に入った。それでも本人は外国人スプリンターに敗れたことを悔しがっており、闘争心をみなぎらせていた。

翌日の第2ステージ京都も小橋にとって狙えるステージだったが、終盤に落車。左肩、左ひじ、左脚に大きな擦過傷を負った。実はこのときの落車が周りの選手にとって危険だったと他チームの選手から注意される一幕もあり、若さゆえの粗削りな部分も見せてしまった。

続く第3ステージ美濃では治療の跡が痛々しい状態ながらも、スプリントに挑んだ。昨年は、日本ナショナルチームの一員としてTOJに出場していた小橋。そのときはゴール前で埋もれてしまった反省から、この日は早めにスプリントを仕掛け、一時は3番手あたりまで上がった。最終的には他の選手にかぶされて集団の中に沈むも、ケガをしてもあきらめないガッツを見せた。

実はこのTOJ期間中、小橋の家族が全ステージ応援に訪れていた。「家族もツアー・オブ・ジャパンです」と小橋も笑顔を見せていた。

両親は北海道で経営しているカフェを休み、高校3年生の妹さんも学校を1週間休んでいたとのこと。お母さんも「お客さんも(応援に行くのは)わかってもらってるんで」と笑っていた。

昨年のTOJは伊豆でリタイアに終わった小橋だったが、今年はケガを抱えながらも家族と一緒に東京まで完走。その東京ではスプリント勝利に意欲を見せていたが、チームメイトを含む逃げが決まってしまった。小橋にとって次なる大きな目標は、6月末のU23ロード全日本選手権。そこでは、家族に勝利を届けられると期待したい。


第2ステージ京都で落車し、負傷した小橋勇利。しかし、闘争心は衰えていなかった


最終日の東京、集団スプリントになればシマノレーシングは小橋(中央手前)で優勝を狙う作戦だった


お店と学校を休んで応援にかけつけた家族と一緒に、TOJを完走した小橋

■東京ステージでつかんだ「ひとつの勲章」

最終日の第8ステージ東京。結果から先に言うと、レース序盤にできた逃げ集団に入部、秋丸が入り、この集団が逃げ切って入部が4位に入った。

入部は2日目の京都で、大きくタイムロスしていた。「自分の体じゃないみたい」「頭が痛い」「気管支が痛くて、呼吸がしにくい」など体の不調を訴えていたものの、具体的な病名はなく、これといった治療も行えなかった。

総合では最下位に沈み、「完走するので精一杯。チームメイトにアドバイスしたりする状況じゃない」と語っていた。そうは言いつつも、レース前に後輩たちに声をかける姿は、キャプテンとして最低限できることはやろうという気持ちが垣間見えた。そして、「徐々によくなっている」「いつかチャンスが来る」と復調を信じ、我慢の走りを続けていた。

第6ステージ富士山のスタート前には自ら六角レンチをもって、ポジションを調整。ハンドルを上げ、サドルを下げた。ゴール後には「ポジションをいじったら感触がいい。今日は息ができる。監督、明日からは行けますよ」と手ごたえをつかんだようで、力強く宣言した。

もうひとり、不完全燃焼のレースにフラストレーションを募らせていたのが秋丸湧哉だ。レース前は好調をアピールし、UCIポイント獲得に自信を見せていた。それだけに、京都ステージのパンクで遅れたときは「オレのTOJが終わった」と落胆していた。

しかし、過去にヴィーニファンティーニNIPPOに所属するなど海外経験豊富な秋丸は、チームの中でもプロ意識が高い選手。京都で遅れた後は自らステージを狙えるチャンスを顧みず、総合上位を目指すチームメイトのアシストを積極的にこなした。横山や木村らも、秋丸に対する感謝を何度となく口にしていた。

本人は「アシストなんて誰にでもできる。自分の成績を出せなければ意味がない」と謙遜気味に語るが、結果として最後の東京でもチームの作戦を着実に実行するプロの走りを見せた。

つまり、東京ステージではこの2人が逃げたのだ。

平坦の東京ステージでは集団スプリントになるのがお決まりの展開だが、野寺監督はイラン勢、特に1分08秒差の総合3位につけるミルサマ・ポルセイェディゴラコール(タブリーズシャハルダリ)が総合逆転を狙って逃げ切りを仕掛けてくると見ていた。つまりステージ優勝も逃げ切りで決まる可能性があり、逃げ集団の中に選手を入れる作戦を立てていたのだ。

大井ふ頭の周回コースに入って逃げた8人の中には、ようやく自分の走りを取り戻した入部が入った。ここにはポルセイェディゴラコールこそ入らなかったものの、前日に復活勝利を挙げたばかりの新城幸也、飯田ステージで逃げ切り勝利目前までいった内間康平(ブリヂストンアンカー)ら豪華な顔ぶれがそろった。イラン勢も、TOJ中盤で総合首位に立っていたメヘディ・ソフラビ(タブリーズシャハルダリ)ら2人いる。

集団内でこれを見ていた秋丸は「この逃げは決まる」と察知し、すぐさまホセビセンテ・トリビオ(マトリックス・パワータグ)とともにブリッジをかける。これで逃げは計10人となり、この中にシマノレーシングだけが2人を送り込んだ。秋丸のファインプレーで、理想的な展開を手に入れたのだ。

さらに、この逃げとメイン集団との差は最大2分41秒まで拡大。距離が短い東京ステージでここまで差が開くのは異例のことで、逃げ切りの可能性は高まってくる。

最終的にペースアップに力を尽くした秋丸らはラスト1周で脱落したものの、5人が集団を振り切ってゴールへと飛び込んだ。このステージの平均速度が49.1㎞/hだったことを考えると、いかに逃げ集団とメイン集団が全速力で追いかけあっていたかがわかる。

そして注目の5人によるスプリントで、入部は惜しくも4位に終わった。「アヴァンティの選手(サム・クローム)にやられた。脚がないと思っていたけど、ためられていた」と、絶好のステージ優勝のチャンスを逃し、さらにUCIポイント圏外に終わったことを悔しがっていた。しかし、数日前の絶不調を思えば、ここまで復活したのは一安心と言える結果だった。

さらに、メイン集団のスプリントで小橋が12位に入り、アシストした湊も18位に。この結果、東京ステージのみのチーム順位(各チーム上位3人の成績をもとに決定)で、シマノレーシングは1位となった。これはUCIポイントもつかず、表彰台に上がれる賞でもない。しかし、強力な海外勢相手に満身創痍になりながらも、成長過程の若者たちが最後まであきらめずに戦ったことを証明するたったひとつの勲章となった。


ファンの方が作ってくれた入部の応援フラッグ。キャプテン入部がキャプテンアメリカとなり、野寺監督はアイアンマンに


自分が成績を狙えない状況でも、後輩たちにアドバイスを送るキャプテンらしさを見せていた


第6ステージ富士山のスタート前にサドル高を調整する入部。これが功を奏し、復調へとつながっていった

TOJ開幕前は総合25位以内、UCIポイント獲得に自信を見せていた秋丸湧哉だったが、パンクでチャンスを失う


タイムロスをしてからは、つねにチームメイトのそばでアシストの走りに徹した秋丸


第8ステージ東京、逃げの10人の中にシマノレーシングは入部と秋丸の2人を送り込む作戦通りの展開に


逃げ集団のペースアップに貢献した秋丸はラスト1周で脱落。観客の拍手に手を挙げて応える


最後は5人が逃げ切ってスプリント。入部(左)は惜しくも4位で、悔しそうな表情を見せる


第19回ツアー・オブ・ジャパン第8ステージ東京 インタビュー(1)

第19回ツアー・オブ・ジャパン第8ステージ東京 インタビュー(2)



第19回ツアー・オブ・ジャパン
<最終総合順位>
1 オスカル・プジョル(チーム右京)19:22'37"
2 マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)+1'05"
3 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(タブリーズ シャハルダリ)+1'08"
4 ダニエル・ホワイトハウス(トレンガヌ サイクリングチーム)+1'23"
5 ラヒーム・エマミ(ピシュガマン サイクリング チーム)+1'24"
6 ガーデル・ミズバニ・イラナグ(タブリーズ シャハルダリ)+1'43"
7 キャメロン・バイリー(アタック・チームガスト)+2'00"
8 アミール・コラドゥーズハグ(ピシュガマン サイクリング チーム)+2'27"
9 トマ・ルバ(ブリヂストン アンカー サイクリングチーム)+2'52"
10 増田 成幸(宇都宮ブリッツェン)+2'58"

35 湊 諒(シマノレーシング)+25'47"
38 木村 圭佑(シマノレーシング)+27'44"
39 横山航太(シマノレーシング)+30'53"
64 小橋 勇利(シマノレーシング)+1:05'25"
68 秋丸 湧哉(シマノレーシング)+1:10'17"
70 入部 正太朗(シマノレーシング)+1:40'20"

Text&Photo Mitsuishi (OCN)


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