村上春樹『アフターダーク』から。小説は何の盛り上がりもなく終わり、肩透かしをくらいましたが。それでも心に残る一節。
「マリちゃんは、今のお姉さんとはあんまりしっくりといってないみたいやけどね、そうやないときもあったと思うんよ。あんたがお姉さんに対してほんとに親しい、ぴたっとした感じを持てた瞬間のことを思い出しなさい。今すぐには無理かもしれんけど、努力したらきっと思い出せるはずや。なんといっても家族というのは長いつきあいなわけやし、そういうことって、ひとつくらいはどっかであったはずやから」
「私はね、よく昔のことを考えるの...それでね、一生懸命思い出そうと努力してると、いろんな記憶がけっこうありありとよみがえってくるもんやねん。ずっと長いあいだ忘れてたことが、なんかの拍子にぱっと思い出せたりするわけ...人間の記憶ゆうのはほんまにけったいなもので、役にも立たんような、しょうもないことを、引き出しにいっぱい詰め込んでるものなんよ」
「それで思うんやけどね、人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくものなんやないのかな。その記憶が現実的に大事なものかどうかなんて、生命の維持にとってはべつにどうでもええことみたい。ただの燃料やねん」
「もしそういう燃料が私になかったとしたら、もし記憶の引き出しみたいなものが自分の中になかったとしたら、私はとうの昔にぽきんと二つに折れてたと思う。どっかしみったれたところで、膝を抱えてのたれ死にしていたと思う。大事なことやらしょうもないことやら、いろんな記憶を時に応じてぼちぼちと引き出していけるから、こんな悪夢みたいな生活を続けていても、それなりに生き続けていけるんよ。もうあかん、もうこれ以上やれんと思っても、なんとかそこを乗り越えていけるんよ」
「そやから、マリちゃんもがんばって頭をひねって、いろんなことを思い出しなさい。お姉さんとのことを。それがきっと大事な燃料になるから。あんた自身にとっても、それからたぶんお姉さんにとっても」
「マリちゃんは、今のお姉さんとはあんまりしっくりといってないみたいやけどね、そうやないときもあったと思うんよ。あんたがお姉さんに対してほんとに親しい、ぴたっとした感じを持てた瞬間のことを思い出しなさい。今すぐには無理かもしれんけど、努力したらきっと思い出せるはずや。なんといっても家族というのは長いつきあいなわけやし、そういうことって、ひとつくらいはどっかであったはずやから」
「私はね、よく昔のことを考えるの...それでね、一生懸命思い出そうと努力してると、いろんな記憶がけっこうありありとよみがえってくるもんやねん。ずっと長いあいだ忘れてたことが、なんかの拍子にぱっと思い出せたりするわけ...人間の記憶ゆうのはほんまにけったいなもので、役にも立たんような、しょうもないことを、引き出しにいっぱい詰め込んでるものなんよ」
「それで思うんやけどね、人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくものなんやないのかな。その記憶が現実的に大事なものかどうかなんて、生命の維持にとってはべつにどうでもええことみたい。ただの燃料やねん」
「もしそういう燃料が私になかったとしたら、もし記憶の引き出しみたいなものが自分の中になかったとしたら、私はとうの昔にぽきんと二つに折れてたと思う。どっかしみったれたところで、膝を抱えてのたれ死にしていたと思う。大事なことやらしょうもないことやら、いろんな記憶を時に応じてぼちぼちと引き出していけるから、こんな悪夢みたいな生活を続けていても、それなりに生き続けていけるんよ。もうあかん、もうこれ以上やれんと思っても、なんとかそこを乗り越えていけるんよ」
「そやから、マリちゃんもがんばって頭をひねって、いろんなことを思い出しなさい。お姉さんとのことを。それがきっと大事な燃料になるから。あんた自身にとっても、それからたぶんお姉さんにとっても」
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